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WealthParkのカスタマーサクセスの歴史を振り返る②ーデータ連携

こんにちは。不動産管理会社とオーナーをつなぐデジタルプラットフォーム「WealthParkビジネス」を手がけるWealthPark カスタマーサクセスの鳥谷です。

弊社のカスタマーサクセスについてより深く知っていただくことを目的として、自分の中の言語化も兼ねて、WealthParkのカスタマーサクセスの歴史を振り返っています。前回の記事は以下をご覧ください。

気づけば、前回の記事から1ヶ月以上経ってしまいました…。早く現代に戻れるように頑張ります。

WealthParkのデータ連携について

本題に入る前に、今回のテーマでもある「データ」に関して、WealthParkとの関わりを少し説明させてください。

WealthParkをご契約いただいた顧客は、カスタマーサクセス担当が「データ連携」の支援を行います。データ連携の仕組み自体は、非常にシンプルです。

  1. 出力:管理会社利用している基幹システムからオーナー、物件、収支情報を出力する

  2. 変換:出力したデータを、WealthParkビジネスのインポートフォーマットに変換する(現状は、専用変換ツールを提供しています)

  3. インポート:WealthParkのインポート機能でデータを取り込む

おそらく、「なぜAPI連携ではないのか?」と思われる方もいらっしゃると思います。ここについて、少しだけ補足すると、不動産業界における基幹システムとのAPIによるデータ連携は、今なお黎明期にあると思います。昨今の不動産テックの勃興と共に、API連携の実績自体は増えてきていますが、API連携によって異なるプロダクト同士がつながり、不動産管理の現場において業務効率化、顧客価値を創出できている事例はまだ少ないと個人的には感じています。ちなみに、昨年、弊社も賃貸管理システム「i-SP」を開発する業界最大手のビジュアルリサーチ社との業務提携を発表し、今まさに開発の真っ最中です。本取り組みを通じて、管理会社様の業務効率化ひいては、DX推進をさらに推進していければと思います。

2019年:不動産業界の不揃いなデータに向き合う

前述の通り、仕組み自体はシンプルなのですが、顧客が徐々に拡大し始めた2019年は、プロダクト利用の大前提であるデータ連携の手法を確立することに苦心する日々でした。というのも、管理会社から提供される物件・部屋、契約、収支等、WealthParkの環境構築に必要とされるデータは多種多様なフォーマットで出力されるため、新規顧客が契約する度にデータ連携の手法をゼロから構築する必要がありました。時にはWealthParkに必要とされるデータが出力できないために、せっかく期待してご契約いただいても、データ連携がうまく行かずに利用されることなく解約してしまうといった失敗も初期は経験しました。

「基幹システムからデータを出して、取り込む」たったそれだけのことが、なぜそんなに大変なのか?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。当時の私自身も、まさにそう感じていました。

専任チームを組成し、業界のデータに対する解像度を上げる

データ連携ができなければ、プロダクトは永遠に利用されることはありません。当時は賃貸管理システムの解像度を上げることに注力するため、ITコンサル出身のメンバーをデータ連携の専任として、分業制を敷きました。ご契約いただいた管理会社に伺い、一緒に賃貸管理ソフトを触りながら、データ出力作業を行う、出力したデータが利用できなければ、他の出力方法を試す、時には賃貸管理システムのベンダーと議論を重ね必要なデータを手に入れる、そうした試行錯誤を繰り返しました。

その結果として、今では業界のほぼ全ての賃貸管理システムとの連携実績ができ、再現性をもってデータ連携を行うことができるようになりました。今回はそこに至るまでの過程で、カスタマーサクセスが見てきた業界の課題や取り組んだことについて、振り返りたいと思います。

個別最適化された不動産業界のデータ

不動産業界には先程挙げた「i-SP」をはじめとする賃貸管理ソフトが約20種類ほど存在します。一部の管理会社は、自社開発のシステムやSalesforceを利用しているケースもあります。これらのシステムは、オンプレミス型が主流で、徐々にクラウド型に移行しているのが現状です。WealthParkとのデータ連携を行う上で最初のハードルとなったのが、前述した管理会社毎に異なるデータのフォーマットです。しかも、管理会社毎にオンプレミス/クラウドの利用有無、バージョンのアップデート状況、個別カスタマイズの実施状況が異なります。そのため、たとえ同じシステムであっても出力されるデータに差異があることも多々ありましたし、あるシステムでは出力できるデータが、他のシステムでは出力できないということもありました。当初は何が業界の標準形なのか、顧客から受ける要望が、個別要望なのか業界共通の要望なのかを判断することが非常に難しいと感じていました。100を超える管理会社の膨大なデータを見る中で、不動産業界におけるDXを阻む不揃いなデータの実態を痛感しました。「とにかくフォーマットがバラバラで、何がなんだかわからなかった」という一言に尽きます。

また、各管理会社は、あくまで各社の組織体制や管理業務のオペレーションルールに則って、基幹システムを利用しており、基幹システムの運用の仕方やデータの登録状況は、各社各様です。さらに、これまで社内業務のために利用してきた基幹システムに登録されているデータは、必ずしもオーナーアプリに公開すること、言い換えれば、オーナーアプリを通じて、顧客をつながりDXを推進することを前提に整備されているわけではありません。ところが、WealthParkの導入が決まり、そのデータをオーナーアプリを通じて、オーナーに可視化していくことになります。すると、データ連携をする前に「今の登録状況で、本当にデータ連携できるのか?」「オーナーに公開して問題ない状態になっているのか?」といった社内の声があがり、導入前にデータ整理を行う顧客もいます。例えば、マスタデータ(オーナーや物件など)のID情報が登録・整備されていない、重複データがある、オーナーのメールアドレスや電話番号の情報が集約されていない、といったデータ連携上の課題がよく挙げられます。しかし、IDを採番し、顧客1人1人を一意で特定できるようにすることで、顧客属性や提案履歴、設備の修繕状況等の様々な情報と紐いたデータが可視化され、より付加価値のあるサービスを顧客に提供できるようになります。だからこそ、時にはデータにIDを採番する、そんな些細なことからDXに取り組みを開始する顧客もいます。

オーナーアプリ限らず、DXを通じて顧客に付加価値のあるサービスを提供していく上で、こうしたデータを整備していくことは避けては通れません。だからこそ、WealthParkのカスタマーサクセスは、DX推進の前提となるデータの課題を抽出し、1つ1つその課題を解決していくプロセスを伴走していく必要があります。なお、現在では過去の反省を踏まえ、営業チームと連携して、導入検討中の顧客向けに、事前にデータ連携課題を精査し、導入上のデータの課題洗い出すという取り組みを実施しています(社内的には「プレオンボーディング」と呼んでいます)。こうした取り組みを通じて、早期の課題検知・指摘を行い、管理会社がよりスムーズにオーナーアプリを通じたDXに取り組めるような環境の整備を行っています。

カスタマーサクセスが創った仕組みがプロダクトの標準機能に

実は、2019年当時、WealthParkの標準機能にインポート機能がありませんでした。正確には、把握できているデータのパターンが少なく、汎用的に活用できるインポート機能の仕様を作ること自体が困難でした。仮にインポート機能を開発したとしても、すぐに開発し直すことになっていたと思います。一方で、日々導入支援すべき顧客は増え続けるため、カスタマーサクセスとしては、顧客の利用環境を提供するために、データを変換し、WealthParkに取り込むための方法を考える必要がありました。

当初のソリューション?は、気合いでした笑。一件一件オーナーや物件をシステムに登録したり、時にはデータの整理ができていない管理会社の賃貸契約書を一枚一枚エクセルのシートに落としたりと…手を尽くしました。しかし、もちろんこれでは全く問題の解決になりません。そこで当時取り組んだのが、カスタマーサクセスチームが、自前でソリューションを開発してしまうことでした。チームに元エンジニアでコードをかける人材がいたことは本当に幸運でした。メンバーが不揃いな各社のデータに向き合い、あの手この手で解決策を考え抜いた結果、当時としては活気的なデータ連携のソリューションが生まれました。

その後、カスタマーサクセスチームが開発したツールの仕様をもとに、今ではあらゆる顧客に利用されている現在のインポート機能が開発されました。インポート機能のネイティブ化をスムーズに行えたのは、目の前の顧客の課題解決のために、自前でつくったソリューションでトライアンドエラーを積み重ね、仕様を磨いていったからこそだと思います。もちろん、今ではこうした技術的な課題はプロダクトチームと連携しながら解決していきます。しかし、完璧なプロダクトは存在せず、必ずしもプロダクトの機能だけで全ての顧客課題を解決できるわけではありません。そして、顧客は機能ではなく課題解決を求めています。だからこそ、プロダクトがカバーしきれていない課題を目の前にしたときに、代替案を提示するだけでなく、課題解決のためのソリューションを自ら創りにいく気概も時には求められます。結果として、自らが考えたソリューションがプロダクトに適用され、あらゆる顧客の課題解決に利用される。これもまた、カスタマーサクセスの1つの醍醐味ではないかと思います。

不揃いなデータを1つ1つ整えていくことが、業界のDXを推進する

不動産業界におけるデータに関する課題の解決は、WealthParkを導入いただく顧客にとっての課題であると同時に、業界全体のDX推進上の課題でもあると考えています。

本記事で繰り返し述べている、業界共通のデータフォーマットがないことが、管理会社や不動産オーナーの非効率を生んでいます。ある不動産オーナーが異なるエリアに物件を保有している場合、それぞれのエリアの管理会社は当然異なります。管理会社が違えば、各社が利用する基幹システムが異なり、出力される紙の送金明細も異なります。もう少し細かいことを言うと、それぞれの明細の項目名も各社によって微妙に異なります。例えば、家賃に関する金額の表記は、パッと思いつく実例だけでも「家賃」、「賃料」、「賃貸料」、「賃料収入」と複数あります。中身は全く同じものを意味する情報も、フォーマットや書式が異なることで、オーナーの目線では全く異なる情報に見えますし、その分情報管理の手間も煩雑になります。また、不動産オーナーの中には、資産状況を把握するために、紙で受け取った情報を、自らエクセルのシートを打ち込んで整理したり、また確定申告のために会計システムに登録します。保有物件が多いと整理がしきれないため、封を明けずに年末にダンボールで送金明細を税理士に送り、税理士が整理をしている場合もあります。しかし、実はこうしたデータは、元を辿るとデジタルデータとして各管理会社の基幹システムに登録されているはずなのです。俯瞰して見ると、元はデジタルなデータが紙に出力され、人の手を介してそれが各オーナーのもとに郵送され、また人の手を介してデジタルデータに戻っている、そんなことが実際に起きています。

データ連携に苦心した2019年を振り返って、改めて思うことは、データに関して、業界全体でみるとまだまだ解決すべき課題は多く存在するということです。これまでの取り組みの中で解決できたのは、その中の僅か一部であり、むしろこれからが本番だと思います。業界のDXを推進していくためには、不揃いなデータに向き合い、1つ1つのデータを整えていかなければなりません。WealthParkのデータ連携の意義はここにあると考えています。

WealthParkのカスタマーサクセスの歴史を振り返る③に続く


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