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2-3 教育学部だよね?

東京学芸大学に在学中に感じたことなどを綴っています。

前回は


 普通は教育学部と聞くと、先生になりたい人が行く学部だと思われています。確かに多くの学部はそうなんですが、すべてがそうだとは限りません。

 東京大学や京都大学など旧制帝国大学系の大学にある教育学部は教育学を研究する学部で教員養成を主たる目的としていません。早稲田大学や広島大学の教育学部はその中間で、教育学の研究と教員養成を平行して行っています。そして、その他多くの教育大学・教育学部は教員養成をメインで行っています。

 ところが、東京学芸大学は教員養成がメインの大学のはず(大学の当局はそう思いこんでいる)だったのですが、中に入ってみるとあら不思議、実は思っている様な簡単な大学ではありませんでした。

 学生はおおざっぱに分けて3つのタイプに分けられました。

1.東京都で教員になりたい学生

 このタイプの学生は、本来大学が一番期待している学生だと思います。初等教育教員養成課程ではこの学生が多く、真面目な学生が多かった様な気がします。一方、その他の課程では少数派で、その優秀さ故に、他のタイプの学生に色々な場面で頼りにされていました。自分が無事に卒業出来たのは、このタイプの学生だった中学校の教員になった○君や、中央官庁の官僚になった△君のお陰です。本当に感謝しています。ありがとう!

2.地方の教育学部では物足りないので上京してきた学生

 このタイプの学生はどの課程でも多く、プライドが高い点は多少鼻につくものの、総じて向学心が高かった印象があります。自分も広く括るとこのタイプだったかと思います。ただ、その志を貫くには地元の教育学部出身者や、その他の大学で免許をとった学生達との競争に勝っ必要があり、挫折する学生も多かったのも事実です。実際自分も挫折した一人です。(笑)

3.東大や藝大などの有名大学に行くには学や芸が無いが、とにかく東京の国立大学に行きたかった学生

 正に学芸大学の名前にぴったりな学生のタイプ(笑)です。絶対数は少ない筈ですが、その劣等感?をバネに野望を抱く学生が多く、実際に大学を強く引っ張っていたのはこのタイプです。創作のサークルや公務員受験のグループといった、教員とは直接結びつかないサークルなどを運営する事など通じて、教員とは別の道を模索している学生が多かった印象です。そのアクティブな活動に強い影響を受け、最初は前記の2つのタイプにいたのに、このグループに宗旨替えした学生も多かった様に感じます。

 同質性が高い筈の教育学部の中に、3つの異質性が混ざって、時には化学反応を起こした不思議な空間が出来る事もあり、規模の割には色々と面白い経験ができました。

 それを強く感じた1つ目の出来事は、1年生の時に取った教養科目の美術科系に属する「演劇鑑賞」。1コマで50人位が履修しましたが、名前は演劇鑑賞にも関わらず、実際には演劇を実際にやる事が目的の科目でした。そこで出会った人達は3つのタイプの学生が完全に混ざり合っていて、強烈な刺激を受けました。

 実技系では、藝大を受け続けたが遂に諦めて学芸大学に来た学生や、絵本を作りたい学生、音楽を極める学生など。実技系以外の学生でも、自分を含めて地方出身の個性的な学生が多く、お国自慢で話が盛り上がった事もありました。様々なバックボーンを背負った個性がぶつかって公演前は準備で夜遅くまで大変でしたが、刺激を受ける日々は楽しくその甲斐もあって公演は成功して、履修が終わっても、3年生の専門が忙しくなる前まで交流が続く程に仲が良くなりました。大学時代の良き思い出にとして今でも強く心に残っています。

 教育学部だよね。でも学芸大学は教育学部のカテゴリーを超えた究極の総合大学だったのかもしれません。それは制度としての教育学部を超えた、色々な特性を持った学生が自分の力で作り上げた総合大学です。正に「学芸大学」という名前に恥じない大学だったと思います。

 役人や学者、クリエイター、スポーツ選手に芸能人などが、学校の規模からすると多く輩出にされているのも、そんな土壌があったからかもしれません。

 まだまだ学芸大学の話は続きます。

次回は





 

 


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