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5-3 昔の大学院生の生活 その2

前回は


進学か就職か

 修士課程は2年しかないので、就職が進学がの選択はかなり早くに訪れます。当時学年進行で設置される予定だった、博士課程の設置が遅れているいるとの話がありました。

 どうも、教員養成系の博士課程が、国立よりも早く設置されることが問題になっていた様です。丁度、東京学芸大学でも博士課程の設置の方針が決まった頃で、それに合わせて設置を認める方向に指導された様です。

 この事で、進学するには他学部の研究科、他大学の研究科を受験するか、数年後に設置される博士課程の設置まで留年して待つかの選択肢に絞られました。語学が相変わらず苦手だった私にとって、他の研究科を受験する事にはかなり高いハードルがありました。留年するのも経済的に苦しいので、次第に就職した後に、再度博士課程への進学を考えようとの思いに変わりました。

大学院生の就職

 決断をした1年生の終わり頃には、もう民間のシンクタンクなどの就職には出遅れていました。これから普通に就職するには、一般の公務員や私立学校の教員などの選択肢しか残されていませんでした。因みに、社会科の自治体での教員試験は、当時の国家1種試験より難関で、競争率百倍以上なので最初から想定外です。

 就職課に通って、手書きで綴られた就職した先輩方の資料を読んで行くと、選抜の内実が複雑な私立学校の教員よりも、実力主義の公務員に興味が出てきました。この年に受けていた地方自治の講義の影響もあったと思います。

 試験は6月から8月にかけて行われました。就職に舵を切ったのが3月の終わり頃で、最初の試験まで僅か3ヶ月です。僅かな学習期間でしたが、国家1種以外は2次試験まで進み、地方と国家2種で最終合格を得ました。官庁訪問で訪ねた幾つかの国立大学で話を聞いて、ここだとひょっとして自分の研究が生かせる場があるのかもしれないと思い、合格直後に連絡のあった大学で面接を受けて、採用が決まりました。しかし、地方公務員にも未練はあり、最終合格者の召集日の前日まで悩みました。

 結局、招集日の前日に速達で辞退届を送ったのですが、召集当日に担当者に届いておらず、わざわざ自宅に電話を頂き、恐縮した記憶があります。もし地方公務員になっていたら、また違った人生があっただろうと、今の身の上考えると想うところはあります。

 研究室では最初の進路決定者でした。この時には、本来修了していた筈の先輩方が留年していたので、2年生が5人いました。就職したのは私と私立学校の教員になった先輩の2人だけでした。1人の先輩は何故か司法試験に挑戦する事になり、他大学の博士課程に挑戦した残りの2人のうち1人が合格し、その大学院で博士号を取得した後に地方の大学に教員として就職して、今では教授となっています。

 私の修了後に入学した2つ下の後輩の進行年度には博士課程が開設され、それ以降は無事に博士課程までのルートが整備される事になり、博士号を持った後輩が続々生まれて行くことになります。ただ、この頃から大学院生の総数自体も全国的に爆発的な増加の時代に突入し、特に文系の博士号の学位取得者にとっての受難の時代が、今に至るまで続きます。

そもそも文系大学院生の進学とは

 近年は、高学歴ワーキングプアと呼ばれる、博士号取得者の大量増加に比して、アカデミックポストが増加していない為に、非正規の雇用に止まる博士が増加して、貧困層に陥る問題が起きています。任期付のポストか、1年契約の非常勤講師の仕事ばかりで、その不安定な身分への怖れから、気を病む博士も多く、下記の様な悲惨な事件があったとも聞いています。

 あの段階で就職を決めて良かったのかどうかは、その後の高学歴ワーキングプアの話などを聞くと、とりあえずは賢明だったのかなと思っています。反面、就職した大学職員すら辞めてしまった今となっては、どっちもどっとだったのかなとの思いもあります。

 文系大学院生の進学と就職は、進学しても地獄、中途で就職しても専門性を生かす場面は殆どない仕事ばかりと、どっちに転んでも悲惨な状況に陥る可能性のある、非常に難しい問題だなと感じています。

 もし、今進学を考えている大学生にアドバイスできる事があるとすれば、モラトリアムの延長で進学するのは絶対お勧めしません。修士・博士と進学するほどに就職先は限られていきます。それに屈しない展望を持った上で進学して、方向転換するときには速やかに転換する勇気を持ち、専門に拘らずに就職先を考える事が重要だと思っています。

 一般の就職をしたとしても、年を重ねて行くにつれて、院生時代の経験が生かせる部署に就ける機会もあるかもしれません。院生時代の経験を貯金だと思って、就職先での目の前の仕事を、先ずは経験として積んで行きましょう。

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