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【ストリートバー開業記③:内装デザイン】飲食店の経営を成り立たせる内装デザインとは

こんにちは。井澤卓です。

仲間とデザイン会社を経営しながら、会社のメンバーで飲食店"LOBBY"を経営しています。

このnoteは、僕達が新店舗を立ち上げるに当たり、構想段階から作り上げる過程を書き連ねるシリーズです。

第一章、第二章はこちらをご覧ください。

前回までに、開業目的と、収支計画について書いてきました。
今回は、その「目的・計画をいかに達成するか」という運用フェーズにおいて最も先立つ部分、内装デザインについて。

ロマンとそろばんに向き合いながら理想の空間を作っていく過程は、頭を悩ませつつも一番ワクワクする期間。

今まさに進めている内装設計の図面とともに、現状の計画を書いていきます。

■前提条件まとめ

<物件条件>
立地:代々木公園駅徒歩2分(裏通りの立地)
建物:戸建て
広さ:71.19㎡ / 21.53坪 (2階建て)
家賃:¥407,000
坪単価(事業面積あたり):¥18,903

<業態>
カフェ(コーヒーと焼き菓子):10時〜17時
バー:19時〜1時

<目標数値>
・月間売上:¥2,665,000
・月間利益:¥799,000

デザインは目標を達成するための手段

飲食店において、内装デザインはお店の第一印象。
そのお店の業態、イメージ形成のきっかけになると同時に、来店客にどんな風に過ごしてもらいたいかが表面化する重要なパートです。

前述のように、僕達はデザイン会社であるため、内装〜グラフィックまであらゆるデザインを自分達で行っています。

設計は、夜はバーにも立つ土堤内を中心に、チーム全体で意見を出し合って進めています。

僕達は内装デザインを「おしゃれなものを作る」「とにかく新しいものを作る」というアーティスティックなものではなく、目標達成のための手段だと考えています。

特に飲食店においては、業態、スタッフの人数、客数、滞在時間、客単価等、事前の事業計画に基き、計画を達成するためのデザインが必要です。

デザインは、オペレーションの効率化等運用面はもちろん、集客のフックともなるPR面にも大きく関わります。
だからこそ、事前の綿密な事業計画が不可欠です。

※この点は、意外と多くの飲食店の開業時に見過ごされがちだと感じます。
やりたい事が先に来てしまったり、なんとなくで決めた予算をベースにしたり。
予算に関しては、客単価を上げるためには内装に投資する必要があるし、その判断も収支計画から意思決定すべきだと思っています。

フロアプラン / 平面図

設計に着手する上で、まず最初に考えていくのがフロアプラン。
「平面図」と呼ばれる上部俯瞰図に、実寸でキッチン、カウンター、機材、什器、椅子、テーブルなど必要な項目を落とし込んでいきます。

この図を元に、スタッフの導線や来店客の動きを想像し、微調整を繰り返します。

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この時点で、「ガスコンロや製氷機を入れるか、シンクや作業台、コールドテーブル(冷蔵庫)はいくつ必要か」等を決めるため、基本的な営業形態が見えていなければなりません。(バー業態では、「フードを出すか。やるならどのくらい出すか。」など。)

今回は、三角形という独特の形に加え、木造戸建てということであらゆるところに取り外せない柱が立っており、フロアプランがかなり難しい。
形を変えて、様々なパターンを検証しました。

最初のアイデアはこちら。

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ベーシックな形です。
使いやすそうですが、実際に現場で検証した所、客席の動線が狭くて不便になりそうで再検討に。

ちなみに、この☒マークが柱です。
絶妙なところに柱が立っていて本当に厄介。戸建て、難しいです。

次に、人の歩きやすさを考えて出たアイデアがこちら。

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デッドスペースがなくて良さそう。

ただ、この案は「入ってすぐにカウンターに人が座ってると圧迫感がありそう」という理由と、「柱がキッチン内部にあって作業の邪魔になりそう」という理由で見送りに。

検討を繰り返し、紆余曲折を経て決まったプランがこちらです。

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左が1F、右が2Fのプラン。

最初のアイデアをベースに、カウンターの形を変えたプランに落ち着きました。不規則に走るカウンターは、柱のデッドスペースを最小限にするために生まれた形状です。

バー・カフェとしての機能を大前提に、キッチンもある程度の料理はストレス無く作れる形になりました。

施工的にはカーブが多いため直線カウンターよりかなり高くなってしまいますが、ここは仕方ないですね。

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▲入り口から見る現在の光景。柱の存在感がすごいです。笑 ここにカウンターが出来てきます。

客席は、1Fは背もたれがない椅子がメインになり、カジュアルスタイル。
一転し2Fはゆったり座れるソファスペースにしています。

詳細は展開図という横から見た図で解説していきます。

フロアプラン / 展開図

入口から見た展開図がこちらです。
今回、一番気合を入れて作っているのがスキップフロア。いわゆる中二階です。

下の図面の右下の部分があたります。

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元々2Fに繋がっていた階段を途中で壊し、中二階を作りました。
こちらが工事段階の今の現場。下から見るとこんな感じ。

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「中二階を作る」というのはかなり大胆なアイデアで、一度天井を壊して再度作る大掛かりな施工。相応に費用がかかります。

それでも今回この工事を実施した理由は2つ。
一つは、空間に開放感と光を入れるため、もう一つは、既視感ないユニークな空間を作るためです。

元々この物件は周囲に建物が多いため日当たりが悪く、1Fはかなり暗いくぐもった空間でした。

そこで考えたのが吹き抜けを作るアイデア。

天井が抜けると光が入るし、空間が広い印象を受けます。

ただ、吹き抜けを作ってしまうと、その分客席を減らさなければなりません。客席の減少は、収支計画にも影響するためできれば避けたいところ。

陽の光を入れ空間に開放感を作り、客席も維持するためにはどうすればいいだろう。

そこで考えたのが中二階です。

かなり大胆なアイデアでしたが、実際に作ってみると1Fにも陽の光が差し込み、空間的にも珍しく、今の所いい感じになりそうです。

中二階の下の部分は、天井が少し低いおこもりスペースに。
下のようなイメージで、狭い空間に最大5人入れる秘密基地のような空間になる予定です。

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全体を別のアングルから見るとこの形になります。

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右下にあるのはボックス席。

入り口ドア付近にボックス席を配置し、喫茶店っぽい雰囲気もプラス。段差も空間のアクセントに。

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カウンターのイメージはこちら。

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今回キーカラーとする水色のタイル天板に、腰部分は木と麻素材で少しクラシックに。
カフェ・バーと2つの顔を持つお店のどちらのイメージにも合うように作っています。

カウンターはお店の顔なので、いつも時間をかけるポイント。あり触れたデザインにはしたくなかったので、しっかりお金も投資していきます。

二階席の使い方は悩みましたが、深く腰掛けるソファスペースに。

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これは、夜にゆったりお酒を飲んでほしいことと、お昼の時間帯の長時間滞在を防ぐ狙いがあります。

このお店は、通常のカフェと比べて、ワークスペースになる席をあえて少なくしています。

お昼にパソコンを開いて仕事をすることは受け入れつつ、リモートワーカーがあまりに増えてしまうと回転率が悪くなり経営を圧迫する側面があるので、長時間の仕事には向かない空間にし、自然に回転する仕組みを目指しています。

お店のキービジュアルを作る

空間をデザインする際は常に、キービジュアルを作ることを意識しています。

単純に「映え」を作るというよりも、みんなが一目であの店だとわかるアイデンティティを作るイメージです。

SNSが当たり前のツールになった今、過去の実績や有名無名に関わらず、新店であっても一気に広がり人気店になっていくケースはよく目にします。

そしてその移り変わりも、とても速い。人の情報の取捨選択のスピードは、どんどん速くなってますよね。

これだけ情報が膨大で、回るスピードが速い世の中では、個別の情報はすぐに埋もれてしまう。

だからこそ、来店客の人々が繰り返しUPするお店の定番のカットを意図的に作り、このお店はこれ!と記憶に残るイメージを作ることが大事だと思っています。

ACE HOTELポートランドのこのカットなんかは絶対撮っちゃう。

遠く離れた日本でもこの光景は馴染みがあり、ACE HOTELの代名詞となっています。

キービジュアルは、インテリア、料理、お菓子、ドリンク、スタッフなど、どの要素を使って作ってもいいと思います。

今回は、柱がある戸建てでインテリアの全体像を引いて撮ることが難しい物件のため、テーブルをキービジュアルにすることにしました。

テーブルに焼き菓子、ドリンクが置かれた光景は誰でも写真を撮ることができるし、お店でこだわる飲食物のアピールにもなります。

▲タイル天板のイメージ。色はブルーを想定。

そのため、テーブルに投資し、キーカラーのブルーのタイル天板や、テラゾー天板をオリジナルで作り、それにマッチした食器を選ぶ予定です。

と色々準備をしつつも、いざお店を始めると、全く意図した行動が生み出せなかったり、予想もしてなかった反応があったりします。笑

「そんなに計画しすぎてもつまらないよ」という意見もありそうです。

ただ個人的には、お金をかけるべきかどうか等、意思決定が迫られる数々のタイミングで明確な計画がある方が怖くないし、後悔しないのでそうしています。

この計画が結果どうなるかは開業してからのお楽しみ。
実際の営業を経て笑っているか、はたまた泣いているかは7月頃に書いてみたいと思います。笑

第四章は、グラフィックデザインについて

ようやく空間のイメージが出来てきましたが、今も絶賛設計図面を進行中。

ここから詳細な見積もりに入ります。
設計中は、どんどんやりたいことができて詰め込んでしまうので、見積額は大幅に予算を超えてしまうことがほとんど。

その場合、VE(バリュー・エンジニアリング:Value Engineering)という、基本品質を落とさずにコストダウンをする方法を検討するプロセスを経て、最終プランを決定、施工に移ります。

オープンは4月1日を目指しているので、かなり押しちゃってますね...。
オープンが遅れるほど、家賃分が単純損失として積み重なるため死活問題。急がないと。

内装設計が一段落した段階で、ここからグラフィックデザインに着手します。

ロゴ、キャラクター、メニュー、カップや持ち帰りボックスなどのパッケージデザイン、内装壁画等など、グラフィック面もやるべきことがたくさん。

立ち上げ時のグラフィックデザインはお店のビジュアルブランディングのベースになるため、中長期の使い方まで想定して計画する必要があります。

いよいよ開業間際。ここからは想定外のことが次々起こるドタバタフェーズ。内装施工の進捗もアップデートしながら準備状況を書いていくのでまたぜひ読んでくださると嬉しいです!

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