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日本での癌ゲノム医療の不確かさの問題

HortonらによってJAMA Oncology誌に報告されたこの臨床研究は、生殖系列遺伝子検査にRNAシークエンシングを追加すると、DNAシーケンシング単独と比較して、時間の経過とともにどのような方法で精度と臨床感度が向上するのか、という疑問を投げかけている。Hortonらは、生殖細胞系列の遺伝子検査には固有の不確実性が伴うので、Variant of Uncertain Significance (VUS) についてはよく議論され、さらにもう1つの大きな不確実性の原因は、バリアント分類の精度ですと述べている。この臨床研究の結果から、Horton et al. 生殖系列遺伝子検査にRNA配列決定を追加することで、遺伝性がんの素因を持つ個人の特定が拡大し、治療法や監視の個別化の機会が増えると結論づけた。

2019年12月から2023年9月までに日本の国立大学におけるがんゲノム医療におけるがんゲノムパネル検査(OncoGuideTM NCCオンコパネル検査(理研ジェネシス社,日本):813例、FoundationOne® CDx検査(MFI社、米国):2,718例)を用いて、延べ3,531例の治療法が検討されました。日本遺伝子診療学会では、55遺伝子(APC, BRCA1/2, CDH1, CDKN2A, CHEK2 etc)が、遺伝性がんの原因遺伝子とされている。OncoGuideTM NCCオンコパネル検査と異なって、FoundationOne® CDx検査は、血液より採取された造血系細胞を用いた生殖系列遺伝子の検査は行われない。したがって、FoundationOne® CDx検査によって、これらの55遺伝子において、variant allele fraction (VAF) の数値が40%以上のpathogenic Variantsが検出された症例に対して、遺伝性がんの発症が疑われます。 これまで癌ゲノム遺伝子パネル検査によって検査された3,531例のうち258例が遺伝性がんの発症と診断された。日本では、早期に、Hereditary breast and ovarian cancer (HBOC)を診断するBRACAnalysisが保険収載されたので、各種遺伝性がんの症例において、HBOCの症例数(89 cases)が最も多い。

日本の癌ゲノム医療で用いられている癌ゲノム遺伝子パネル検査(OncoGuideTM NCC oncopanel test、FoundationOne® CDx test)では、ClinVarとMFI社にて開発された独自の遺伝子に関するデーターベースが用いられている。ClinVarとMFI社の両方データーベースは、欧米人において発症した各癌種の遺伝子変異により構築されているため、PVとVariant of Uncertain Significance (VUS)は、欧米人の各癌種のデーターによって判断される。日本人と欧米人とは遺伝子は完全に一致していないため、日本人の各癌種の発症に関連する遺伝子変異は、必ずしも欧米人の癌種と一致しない。したがって、VUSと判断された日本人の各癌種の遺伝子変異の信頼性が求められている。FoundationOne® CDx testやBRACAnalysisによって検出されたBRCA2 S2616Fは、ClinVar、MFI、Myriad etcのデーターベースでは、VUSと判断されている。しかし、最近、日本の医療機関の臨床研究により、BRCA2 S2616Fは、日本人特有の遺伝子変異でありLikely Pathogenic variantであることが明らかにされた。生殖系列遺伝子検査にRNA配列決定を追加することで、遺伝性がんの素因を持つ個人の特定が拡大する。しかし、このように欧米の各癌種によるデーターベースの利用は、患者とその御家族に誤った検査結果を報告してしまう。常に、最新情報が各遺伝子のデーターベースに加えられ、up datedされなければならない。さらに、各人種毎の各癌種における遺伝子変異のデーターベースの構築が求められる。

We do not have potential conflicts of interest.

がん医療専門ドクター・新興感染症専門ドクター

Published in JAMA Oncology in November 11, 2023 by 京都@takumaH

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