taku_tanimoto

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『偶然と想像』『春原さんのうた』感想その2

注意1:ネタバレがあります 注意2:とても長いです 注意3:あまりにも長いので2回に分けました 『春原さんのうた』概要 『春原さんのうた』は東直子の歌集『春原さんのリコーダー』の表題歌を原作とした映画作品である。 『春原さんのうた』とテキスト さて、それではそもそもテキストである短歌が原作の『春原さんのうた』についてはどうか。 この映画におけるテキストの強度は、意味的な首尾一貫性、説得性という側面からすれば、はっきり言ってめちゃくちゃ低い。登場人物たちがとにかくみん

    • 『偶然と想像』『春原さんのうた』感想その1

      注意1:ネタバレがあります 注意2:とても長いです 注意3:あまりにも長いので2回に分けました 飯田橋ギンレイホールで『偶然と想像』と『春原さんのうた』を2本立てで観た(濱口、杉田両監督のトークショー付き)。『偶然と想像』『春原さんのうた』ともに2回目の鑑賞だったが、2作品を続けて+トークショーを観たことで新たな発見があったので書き留めておくことにする。 ---------------------- 『偶然と想像』概要 まず『偶然と想像』について。この映画は3つの短編か

      • 『アメリカン・ユートピア』感想

        【注意】 1.ネタバレがあります 2.とても長いです 映画『アメリカン・ユートピア』概要 映画『アメリカン・ユートピア』は、デイヴィッド・バーンの同名ソロ・アルバムを原案とするブロードウェイ・ショー『American Utopia』のスパイク・リー監督による映画化作品である。舞台背後と左右を覆う簾状のカーテン以外はほとんど何もないステージで、グレースーツに裸足という姿のメンバー総勢12名が生演奏し、ときに行進し、ときにフォーメーションを組んで踊る。楽器はエレキギターやキー

        • 『ゆきゆきて、神軍』感想

          注意1:ネタバレがあります 注意2:とても長いです 『ゆきゆきて、神軍』とは 『ゆきゆきて、神軍』は、今村昌平に促された原一雄監督が無政府主義者・奥崎謙三を追ったドキュメンタリー映画である。  あらすじ:苛烈を極めたニューギニア戦線で奥崎の所属した部隊のうちの2名が「敵前逃亡」の罪で銃殺されたが、それは終戦から23日後のことだった。奥崎は処刑された兵士の遺族とともに(同行を拒否されてからは遺族の偽物を仕立てて!)当時の上官をひとりひとり訪ね、時に暴言を吐き、時に暴力に訴

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          『シン・ウルトラマン』感想

          『シン・ウルトラマン』の感想を書く。ものすごく長いので、長くても良いよ、って人だけ読んでください。あと盛大にネタバレしてるので未見の方はスルーしてください。  ネット上では評価がかなり真っ二つに分かれているようだけど、僕個人の感想としては『シン・ウルトラマン』は日本一のウルトラマンオタク、庵野氏の面目躍たる見事な空想特撮映画だと思う(以下敬称略)。 原典への愛  この映画にはとにかく原典への愛情に満ちたフェティッシュなまでのこだわりがこれでもか!と詰まっている(なんなら

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          ゆっくり浸かって『春原さんのうた』

           2022年2月4日、『春原さんのうた』を観た。とても良い映画だった。本編上映後、杉田監督と前東京国際映画祭ディレクターの矢田部氏のトークショーがあり、とても興味深い話を聴くことができた。以下『春原さんのうた』について感じたこと、考えたことを記す。 ******* 『春原さんのうた』は関係性を観る映画だ。登場人物たちの会話であれ映像による描写であれ、この映画の中では状況を説明することが徹底的に避けられる。登場人物それぞれの関係性を反映して、言葉は時によそよそしく、時に親し

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