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『圕の大魔術師』考察Vol.1 - 名前には意味がある

『圕の大魔術師』という最高のマンガがあります。もうほんとに最高なんですが…このnoteでは本作の考察記事を書きます。ちなみに圕は「としょかん」。

既刊4巻ですが、思いっきりネタバレしていくので未読の方は注意してください。逆に単行本をベースにしているので既に連載誌では答えがでているネタもあるかもしれません。

また、作品を読んでる前提で書いていくので細かい説明はしません。マンガサービス「アル」でネタバレ無しのレビューも書いているので未読の方はよろしければどうぞ。

では早速行きます。今回は(次回があるかはわかりませんが)登場人物たちの名前をもとに考察していきます。

『圕の大魔術師』の作者は誰なのか?

いきなり訳のわからないテーマですが、まずは本作の表紙を見てください。そこに記載されているとおり、『図書館の大魔術師』には原作があることが明示されています。

原作:『風のカフナ』
著: ソフィ・シュイム
訳:濱田泰斗
画:泉光

しかし奥付(本の最後に著者名や発行者などの情報が書いてあるところ)には泉先生の名前しかなく、また検索しても「風のカフナ」もソフィ・シュイムも実在のものとしては出てきません。また「カフナ」とはもちろん、この世界の司書たちの呼び名です。

つまりこの作品は、シオたちが生きる世界の誰かが書き遺した物語を現代の言葉で翻訳し、それを泉先生が作画している、という形を取っています。こういう細かい設定大好き。

で、じゃあソフィ・シュイムとはいったい誰なんだ、という話なんですが。結論からいうと、4巻でついにその名を持つ人物が登場しました。シオが晴れて司書試験に合格し、カフナ見習いになった時の同期です。

ただこの人物、見るからににアヤシイ人物として描かれています。

他の同期を見ても普通試験を受けるのは13~20歳くらいのようですが、ソフィさんは35歳。しかも超難関の司書試験で、ずっと浪人してたとかでもなく「ちょっと司書になってみようと思って」で受かってしまう強者。明らかになんか秘密がある人物です。また一児の母らしく、この子どもが後々キーになるかも…?とにかく要注目人物であることは間違いありません。

別の面からも考えてみます。まずタイトルの「風のカフナ」ですが、これは風のマナを持つ魔術師を指すと考えるのが自然です。

しかし、『圕の大魔術師』の主人公であるシオが持つマナ属性は現時点で「風」ではなく「水」。本作の原作が『風のカフナ』だとすれば、タイトルと主人公が一致していないことになります。(今後の展開でシオの新たな能力が見られるかもしれませんが、そこは一旦おいておいて)

また一巻冒頭には、原作からの引用として下記の言葉。

「この物語を 私の英雄のために」 ーソフィ・シュイムー

そして風の魔術師の代表格と言えばもちろん、シオの憧れであるセドナです。

もう少し考えます。謎解きの代表と言えばアナグラム(文字の入れ替え)がありますね。

ソフィ・シュイム:Sofi Shuim

シオ・フミス:Shio Fumis

はい、ソフィ・シュイムを英語表記にして入れ替えるとシオ・フミスになります。

「セドナに救われ憧れたシオが、セドナを思いながら書いた物語」あり得そうな気がしませんか。

もちろん実際にソフィ・シュイムさんが登場したので、全然関係ない可能性もあります。が、ただの偶然とも思えません。何はともあれソフィさん周りは要注目。

またシオの同期にサエ・フミスという同姓の不思議ちゃん系少女もいるので、彼女にもさりげなく注目してます。

セドナはラコタ族?

物語の最重要人物の一人であるセドナ。4巻最後のモノローグは衝撃でしたね。その出自も本作のキーになってくると思いますが、おそらくセドナはラコタ族です。その根拠は名前から。

下の3人が、ラコタ族出身のシオの同期です。また見習い生を受け持つ副担任のなかにラコタ族のチセ先生もいます。彼らの名前を並べてみましょう。

アヤ=グンジョー(群青)
カナ=ミドリィ(緑)
ユキ=チャイロウ(茶色)
チセ=レッドゥ(赤)

このように名字が色に由来するものとなっています。そしてセドナの名前。

セドナ=ブルゥ(青)

黒髪に福耳、大きめのピアスという特徴も共通していますし、これは確定と言ってもいいんじゃないでしょうか。

さらに細かく言うと、泉先生はtwitterにてアヤやユキはかつて内陸側に住んでた一族の子孫、カナやチセは海側の子孫であることを明かしています。(ニガヨモギの使者によって現在は全員内陸に追いやられている)

彼らの最も分かりやすい違いは虹彩の大きさだと思うので、これも考えるとセドナはラコタ族の内陸側の子孫であると考えられます。

(2020.08.25追記)ちなみに、ラコタ族の首都(ラコタ自治区首府)は「星の都カラ」といいます。カラ、つまりColorですね。これはラコタ族のかつての英雄カラの名から来ていると考えられます。

もう一つラコタ族の名前関連で小ネタ。ヒューロン族によるホピ族大虐殺を招いた『黒の書』ですが、実はその製作者ルゲイ=ノワールはラコタ族です。ノワール、フランス語で黒という意味ですね。

27人目の同期はカドー族?

4巻にてシオの同期27人が勢ぞろいしましたが、一人だけ「訳あって」登場していません。扉絵によるとシンシア=ロウ=テイという少女です。この少女、カドー族ではないかと推測しています。その根拠は名前と作中に登場するさりげない一コマ。

まず名前ですが、現時点で判明している各民族の名前のうち、ミドルネーム的なものがあるのはクリーク族とカドー族です。並べてみます。

クリーク族:
ダイナサス=ディ=オウガ
バスタース=ダ=カイザ
グレイブル=ダ=ヴェルボワ

クリーク族はやっぱりなんか、獣っぽくて強そうですね。そして真ん中はミドルネームというより冠詞という感じ。

カドー族:
サラ=セイ=ソン
レイ=アナ=エダン

並べるとやはりシンシア=ロウ=テイの響きはカドー族の名前に近いです。あと書いててなんか名前がスターウォーズっぽい感じもしましたが、検証が大変そうなのでここでは放置します。

そしてもう一つの点。まずカドー族は基本的にみな仮面をかぶっているので、その素顔を見ることはできません。ただシオたちの副担任のなかに仮面をしていないカドー族の先生がいて、彼女の素顔からカドー族にはどうやら角があるようです。

で、次にこのコマを見てください。右下の歯車にカドー族の少女が映っています。

このコマは、見習いクラスの主担任であるイシュトア=セロス先生が、シオたち生徒を思いながら教員室のような場所で語っている部分です。前のコマがこちら。

この場面はシオの実際の行動ではありませんが、現時点で落ちこぼれのシオが小さな小さな自分という歯車を手に取り、そのピースをはめることで次の歯車が動き、それが最終的に大きな時代の針を動かしていく、、という今後の展開を予見させるようなアツいシーン。そして、シオが歯車を組み込む先にいるのが、カドー族の少女です。

しかも、今まで登場したカドー族はみな黒髪ですが、扉絵で後ろを向いているシンシアも歯車に写っている少女も髪色が違います。ヒューロン族とホピ族の混血で金髪のシオともどこか共通する部分がありそうな…?

以上から、この歯車に映っている金髪?のカドー族の少女が27人目の同期シンシアであり、今後シオがこの少女と出会うことで大きく物語が動き出す…そんな意味が込められているのではと思うのです。

(2020.08.25追記) 上記で金髪の少女と書いたのですが、今はシトラルポル(白髪)と推定してます。詳しくはコチラ。

まだまだ色んなネタが…?

本作の綿密に設計された世界観を考えると、まだまだ色々な秘密や元ネタが仕込まれているのは間違いありません。名前の元ネタや考察できることがあれば今後もnoteに書いていきます。

ただ、『圕の大魔術師』はこれらの細かいネタを一切気にせず、普通にストーリーを追っていくだけでめちゃくちゃ面白い作品です。緻密で繊細な絵、映画的構成、熱いストーリーとセリフの数々、、、何度も読み返したくなる作品です。

ぜひ細かいことは気にせず、まずは一巻、手に取って読んでいただければ幸いです。

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