見出し画像

【他人を支配したがる人たち】読む事で強くなれる1冊

オススメ度(最大☆5つ)

☆☆☆☆

心理学の本としては、応用的なものにいきなり手を出してしまったかもしれない。しかし、後述するが、僕自身このタイトルを見た時に読まずにいられなくなってしまったのだ。

そして、この本を読んだおかげで、僕は他人との関係をいい方向に改める事が出来た。
僕にとっては得るものが大きかった1冊だ。

〜たしかにいる冷酷な人々〜

僕の父は教師をしている。人とのコミュニケーション能力が高く、誰とでも仲良く話す事ができる。生徒や保護者からも評判は良いようだった。
しかし、そんな父が一度だけ保護者の対応に頭と心を悩まして軽い鬱に陥った事がある。
何を言っても伝わらない、どんなに親身になって話を聞いても相手は敵意を剥き出しにしてくる。時間をかけて話し合いの場を設けても、相手は一切引き下がらず、父に無理難題を押しつけて追い詰め続けたのだ。
今ならわかる。父の間違いは「どんな人でも、時間をかけて話せばわかりあえる」と信じていた事だった。

僕も、以前職場でパワハラを受けて、軽い鬱に陥った事がある。
何を言っても聞いてもらえない。他人のミスを、あたかも僕のせいのように言われ、僕の功績には見向きもしない。職場内で、明らかに僕だけ劣っているような扱いをされたのも一度や二度ではない。
今ならわかる。僕も父と同じ間違いを犯していたのだ。「どんな人でも、理由無くあからさまな攻撃をしてくるハズなど無い」と思っていたのだ。

本書によると、心理学の世界でも「攻撃本能は現代社会を生き抜く上で、至って正常な本能である」とした上で「他人への過剰な攻撃は、神経症の1つの症状であり、自らの不安やトラウマが原因となり起こるものである」と考えられていた。
しかし、"攻撃"や"支配"そのものが、自分のスタイルとしてしまっている人間が、たしかに存在する。
普通の人間であれば、他人を攻撃する事に対して、なんらかの抵抗やブレーキがかかる。例え、他人を攻撃する事でその目的を達成する事が明白な場合でも、人の心は他人を攻撃する事に抵抗を示すものだ。しかし、自分の目的や欲求を果たすための手段として、"攻撃"や"支配"をなんの躊躇もなく用いる冷酷な人間が存在するのだ。

僕らは、そんな冷酷な人間が存在する、という認識を持たなくてはいけない。
誰に対しても「信じる心を持つ」事は、もはや、生き残る事を放棄しているに等しいのかもしれない。

〜攻撃された事にすら気付かない巧妙な手口〜

本書の流れは、半分以上のページを使ってマニピュレーターとその被害者のエピソードについて書かれ、残りの40%のうち20%でマニピュレーターの具体的な手口、最後の20%でそのマニピュレーターの対処方が書かれている。

本書で紹介されているマニピュレーターという存在は、他人を攻撃して支配する事に非常に長けている。
周りの人間はおろか、攻撃された本人も取り返しのつかない事態に陥るまで気づかないのだ。
巧みに嘘をつき、はぐらかし、責任を他人になすりつけ、時に無知なフリをして、自分の攻撃性については否認する。

本書では、そんな巧みなマニピュレーターの手口を余す事なく教えてくれる。

その手口を読み進めるごとに、自分の身に起こった事を思い出してしまう。
とても、恐ろしい事実を突きつけられてしまう本ではあるが、同時に今後同様の事態に出くわした際に冷静に対処する事が出来るだろう。

〜優しい人、人を信じたいと思う人ほど本書を手にとるべき〜

全体を読んでいて、マニピュレーターに狙われやすい人、というのは共通する性格があるのだと思った。
それは、ナイーブ、良心的、自分に自信がない、理屈で物事を考える、そんな性格を持っている人たちだろう。

本書の最後には、マニピュレーターの対処方がいくつか書かれているが、その中でも僕が1番重要だと思ったのが、自分の性格を熟知する、という点だ。

マニピュレーターは、相手の弱い部分を突いて攻撃する術に非常に長けている。

自分が突かれると1番痛い部分はどこなのだろう?自分の性格の弱点を自分で認識することが、第一歩なのだ。

そうすれば、マニピュレーターに対してだけでなく、あらゆる攻撃に対して備えることが出来る。

賢明な人は、他人に対して優しくありたい、人を信じたいと思うだろう。
そのためには、自分自身が強くなくてはいけない。
自分に対する攻撃に敏感になり、他人との関係を改める事が、強くなる一歩なのだ。

本書は、マニピュレーターという特殊なケース(いや、ホントは身近に多くいるのかもしれないけど)についての本だが、複雑な人間関係を生き抜く上で普遍的な行動や考え方を示してくれる。

少なくとも、僕はこの本を読んだ事で、人間関係に対しての考え方は大きく変わった。
他人からの攻撃に以前ほど臆さなくなった。

他人を信じるだけが良いわけではない。たしかに存在する牙を隠したオオカミの存在を認識する事で、自分自身を信じることも出来るだろう。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?