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映画「KAPPEI カッペイ」で笑いの構造を垣間見た話
【あらすじ】
1999年に世界が滅亡するというノストラダムスの大予言を信じて、幼い頃から救世主になるべく殺人拳の修行に明け暮れてきた1人の男。しかし、2022年になり世界が滅亡していないことを受け、彼は師範から解散を告げられる。目的を失う男だったが、やがて流れ着いた都会で、人生初めての恋を経験する。
主演の伊藤英明の顔面がシブくて最高
まず見て頂きたいのが、この顔面です。
![](https://assets.st-note.com/img/1673425344273-5rf5vkjvwR.png?width=1200)
「終末の戦士」カッペイ。
眉間にシワを寄せて、鋭い眼孔。
常に何かに「真剣」なんです。
冒頭からラストまで、
基本ずーーっとこのシブ面でいます。
この表情が、この映画の肝だと私は思っています。
原作の主人公を忠実に再現しているというのもありますが、
この時点でもうすでに面白い。
![](https://assets.st-note.com/img/1673426565784-fGkBdSWNSq.png?width=1200)
しかもこの服装で・・・(笑
こんなのが街中にいるってだけで、
そりゃ面白くなってくるに決まってる。
「真剣」な顔でバカなことをする。
この映画で仕掛けられる笑いは、基本的にこの構造です。
ベースがこの表情なので、
少しでも感情が動く場面があると
より際立ってくるんです。
例えば、恋の相手に彼氏がいるかどうか
iPhoneのsiriに質問する場面があるんですが
最高に笑えます。
普通の人がやったらキモいだけなんだけど
カッペイがやるとキモいを通り越して笑うしかない。
そんな爆笑ポイントがてんこ盛りです。
「真剣」からのズレを作るウマさが突出してる
個人的に、日本のコメディを敬遠していたのは
笑いを取りに行くにあたって、
キャラが「真剣」じゃないことが多くて
「もう見てられない・・・」ってなってしまうからです。
バカなキャラを演じられるとき、
演じてる本人がバカだと自覚しているのがわかると、
冷めてしまいませんか?
笑いを起こすためだけに
わざとバカになってふざけてますよーってのが苦手なんです。
映画評論家の宇多丸さんはこれを
「ベロベロバーで笑いをとる」と巧い例えで表現してました。
この映画を見るときも、
ベロベロバーは勘弁して><
と思いながら見続けていましたが、大丈夫です。
彼らは間違いなく「真剣」だったから。
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最初に見ていただいた通り、
カッペイはずっと真剣だし
同じ「終末の戦士」の
正義(まさよし・山本耕史)と
守(まもる・大貫勇輔)もずっと真剣で男前。
この真剣さが、バカなことをするときの
わざとらしさを消して、本物の笑いを作っていると思うのです。
この映画で巧いと思うのは、
なぜここまでド真剣になれるのかという理由が
しっかりと用意されていること。
冒頭から30分は、状況説明をしつつ
物語が進んで行く構造なのですが
「終末の戦士」の生い立ちと教育を具体的に見せてくれます。
1999年のノストラダムスの大予言に備えて
世界の終末で戦うために「2022年まで」
修行し続けていた男たち。
これ自体バカなんですが、
でもここを了解すれば、
なぜ真剣にバカなことができるのかが
明確になってくるので、それ以降のバカ行為が
ちゃんと笑える構造になっている。
![](https://assets.st-note.com/img/1673429986738-XWNB1biB5H.png?width=1200)
山本耕史が自らの「ケツ」を叩きまくるシーン(笑
大爆笑してしまいました。
別の映画(シン・ウルトラマン)では
「人類の上位概念になりたい」とか言ってたのに・・・(笑
少し間違えれば、
ただケツを出して下品な失笑が生まれるだけに
なりかねない場面でしたが
しっかり理由が用意されてて、
本人は紛れもなく真剣なので、
大きな笑いが生まれた、ということだと思います。
笑いと恋愛って、両立するんですね
「笑い」に焦点を当ててお伝えしてきましたが、
この映画は恋愛をテーマにしてることも、侮れません。
カッペイは、大学生の山瀬(上白石萌歌・超可愛い)に
一目惚れします。
恋に落ちた瞬間に感じる胸の高鳴り、
相手に彼氏がいるかどうかの悶々とした感じ、
別の男と話しているところに強引に割り込んで
マウントを取ってしまう様。
相手の優しい言葉で勘違いしてウキウキしてしまう感じ、
何があっても守りたい気持ち、
片思いの辛さ、
失恋した時の突き落とされるような絶望感。
このあたり、
全く手を抜かず、しっかり「恋愛」を描いています。
だからこそ、私たちの共感が生まれ
そこからズレたときに、思わぬ笑いが生まれる。
物語の組み方、ストーリーの伝え方、
本当に巧いと思います。
とくにラストの告白のシーン(笑
もうバカ過ぎて超最高です。
![](https://assets.st-note.com/img/1673432909951-9b9fyebDjB.png?width=1200)
詳しくは是非ご覧になって確かめて頂きたいのですが、
告白の最中に、顔面を車で轢かれます(笑
リアリティとかそういうのもう全部ぶっ飛ばして
「カッペイ頑張れ!」と
手を叩いて応援してしまうくらい、乗れます。
超バカだけど超真剣。
笑いと感動が同時に襲ってくる
奇妙な感覚のクライマックスは最高でした。
作り手のバランス感覚に脱帽です。
まとめ
素晴らしいシブ面でカッペイを演じきった伊藤英明さん。
公式のコメントから引用します。
オファーを頂いた時は45にもなったおっさんがまた筋肉披露の仕事か、と正直ガッカリしていました。笑
しかし打ち合わせや衣装合わせを重ねる内に、そんなガッカリや不安は吹き飛んで…行きませんでした。笑
けれどこのコロナ禍に於いて、不自由な生活を強いられている日本の皆さんに束の間のひとときではありますが、現実から離れて頂いて心の底から笑って頂ける作品をお届け出来る事にエンターテイメントの世界で働く者として大変ありがたく、また光栄に思っています。
こんな役よく引き受けたな、というのがまず思ったことですが
さすがエンタメのプロですね。
惜しげも無くケツを露わにした
山本耕史さんのコメントです↓
KAPPEIに扮する伊藤英明さんに「山本くん、よくこんな役受けたね!?」と言われた撮影初日…。
全く同じ質問を突き返したかった…。
お互い撮影でなければ心が壊れてしまうくらい恥ずかしい出で立ちだったのだ。
世の中はまだ出口の見えない状況、一時でも皆さんを楽しませられれば、そんな思いを背負い、
いい大人達はあり得ない姿で、あり得ない精神力で撮影に望んだ。
劇場で心置きなく笑うがいい…それがまだ叶わぬのなら帰宅後笑い転げればいいのさ。
そう…
あの姿を…
しかと笑い転げさせていただきました。
あの姿で…(笑
本文でクドいくらい「真剣だから笑える!」
とお伝えしてきましたが
何より真剣だったのは、作り手の方達だったのですね。
コロナ禍での制限が厳しいなか、
大変な苦労があって撮影されたそうです。
最高にバカで超笑える映画を見させていただいて
感謝の念を送りたいです。
今回は八木美和様よりコメントにて
リクエスト頂いた映画を取り上げさせて頂きました。
教えて頂かなかったらたぶん、見てなかった映画です(笑
おかげさまで最高に笑える楽しいひと時を味わうことができました。
この場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
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