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教育新聞【盛山文科相に聞く㊤】を読んで自分なりの答えを作ってみた。

こんにちは。カナダの高校で現役数学教師をしている梅木卓也です。最近読んだ教育新聞の記事で盛山文科相がいくつかの質問に答えられていました。その一つ一つの答えがあまりにも素人のおっさんが答えるような内容ばかりだったので僕ならどう答えるかなと考えてみました。ちなみに元の記事はこちら↓

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この記事内で紹介された三つの質問に文科相になった気分で答えていきたいと思います。

――これからの小中学校や高校の教育において、大切なことは何だと考えるか。

これからの小中学校や高校の教育において、最も大切にしたいことは、自分で考える力、自分で決める機会、自分で生み出す経験だと思います。ありきたりな表現ですが、与えられる教育の時代は終わりました。主体的に考え動く姿勢をいかに育めるか、ここに公教育のキモがあると思うのです。逆にいうと学ぶ主体性さえ育てば人間は自走できるのです。今までの教育の能動と受動の割合が1:9だとするとこれからは6:4もしくは7:3くらいの割合が求められるでしょう。

上記と同じもしくは昨今の日本を鑑みて、それ以上に大切とされるのが、ともに考える力、ともに決める機会、ともに生み出す経験だと思います。これは単に忖度をして大多数に迎合するということではありません。多様な考え方意見がある中で、いかに自分の意見をはっきりと示し、その上で周りの意見も聞く、そして自分の意見と比べ必要に応じて改善していく。最終的に同じ意見になることを目的とせず、自分の中でより考えが洗練され、包括的になることを目指す。

とはいえこのような理想を児童生徒だけに求めたところで、その環境が整わなければ意味がありません。つまりそれは児童生徒の学ぶ環境であり、彼らを教える立場の教員の環境、また教員のマインドセットであります。

このような自立した児童生徒、教員の環境を整えるには足し算思考からの脱却が必須です。今までの主体性のない教育現場では上からの指示を仰ぐばかりで、また文科省も現場を統制することに躍起になり指示を与えるだけで現場の仕事量は増えるばかり。先に示した目標を達成するには、何が本質かを見極め、本質から逸れるものを容赦なく省いていく引き算思考が必要です。

本来の教育の目的に立ち返り、教員、児童生徒共に主体的であるとするなら、彼らの教育機会の充実と向上のみに力を注ぎ、それ以外の仕事は極力省いていく。それはもしかすると宿題をチェックすることかもしれないし、登下校指導の廃止、運動会、入学式、卒業式の簡素化かもしれません。

またこれには環境を整えるだけではなく、教員自体のマインドを育むことが大事です。なにせ主体性を伸ばそうと教育している教員側が「主体性」を経験したことのない方ばかり。このようなマインドを伸ばすためにはそのような機会を教員にも与えられなければなりません。つまりこれは決定権を教員に与えるということです。これはもしかするとカリキュラムの内容の100%カバーすることではなく80%以上カバーすることを最低条件にすることかもしれないし、上記に挙げたような校務分掌の20%の削減を義務化することかもしれません。とにかく選ぶということが主体性への一歩だと思うのです。

このように何が本質かを見極める話し合い、そこから見えてくる主体的な取捨選択を繰り返すことで教員から何が必要か考える姿勢を身に着け、それが普段の児童生徒への教育活動へとつながると信じています。このようなことを言うと、教育がおろそかになるとか、生徒へのサポートが行き届かないと言う方がおられるかもしれません。しかし、何が教育の目的かを考えれば考えるほど、児童生徒、教員ともに「与えられているだけ」、「上から言われているだけ」では逆効果なのです。この点はよく熟考していただきたいです。

――不登校の児童生徒数が過去最多を更新し続けている。「個別最適な学び」をどのように進めるか。

まずはじめに、不登校の児童生徒数が過去最低であることと個別最適な学びが並列で聞かれていることに違和感を感じます。これではまるで現場の教員が個別最適な学びを提供さえすれば、不登校の問題は解決するかのような印象を与えます。やはり足し算思考はなかなか抜けませんね。

個別最適だから不登校が減るわけではないと思うのです。また個別最適でないから不登校が増えたわけでもないと思うのです。問題を掘り下げる前に、個別最適な学びと不登校の問題をまず切り分けることが大切です。

不登校の問題を個の問題ではなくシステムの問題としてみた場合、今の学校現場もしくは教育委員会、文科省において何がアップデートされるべきでしょうか?また何がアップデートされてこなかったから不登校の問題は悪化しているのでしょうか?このような考え方をまずすることが大切です。

でないと教員一人一人の努力と精神力のような時代錯誤も甚だしい考え方をもとに、それぞれの児童生徒をサポートすることだけで不登校の問題を解決しようとすることになります。そんなやり方は通用してこなかったし、これからも通用しないことは明白です。

そのうえで、個別最適な学びという言葉には、かなり狭い定義と広い定義があると思うのです。狭い定義ではただ個々の学力、それもテストで点数が取れるだけの学力を高めることを目的としたもの。当然このような目的をかかげると、タブレットや個々の興味に基づいた教材を個々のレベルに合わせて与えることで、ある一定の環境下では成功事例として個別最適だととらえられるでしょう。

広い定義では、個々の児童生徒が全人格的に学び育つ環境を示唆すると思うのです。つまり短絡的で偏ったテストでの点数や偏差値を上げることではなく、人間として主体的で自己選択できる存在であることをいかに育てるかを考えた場合、そこには先ほど述べたような自分で考え、選び、動く機会もそうですが、周りもそうでなければいけないのです。つまりそれはインクルーシブ社会の実現を示唆し、そのためのインクルーシブ教育の実現、わかりやすく言うと社会性の育成が必須です。なぜなら自己実現を自由にするためには、すべての人が活躍できる環境を整えることが必須だからです。でなければ個別最適など、ただ頭でっかちで自分よがりな人間を育てることを意味し、それは何の価値も生まないのです。それどころか今の日本社会にみられるような粗探しをする、足を引っ張りあう社会をさらに促すでしょう。

誰かを排除した教育、または機会を排除し続ける教育である限り、本当の意味での自己実現は不可能なままです。自分さえよければいいという考えは自分をもダメにするのです。この意味を考えていただきたい。

――中教審で次期学習指導要領に向けた議論が少しずつ始まっている。国が定めるカリキュラムの望ましい在り方について、どう考えるか。

まず大前提になる国としての教育の目的を明確にすることが大切ですね。やはり大前提のマインドが大切なのです。表面上のICT教育やSTEAM教育はあくまでその手段でしかないとの認識も大切です。

OECDなどの教育機関を装った経済機関にただ迎合してPISAの結果に一喜一憂するのではなく、国としての軸があって俯瞰していくことが大切なのです。でないと過去30年間の経済停滞状態を脱出できないだけではなく、これからの人生を切り拓いていく人たちの教育にならないと思うのです。

ここまでの話で私としての教育の目的については話してきました。自己と他の関係性の中で、主体的に考え、決め、行動する。これを目標とした場合、カリキュラムの中で何が大事になってくるのか。それは教科中心主義からの脱却でしょう。どれだけの内容をどれだけ正確にどれだけ早く処理するか、こんな力はもはや必要ないのです。こんな力が欲しければAIを使えばいいのですから。

それぞれの主体的な自己実現のために必要な力をどう伸ばすのか、またそのような環境をどう作るのか。そのような考えの中で、カリキュラムは教科内容を最終目的とするのではなく、教科内容を使ってどう力を伸ばしていくかといった視点に切り替えることが求められます。

教科内容をあくまで手段として、問題解決能力を高めるのもいいでしょう、コミュニケーション能力を高めるのもいいでしょう、自己分析をするのもいいでしょう。昨今では探究学習が求められているようですが、これは探究という科目や時限を別に作る必要などないのです。既存の科目のままで、問題設定をし、自分でまたは他と協力しながら答えを見つけていく過程そこにこそ意味があり、教育の目的があるのです。

そのうえで、文科省の立場はあくまで大きな目標を定めること。その方向性を示すのが文科省の役割、その実施運用に関しては極力現場に任せる。それも丸投げするのではなく、あくまで実施運用を現場の方で考えていただく。またその考える余白を作る環境整備を文科省が行っていく。このあくまでボトムアップなリーダーシップを文科省がとることで、働きすぎといわれる教員のバックアップを少しでもできればと思います。

何度も言いますが主体的な教育といっても、児童生徒ともに教員も主体的にならなくては根本的には何も変わらないのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーてな感じでなんちゃって文科相になって三つの質問に答えてみました。どうでしたか?面白かったですか?それとも納得いかないことだらけでしたか?ぜひコメントに書いてください。みんなで一緒に教育について考えていければと思います。

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