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サブスクウキ

近頃は、世の中の動きに付いていけないことがよくある。
気が付くといつの間にか、世の中のルールが変わっていたりもする。
最近も、こんなことがあった。

体調が悪い。
不順な気候のせいだろうか。
吐き気や倦怠感があるなと思っていたら、なんだか息苦しくなってきた。
呼吸がうまくいかない。
気管支に異常があったり、咳や痰が出たり、喉や肺が痛かったりするわけではないのだが、呼吸が苦しいのだ。
熱は無いようだが、横になって様子を見ても改善しないので、やむなく医者に診てもらうことにした。

掛かり付けの棚橋内科クリニックに行く。
棚橋先生は僕の症状を聞くなり、少し怪訝そうな顔をして言った。

「空気が低量になっているだけですよ。
追加購入しないんですか?」

「えっ?
どういうことですか?
さっぱりわかりません」

「もしかしたら、認知機能にも問題があるのでは?
本当にご存じないんですか?
最近空気が有料になりましたよね?」

まるで記憶にない話ではあったが、事態を知るために敢えて、ひと芝居打つことにした。

「あっ、そうでしたね。
最近公私ともにばたばたしていて、まともに寝ていないもので、なんだか情報弱者なんですよ…」

「ということは、何も手続きしていませんよね?」

「え、ええ…何かした記憶はありません」

「それなら、デフォルトの無料プランですね。
成人男子には少々きついと思われますので、早く有料プランに替えたほうがいいと思いますよ。
わたしは商売上、無制限定額です。
容量をどれくらいにするかは、すぐには見当がつきませんよね。
しばらくは、低量モードになるたびに追加購入して、様子を見るのがいいかもしれませんね」

つまりは、こういうことだ。
知らないうちに、空気が有料になっていた。
無料のプランもあるにはあるのだが、基礎代謝の低い老人でもない限り、そのプランで設定された容量で納めるのはかなり厳しい。
制限を使い切っても、命に関わることだから、供給が断たれたりすることは無いのだが、低量化されることになる。
低量化は月が替わればリセットされるのだが、しんどければ追加購入するしかない。

毎日息苦しい思いをするのは嫌なので、僕はとりあえず、空気を追加購入することにした。

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