見出し画像

柿畑さんばんざい

『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー


キミさんが言うには、柿畑さんは何でも話を聞いてくれるのだと言う。

「あなた、悩み事があったら何でもカキバタさんに相談するといいわよ。
別に答えが返ってくる訳じゃ無いけど、すっきりするから」
と、言うので私は、
「どうやったら柿畑さんに会えますか?」
と、質問してみた。
キミさんは、
「カキバタさんよ」
とだけ言った。

怪しい。
私はキミさんがその柿畑さんに電話とかで話を聞いて貰っているお友達か、下手したら変な宗教みたいなものかもしれないなと想像した。

ある日柿畑さんが亡くなった。
キミさんは案外あっさりしていて
「何処かへ行っちゃったんだから仕方ないわ」
と、亡くなった事を旅に出たみたいに言っていた。
それにしてもあれほど信頼していた人が亡くなっても案外平気とは・・・
キミさんは私が想像する以上に強い人なのかもしれないと思った。


実は『柿畑さん』だと私が思っていたのは『カピバラさん』というキャラクター商品だった。
そういえばキミさんはカピバラのマスコット人形を大事にしていたけれど、それが柿畑さんだったとは・・・

『カピバラさん』は、ベットの下に落ちていた。
それを見つけたスタッフが
「あ~こんな所にありましたよ。
カ・キ・バ・タさん! 出てきて良かったですね」
と、キミさんに渡していたところに遭遇して発覚した。

「アハハ、そうなんだ。私、勘違いしてて、柿畑さんて言う人が居るのかと思ってた~」

と、笑ってごまかしたが、実のところショックだった。
キミさんが『カピバラさん』を『カキバタさん』と呼んでいる事なんて、
他のスタッフは全員知っていたのだ。

何で私は気が付かなかったんだろう?
宗教の教祖か?って、大げさにも程がある。
亡くなったって・・無くなったって事か。
アホだ。本当にアホだ。

そう、私はこんな風に思い込みの激しい人間で、
思えばその思い込みの強さで数々の失敗をして来たではないか。
それが今このnoteを書きながら走馬灯のように浮かんで来る。
「あっ、あの時もそうだ、それからあの時も・・・・」


ふと「自己肯定」という言葉が頭に浮かんだ。
短所を長所に変えるだの、ダメな自分を受け入れるだの・・・
うん、うん、自分の思い込みの強さで自己肯定してみちゃどうだろうか?

「あなた、悩み事があったら何でもカキバタさんに相談するといいわよ。
別に答えが返ってくる訳じゃ無いけど、すっきりするから」

今、私にとってのカキバタさんはこのnotoかもしれない。


いつも私の記事を読んでくれる皆様に感謝を込めて。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?