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構造デザインって何?

初めての投稿になります。

私は、建設・家具の会社を経営しながら、個人で建築構造デザインの仕事をしたり、大学で教育活動をしたりしています。

このnoteでは、建築構造以外の人に向けて、その中身を分かりやすく説明していきたいと思います。

そもそも建築構造って何だろう?

「建築構造」は、一言で言い表しづらい不思議な分野です。皆さんは、「建築構造」と聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?

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地震力の検討、骨組みの設計、トラス、ドーム、タワー・・・計算ばかりしているイメージが強いかもしれません。

まあ実際、多くの時間を計算の作業に使っているわけですが。一番肝心なのは、そこではありません。

大事なことは、空間を作るための仕事だということです。

私が大学で建築を学んでいたころ、「強・用・美」というキーワードがしばしば登場していました。強さ、使いやすさ、美しさ、どれも大事にしなさいよ、ということです。

このような諸々の条件を満たす建築の骨格を考えていくのが、「建築構造」の仕事(構造デザイン、構造設計などと呼ばれる)になります。

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構造デザインっていつ生まれたの?

少し歴史の話をしましょう。

この職種がいつ確立されたか明言することは難しいのですが、20世紀初頭には “structural engineer” なる職能が明確に出現し始めていました。

エドゥアルド・トロハ、ピエール・ルイジ・ネルヴィ、フェリックス・キャンデラ、オヴ・アラップ、フライ・オットー、バックミンスター・フラーなどが代表的な例です。

かつては建築家や職人が知識や経験をベースに構造の部分を担っていたところを、専門職として確立させたことで、よりレベルの高い設計が可能となりました。

日本では、20世紀初めに佐野利器らが耐震工学の礎を築いた後、横山不学が構造を専門とする事務所(構造設計事務所)を立ち上げたことで、構造家という職能が確立されていったといえます。

しばらく経った1980年頃には、構造表現主義(ハイテク建築とも称される)という建築様式が出現しました。

香港上海銀行・香港本店ビル(ノーマン・フォスター)やポンピドゥー・センター(レンゾ・ピアノ、リチャード・ロジャース)、ロイズ保険ビル(リチャード・ロジャース)がその代表例とされます。

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科学技術が目に見えて進歩する社会を背景として、構造躯体や下地材料、設備配管などを装飾的に露出させる様式でした。

解析技術の進歩と相まって、エンジニアが一番華々しく活動した時期でもあるように思います。

今の構造デザインはどうなっている?

さて、構造表現主義(ハイテク建築)から数十年経った現在、構造の在り方はどうなっているでしょうか?

建築家のジャン・ヌーヴェルは書籍(建築家たちの20代、東京大学安藤忠雄研究室編集、TOTO出版、1999)の中で以下のように語っています。

「二十世紀のポエジーというのは、やはり技術にあるのではないかと思います。エンジニアたちが、その技術を劇的に演出して見せることに喜びを見出していたのは事実でしょう。」

「おそらく今世紀末から来世紀にかけて、どのようにものが出来上がってきたかという過程を、視覚的には認識させないような建築家あるいはエンジニアが最先端をいくと言えると思います。」

その予言の通り、「どうやって支えているのか分からない」「すごい技術を使っていても、それを体感させない」といった建築計画は、現代建築における主要なテーマの一つとなっているように思います。

現代の構造設計

サラッと書きましたが、これを実現するにはとても繊細なデザインスキルが要求されます。

上記の内容は、単に柱や梁が隠れているという話ではなく、例えば従来であれば非構造として見過ごされていた材料・部材を構造躯体と見なす、空間に極限まで寄り添う繊細な構造計画に挑戦するなどといった、意匠的にも技術的にも高度な操作を要するものです。

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つまり、構造デザインは計算が出来れば良いというものではなく、むしろ意匠的なことも含めて最新の流行に敏感である必要があります(実際、意匠系の会社を経営していて良かったと思うことは多いです)。

機械学習が発達する21世紀では、尚更です。

このあたりはもちろん建築構造に限らず、技術メインの職業すべてに当てはまるので、大学教育に携わる立場としては若い世代にしっかり教えていきたいと思っている次第です。


コラムを書いた人:

東郷拓真 @Takuma_Togo

以下、運営している2つの会社(建築設計 / 文化施設の家具・建設業)


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