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マーケティング全体像【全マーケターが持っておくべきマーケティングの全体視野】

■目次

1.はじめに
  1-1 はじめに(マーケティング全体像 構造化マップ)
  1-2 なぜマーケティング全体像が必要なのか?
2.マーケティング全体像概要
3.マーケティング目的とビジネス戦略
  3-1 マーケティング目的
  3-2 マーケティング目標
  2-3 ビジネス戦略
4.マーケティング戦略
  4-1
分析
   --a. PEST分析/ b. メガトレンド/ c. 3C分析/ d. ファイブフォース分析
  4-2 課題設定
  4-3 戦略立案
  4-4 戦略コンセプト
  4-5 長期基本戦略
   --a. セグメンテーション/ b. ターゲティング/ c. ポジショニング
  4-6 マーケティングの実行戦略(4P)
  4-7 カスタマージャーニー
   --a. カスタマージャーニーの種類
      b. カスタマージャーニーに応じた成果指標
      c. 理想のカスタマージャーニー実現の為の具体施策
  4-8 ブランド戦略
  4-9 カスタマージャーニー上で必要となるクリエイティブ
5.実行
  5-1 マーケティングの世の中展開活動
  5-2 マーケティングの自社内実行活動
  5-3 PDCAマネジメント
6.仕組み
7.最後に              

1.はじめに

■1-1 はじめに(マーケティング全体像 構造化マップ)
本記事をご覧の方は、何かしらの視点からマーケティングや経営に携わられている、もしくは携わろうとしている方なのではないかと想像します。
このnoteは、総合広告代理店で数十の企業のマーケティング課題と対峙し、事業会社の中でマーケティングに対して投資を行い成果に責任を持って運用を行ってきた経験を凝縮し、全体像という形で形式知化させたものです。

具体的な経験をそのまま生に記載しているというよりは、普遍的に活用可能な知見として抽象化に挑戦していますので、是非ご覧頂ければと思います。
また文章だけでは伝わりにくい部分を、出来るだけ図としてビジュアライズもさせています。

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上記図を見て頂ければ分かる通り、マーケティングをやっていると様々に聞こえてくる、PEST/3C/STP/4P/カスタマージャーニー/バリューチェーン/マスマーケティング/デジタルマーケティング/CRM等の様々なワードがあると思いますが、それらがどのような構造関係にあるのかを纏めようとしています。またここで書いている内容は、全てが私自身の頭の中にあるものや経験や考えをまとめたものであり、個人に属する意見であることを記させて頂きます。

■1-2 なぜマーケティングの全体像が必要なのか?
まず、マーケティングとは何か?という問いですが、この問いの答えは無限に存在します。なぜなら、どんな業界・どんな業種・どんな立場・どんな専門性によって、フォーカスするマーケティング活動の種類やエリアが異なるからです。なので自分なりのマーケティング定義を持つことにこそ意味があります。しかしそこで終わりではいけないというスタンスに立ち、論点を投げかけるのが本記事です。
筆者は、マーケティング領域の全体像を提示し、その中で読者の皆さんの定義するマーケティングがどの領域における、どこにフォーカスをおいているのかを手助けしようと試みています。また企業のマーケティング担当を一つとってみても、担当領域が様々に異なります。
そこでまずは皆さんに、マーケティング全体像を把握してもらい、そのマーケティングの全体像の中で、自分が行っているマーケティングはどの領域のどんな類のものなのか?を理解することこそ意味があると思います。
事業会社のマーケターと、支援会社のマーケターと、デジタル領域専門のマーケターと、マス領域専門のマーケターが、「マーケティングとは?」を議論するよりも、「マーケティング全体像の中におけるそれぞれのマーケティングとは?」を議論することのほうがより合理的な議論になるのです。

これからマーケティング思考が、どんな職種や職階においても必須の時代がやってきます。その理由は、マーケティングアクションが細分化され、身近になり、どんな職種や職階の人でもすぐに実行することが出来るマーケティング民主化時代に本格突入するからです。誰もが作り手としてプロダクトを世に出し、GoogleやFacebookで誰でもプロモーションを行うことが出来、手軽にオンラインでプライシング戦略を練りながら商売を開始出来、バーチャルで店舗を出店し、経営者でもSNSでセルフ広報活動を開始出来る時代に突入しているのです。その時代にこの”マーケティング全体像”を頭のマップとして持っていることは、ご自身のマーケティング活動の領域の拡大縮小をさせながら、活動進化に繋げる上でとても有効になると考えます。
このnoteは、様々な業界・業種の企業に対して、様々な種類のマーケティングプロジェクトを手掛け、また事業会社と代理会社(支援会社)の両方の立場を経験し、マスからデジタルまでのマーケティングプロモーションと、テクノロジーを活用したデータドリブンなマーケティングに携わった筆者だからこそ、纏めることに挑戦すべきと思ったところから書き始めました。


2.マーケティング全体像概要

私自身、沢山の視点に基づいた全体像を描くということをやってきたのですが、今回この図を描くにあたっては、
1.目的:マーケティングの根本的な目的、目標
2.ビジネス戦略:マーケティングの投資対効果
3.マーケティング戦略:分析から中長期戦略、短期戦略
4.実行:2~3の具体的な実行
5.仕組み:全ての活動を回していく為の仕組み
という枠組みでまとめています。

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そして、マーケティングに携わる事業会社の方や、代理企業(支援企業であるコンサルティングファーム、広告代理店etc.)の両方の視点を網羅することを狙っています。また、3C分析や4Pがどういったところに位置付けられ、マーケティングとブランディングがどういう時間軸に位置付けられているのか。カスタマージャーニーとマーケティング戦略の関係性や、バリューチェーンとの対応関係はどのようになっているのか。デジタルマーケティングやマスマーケティングといった領域がどこに位置しているのか。
そのような様々な立場におけるマーケティング活動を一覧させようと試みています。

中には、私のやっている領域はこんなところではない!クリエイティブはこんな位置づけじゃない!といった意見も多くあると思いますが、あくまでもある一側面から、なるべく全部を一覧する断面で切ってみたということで、ご了承頂ければと思います。

3.マーケティング目的とビジネス戦略

3-1 マーケティング目的

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まずは目的についてです。ここでは目的と、その手段としての目標を最上部に位置付けています。
目標は、目的をとても分かりやすく、具体化したもの。誰もが同じ目的理解のもと、同じ方向に向かう為の定量的・定性的なゴールになります。
ここではより重要となる目的に着目していきます。

マーケティングを行う目的は様々です。
例えば、下記のような目的があげられます。

<ビジネス起点>
1.利益増:企業の最上位命題ともいえる目的
2.売上増:利益増の為の成長ドライバーとしての目的
3.コスト削減:利益増の為のマーケティング領域の効率化という目的
4.シェア向上:売上増加や、利益度外視でのシェア奪取、コスト効率増の為のシェアアップという目的
etc.
<顧客起点>
1.需要創造:新たな市場を創り出す目的
2.顧客創造:市場の中で新たな自社顧客を発掘させる目的
3.顧客送客:潜在顧客を自社の顧客にすべく、自社市場に引き込む目的
4.顧客育成:見込みのある顧客を、自社顧客にする為に育てる目的
5.顧客獲得:自社顧客化を確実に最終完了させる目的
6.顧客リテンション:自社顧客に再購入・再利用を促す目的
etc.

これら様々ある目的の中から、中長期や短期といった時間軸を加味し、
複数組み合わせたりしながら自社マーケティング目的を設定します。
これらは、プロジェクトごとに異なる目的設定となる場合も多くなります。

■3-2 マーケティング目標
目的が決まれば目標です
今期中に〇〇万人の潜在顧客増を目指す、顧客リテンション率(再購入率)+〇〇%を目指す等の具体的な目標を設定します。

また、目的と目標が直接の対応関係にならないこともあります。
例えば、売上増を目的とした際に、その中で何が最重要課題となるのかによって、重要指標や中間指標を設定することがあるからです。
これらは最終目標となるKGI(Key Goal Indicator)に対して、KPI(Key Point Indicator)として表されます。
余談ですが、ここでいう目標は”成果指標”という最終成果として目指す指標をあげていますが、”プロセス指標”という中間となる過程の進捗を測る指標もあります。これは、レイヤーとしてこのマップの最上位に位置付けられるものではない為、ここでの言及は省略しています。

■3-3 ビジネス戦略
目的が設定されたら、どんどん資金投下すれば、目標は達成できます。しかし、企業の資金には限りがあり、資金投資に対して見合った成果を上げる必要があります。そこでビジネス戦略が必要になります。ここの部分はマーケティングが、企業の経営戦略や事業戦略と接続する重要な部分になります。

ビジネス戦略は、長期と短期で設定されます。どのようなマーケティング目標を達成する為に、どの程度の資金を投下させ、どの程度の成果を、どれくらいの期間で達成するのかを算段します。
短期視点では、企業・事業のPL(損益計算)と連動した計画を立てることになります。一方で長期戦略としては、事業の初期投資も含めた全ての投資資金を、どの程度の期間で回収し、更に利益を上げていくのか?といった視点で戦略を立てる必要があります。ここでは、事業やビジネスのライフサイクルを考えることが重要となり、例えば事業やビジネスが生まれたばかり(立ち上げ期)においては、マーケティング目的としては事業成長・シェア拡大とし、「ビジネス戦略としては赤字でも投資先行で目的を達成する」ことを選択することになります。

マーケティングは経営戦略・事業戦略に先行させるべし
ここで重要となるのは、経営戦略や事業戦略が決まってからマーケティング目的や戦略を作ると見誤るということがあります。マーケティングはビジネスを成長させていく為の最重要手段の1つであり、このマーケティングの目的に合わせて、ビジネス戦略も構築する必要があるのです。一方でビジネス戦略は企業の経営状況や事業の状況によって、大きく影響を受けることになります。その為、経営戦略・事業戦略とマーケティング目的や戦略は、行ったり来たりしながら構築することが望ましいのです。
もっと言うと、マーケティング目的や戦略は、市場・顧客・企業の社員・プロダクトの状況を見つめずには作れません。そのマーケティングを起点に、経営戦略や事業戦略に落とさなければ、企業経営は企業よがりなものになってしまいます。つまりどうしても、経営や事業戦略にマーケティングの視点は必要になってくるのです。


4.マーケティング戦略

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さて、具体的に目的やビジネス戦略が定まったら、平行してマーケティング戦略を作る・またはアップデートすることになります。

■4-1 分析
まず先に分析を行います
マーケティング分析のポイントは、なるべく大きなところから、小さくフォーカスさせ深めていくことです。
マーケティング戦略の立案をするにあたり、PEST分析に代表される、そもそも対象とする市場を取り巻く状態を把握しておくことが重要となります。

■4-1 a. PEST分析
PEST分析はマクロ環境分析のフレームワークで、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の略になります。
シンプルにいうと、経済や技術といった”そもそも”を把握しておく為の分析になります。これは特に長期の視点から、今後自社の事業や商品が、どのような状況の中で戦っていかなければならないかを把握するものになります。IT関連の商品であれば、技術動向は非常にクリティカルとなりますし、グローバル企業であれば政治や経済動向がマーケティング以上のインパクトを持つ因子になります。

■4-1 b. メガトレンド
ちなみにPEST分析にもう1つのTとなるTrendを入れておくことをお勧めします。これは単なる流行としてのトレンドではなく、今後の将来を予測する上で重要となる大きなうねり(メガトレンド)を捉えられると良いと思います。
例えばグリーやDeNAといった企業が”モバイルSNS時代”を察知して動き、ガンホーやmixiがスマホアプリゲームの兆候を捉えるといった、業界を一変させかねない大きなトレンドを捉えることです。ブロックチェーンのような世の中を一変させる技術トレンドや、業界によっては顧客嗜好性の大きな変化等のようなものもあります。
このメガトレンドを考える上で、博報堂が無料で提供している未来年表生活定点のデータはとても有効だと思います。

■4-1 c. 3C分析
そしてもう1つ重要な分析が3C分析となります。
3CとはCompany(自社) / Competitor(競合) / Customer(市場・顧客)という視点による分析です。ここも詳細は省きますが、PEST分析で市場の外観を把握したら、3Cで市場の中身を徹底的に分析するのです。ここで、自社と競合の分析が重要なことは誰しもイメージしやすいかと思いますが、市場・顧客の分析はとても重要になります。

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Customer(市場・顧客)の把握詳細
大規模なリサーチによって、市場全体の構造がどのようになっており、定量的にどれだけの自社潜在顧客や現顧客がいるのかを推計出来るようにする必要があります。また競合と自社の状況も同時に把握します。これらは、投資に対してどの程度の成果を得られるのかを把握出来るようにし、効果的なマーケティング戦略と実行を実現させる上で必要になります。

また、定量的な市場把握に加え、定量・定性の両側面から、現状の顧客像と、現状のカスタマージャーニーを把握することも同時に行います。
これらは、戦略的ターゲット層、理想のカスタマージャーニーを作る為の事前情報としてとても有効になります。

Company(自社)/Competitor(競合)の把握詳細
自社の把握は非常に重要です。
以外ですが、自社についてあまり理解しきれていないというケースは多々あります。まず自社の経営方針、経営状況、事業ポートフォリオ、商品ポートフォリオ、各商品の特徴・競合優位性・価格、チャネル、プロモーション状況等を競合と比較しながら整理します。

また、大前提として、マーケティング対象となる事業や商品のビジネスモデルやビジネスステイタスを把握しておくことも重要です。
ビジネスモデルとして、どのように収益を上げるモデルなのか?商品売り切りなのか、継続的な課金収益モデルなのか。IT系のサービスなのか、リアルなサービスなのか。それによってそもそものマーケティングのやり方が変わってくるからです。
また、ビジネスステイタスというのは、事業や商品のライフサイクルを把握すると言ったほうが分かりやすいかもしれません。
ライフサイクルとは、例えば、商品ローンチ前段階、商品ローンチ直後段階、商品トライアル段階、商品成長段階、商品成熟段階、商品衰退段階等の、生まれてからの一生のうち、どこに位置しているかを把握する視点です。そのどの段階にいるかによっても、そもそものマーケティング目的やマーケティングのやり方が変わってくるのです。

■4-1 d. ファイブフォース分析
実はもう一点、3C分析よりもう少し広い視野で行う分析があります。
ファイブフォース分析です。ここでは少し活用の仕方を本来とは変え、マーケティング上で活用する場合として記載します。
ファイブフォース分析とは①買い手の交渉力 ②売り手の交渉力 ③業界内の競争 ④新規参入の脅威 ⑤代替品の脅威からなる5つの競争要因から市場・業界の魅力度を分析するフレームになります。

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ポイントは、自社が狙う市場・業界だけを見るのではなく、新規参入や代替品の出現といった脅威や、調達・流通・販売先との力関係といった市場外や業界外まで視野に入れて把握する部分です。
但し、私個人の意見としては、PEST分析で広く世の中を見つめる段階で代替脅威が起こるようなトレンドは把握しておき、3C分析の競合分析の中で新規参入脅威についても把握しておくことをお勧めします。

■4-2 課題設定
ここまで来ると自社として抱える問題、競合に勝つ為のハードル、顧客に好かれる為に足りないものなどが見えてきます。また機会も見えてくると思います。それらの事実(問題・機会)の中から、重要となるものを絞り込み、
課題を設定
します。

課題設定と書いていますが、私は課題創造という認識を持っておくことをお勧めします。なぜなら多くの場合、問題をそのまま課題として置き換えることが多く、新たに課題を創るという意識を持つことが非常に重要だからです。目の前には沢山の問題が、事実として現象として転がっています。もちろん問題だけではなく、ポジティブ要素としての機会も転がっています。この転がっている事実の中から、とてもクリティカルなものを選び抽出し、そこから挑戦すべき課題を創り出すのです。目的を達成する為に、自分達が目指さなければならないポイント、達成しなければならないポイントを課題として設定するのです。

課題については、育ってきた企業環境によって、定義が様々に異なると思います。私は挑戦課題や、対応課題といったように、課題の前に形容詞を付けることで認識を同じにするようにしています。挑戦課題はChallengeとして訳されますし、対応課題はIssueとして自分なら訳します。そして多くの場合は対応課題が設定されることが多いのではないでしょうか。
私はあえて、挑戦課題化させるところまで、課題創りの際にはこだわります。メンバー全員が前向きに、目指すべきポイントを指し示す為に、クリティカルな問題をもとに、目指すべき課題を創り出すのです。

また、この課題は中長期と短期で設定することをお勧めします。
殆どのマーケティング活動は、企業の年間予算等に紐づいて行われることが殆どであり、中長期視点の課題を持ちながら、具体的で目指す課題を設定することが実践的だからです。

■4-3 戦略立案
課題が出来れば、戦略です。
この課題を解決する為に、現状と課題設定ポイントのギャップを埋める為にやるべきことが戦略となります。もちろんギャップを埋める為に、やるべきことはいくつかあるのですが、課題がクリアに絞り込まれれば絞り込まれているほど、やるべきでないことが明確化されます。

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また、課題が設定された後も、現状から課題に到達する為の戦い方は沢山存在します。その中でやるべきで無いものを削戦(さくせん)し、選び抜いた戦い方方針を決めるのです。これが戦略立案になります。

■4-4 戦略コンセプト
この戦略については、とても抽象的になってしまったり、ただの施策レベルになってしまったりすることも多いかと思います。またここで作った戦略に基づいて、その後の施策等が作られないと意味がありません。戦略を創る人と、施策を考える人が異なり、最終的に出来上がった施策が全く戦略に基づいていない場当たり的になっている、なんてことも非常に多いかと思います。そんな時にとても有効なのが、コンセプトワード化することにこだわることです。細田高広氏の著書である「未来は言葉でつくられる」は、コンセプトワード感度を高める上でとても良い本だと思います。
(蛇足ですが、全てにおいて「コンセプト化すると?」という問いは、魔法の言葉です。この分析方法のコンセプトは?この施策のコンセプトは?今日の打ち合わせのコンセプトは?今日一日のコンセプトは?
自分自身や、他人も含めて、分かりやすく思考を整理し、やるべきことを絞り上げる上で、”コンセプト化”というプロセスは魔法のプロセスなのです。但し、魔法のように簡単に出てこない、脳みそにとっては悪魔のようなプロセスなのですが。。)

デジタルのマーケティングが当たり前の時代になっても、この課題設定と戦略構築は必要不可欠です。こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、私自身の経験としても、デジタルマーケティングの世界では、テクニカルな側面が強くなり、また高速でPDCAが回る分、現状課題の改善に注目されがちになると思います。しかし定期的に挑戦課題を設定し、戦略構築を行うことはとても重要になります。

■4-5 長期基本戦略
マーケティングの基本戦略として、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングがあります。あえて長期と書いていますが、短期であることもありえ、ここでは便宜上長期と記しています。
この基本戦略はいわゆるSTP(Segmentation/Targeting/Positioning)と呼ばれるもので、非常に有名な為ここでは詳細については割愛します。

■4-5 a. セグメンテーション
セグメンテーションは、ターゲティングを行う為の手段です。市場を様々な切り口でセグメントを切ることで、よりクリアに狙うべきターゲット顧客像が浮かび上がります。性年代別にみると言ったベーシックなセグメンテーションや、顧客の趣味嗜好や価値化で市場を複数のクラスターに分けるといったセグメンテーション等、様々な区分け方があります。
特にデジタル・データマーケティングを行う上では、より詳細にセグメンテーションを行うことが有効になります。なぜなら、詳細な戦略ターゲットに基づいて、戦略実行の段階でもデジタルを活用することで、細やかなアプローチが出来るからです。先述しているクラスター群に市場を分けるというのは、デジタルアプローチも視野に入れ、性年代等ではなく非常に細やかにアプローチする為の統計的なセグメンテーション手法になります。

■4-5 b. ターゲティング
そこから狙うべきターゲット層を決めます(狙わない領域を決める)。実はこのターゲットについては、同じターゲットでもマーケティング活動のフェーズによって異なる呼び名(粒度)のターゲットになります。

例えば

1.市場ターゲット:狙うべき市場全体
2.マーケティングターゲット:マーケティング施策の対象となるターゲット
3.ブランドターゲット:コミュニケーション効果を高める為に、マーケティングターゲットとややずらして設定される(例えば40代を狙いたいが、若々しいイメージを持たせる為に、やや年代を下げ、年収を高めの層に設定する等)
4.メディアターゲット:施策を充てる上で、マスメディアの場合は非常に荒い粒度に、デジタルメディアは細かな粒度になる
5.来店ターゲット(訪問ターゲット):ターゲットの中でも実際に訪問する層となる(理想のターゲット像とはずれることが多い)
6.リテンションターゲット:再購入を戦略的に増やしたい顧客に設定する

といったようになります。これを留意しておきながら、ターゲットについては常に〇〇ターゲットと呼ぶようにすると、関係者間での齟齬が無くなります。上記の中で分かりやすいのは、実際には30代に買ってもらうファッションブランドにおいても、ブランドターゲットを20代に設定することで若々しいイメージを創り出し、デジタルメディアのターゲットは30代でもマスメディアのターゲットは20-34歳に設定(そのような粒度となってしまう)するといった形で、同一戦略上でもターゲットは異なるのです。
この違いを常に明確化させておかないと、同じ社内でも議論がかみ合わなかったり、パートナー企業との間で齟齬が生じたりしてしまうのです。

■4-5 c. ポジショニング
ポジショニングは、ターゲットの頭の中のイメージを、どのようなイメージに変えていくのか?競合に対して、どう差別化させたイメージにしていくのか?優位なイメージに変えていくのか?を考える為の視点になります。
ブランド戦略を創る上で重要になる為、ブランド戦略のところで後述したいと思います。
一方で、私個人の意見として、マーケティングの実行戦略を創っていく上で、ポジショニングという視点は少し片手落ちになってきていると思っています。なぜなら、生活者の購買検討プロセス自体が複雑化し、デジタルによって情報収集が行われるようになり、ターゲットの頭の中のイメージを変えるだけで購入してもらえる時代ではなくなったからです。
ポジショニングは2次元の考え方で、事業や商品のイメージをどのような方向に持っていくのかを考えますが、顧客視点に立つともう1次元、時間軸を加えなければならない時代になっていると筆者は整理しています。

そこで重要となるのが、理想のカスタマージャーニーなのです。「どんなイメージに変えるのか?」だけではなく、ターゲットの購買検討の時間軸を通して、「どんな体験をしてもらいながら、どんなイメージ・意識・行動変化を起こすか?」を考える時代に変わってきていると考えています。
一方で、中長期の視点からは、ブランドをどう育てて・変えていくべきか?という視点も必要な為、繰り返しになりますがポジショニングについては後述させて頂きます。

4-6 マーケティングの実行戦略(4P)

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マーケティング4P
マーケティング4Pは、マーケティングの実行戦略を整理する際のフレームになります。筆者は自社と競合の分析の際に、4P視点でマーケティング活動の取組みを整理する等の使い方をしたりもします。
4Pは、①Product(商品)、②Price(価格)、③Promotion(プロモーション)、④Place(チャネル)として整理されます。
これらを顧客の視点でそのまま整理した4Cという枠組みもあり、同じく①Customer Value(顧客価値)②Cost(顧客コスト)③Communication(コミュニケーション)④Convenience(顧客利便性)となります。
また4PにPeople(従業員)やPlatform(インフラ)等も加えて整理することもあります。

4Pではあるのですが、私は「Product(商品)/Price(価格)」と「Promotion(プロモーション)/Place(チャネル)」は大きく2つに分けたいと思います。
なぜなら、「Product(商品)/Price(価格)」は、顧客にとっての時間軸上においてある程度固定であることが多いですが(正確には変化したり、変動しますが)、「Promotion(プロモーション)/Place(チャネル)」は顧客にとっての時間軸に置いて変化させる必要があるからです。伝わりにくいかもしれません。
シンプルに言うと、カスタマージャーニーの中で、「Promotion(プロモーション)/Place(チャネル)」はその要素になってくることが多い為、私は同フレームの中で考える整理にしています。
これはあくまでも、経験上多かったということを理由に区分けていますが、「IT関連のサービス」でかつ、価格を顧客やタイミングによって変化させるダイナミックプライシングのような商材の場合、カスタマージャーニーという時間軸の中に密接に関わってくるようなこともあります。

■4-7 カスタマージャーニー
顧客視点にたってマーケティングを実行させていく上で、顧客の気持ちの高まりや状態によって、提供すべき体験を変えていく必要があります。
そこで重要になるのがカスタマージャーニーとなります。
カスタマージャーニーを構成する要素を整理します。

1.現状(As-Is)か理想(To-Be)で設定する
2.ターゲットごとに設定する
3.ツールとしてペルソナを活用
(ターゲット像では分かりにくい場合にペルソナを作成)

複数のターゲットを設定している場合、それぞれに対してカスタマージャーニーを設計することをお勧めします。


■4-7 a. カスタマージャーニーの種類

また、カスタマージャーにを設計する上では、
業界構造や自社のビジネス構造に応じた形で設計する必要があります。

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