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たまには栄養のある文章を摂りたい、って話

久しぶりに健康診断を受けてきます

来月、およそ4年ぶりに健康診断を受けようと思う。個人事業主になってから、何かと健康には気を遣ってきたつもりだが、30代にもなると不安が常にまとわりついてくる。

大好きなマクドナルドやケンタッキーを食べているときに、なんとなく罪悪感を感じ始めちゃっているのだから、「僕も歳をとったなぁ」と思う。

ファストフード、別名ジャンクフードと呼ばれる食べ物たちは、いつでも食べたいと思ったときに気軽に食べることができて、お金もそんなにかからない。お店のカウンターで注文すれば、ものの数分でホカホカの食事を提供してくれるのもありがたい。何より重要なのは、美味しいということだ。

でも、残念なことに、ファストフードの栄養バランスはあまりよろしくないとされている。ハンバーガーばかり食べていると身体に悪いというのは、食に疎い僕でもわかる。おそらく、僕以外にも多くの人がファーストフードの食べ過ぎは良くないと認識していると思う。

「人はこれまでに食べたものでできている」というのはまさにその通り。

では、文章ってどうなんだろう。食べ物と同じなんじゃないかな、って最近は考えている。

ファストテキストにまみれた生活

文章を書く仕事をはじめて3年目になるのだけど、ネットの世界にはファストフード的な文章(わかりやすく「ファストテキスト」と仮称してみる)があふれているなと感じている。

ファストテキストというものを僕なりに定義してみると、以下の条件を当てはめることができると思う。

  1. 短い時間で読める(数十秒~5分以内)

  2. 特定の情報伝達を目的としている

  3. 毎日大量に生産されている

  4. スマホから無料で読める

書き手のプロ・アマに関わらず、わたし達が普段ネット上で目にする文章のほとんどがファストテキストと言える。例えば、SNSで誰かがこぼした呟きもそうだし、タイムラインで流れてくるニュース記事も、ほとんどがそうだと思う。

ファストテキストの特徴として、文章の「質」はほとんど問われないということがある。大事なのは「情報」であり、いつでも素早く、的確に、安く入手できること。これって、お腹が空いたときに手早くファストフードで片付けちゃうのと、よく似ている。

日本の大手ネットニュースサービス、Yahoo!ニュースでは、1日に6000件もの記事が配信されているそうだ。月間PV数は225億にのぼる(いずれも2020年の数字)。

もちろん、ネットに掲載される文章がすべてファストテキストだとは言わない。そもそも、「ファストテキストは悪だ」と罵るつもりもない。僕自身もファストテキストの生産者であると同時に、消費者の1人なのだ。何より、「美味しい」と感じている。

けれど、ファストフードばかり食べていると身体を壊すのと同じように、ファストテキストばかり読んでいると、(少なくとも僕は)メンタルに支障をきたしてしまう。スマホの画面から押し寄せてくる情報は「カロリーばかりが多い食べ物」であり、その他の栄養素はほとんど含まれていない。お腹は確かに膨れるけど、脂肪ばかり溜まってしまう。

そんな偏った食事を、朝起きてスマホを開いた瞬間から始めているのだ。ファストテキストは毎日いくらでも摂取できるけど、換気扇のフィルターが詰まるように、少しずつ嫌なものが蓄積されていく。それは確実にメンタルや知性のようなものを脅かしている気がしてならない。

では、栄養バランスを整えるためにはどうすればいいのか?

ズバリ、読書だ。

本は栄養豊富な文章の宝庫

アナログ至上主義みたいに捉えられるのは不本意だが、紙媒体の情報源はおおむねネット記事よりも栄養素が豊富だと思う。情報発信に時間とコストがかかる分、内容は吟味されているし、書き手の個性も現れやすい。読み手もお金を時間をかけているのだから、文章を読むときの姿勢が違う。

連日何本も消費するニュース記事と違って、読み終わった後も、長く記憶に残るはずだ。

特に小説は、情報収集が目的ではなく、「文章を楽しむ」ことを目的に作られたものだ。段落の1つ1つを噛みしめながら、時間をかけて咀嚼し、身体に取り込んでいく。普段、ネットの情報洪水に身を沈めている僕は、小説を読むと温かい手料理みたいに感じられて、なんとも幸せな気分に浸れる。

最近、ロバート・ウェストールの短編集(右)にハマっている。あの宮崎駿もイチオシの作家らしい。

もちろん、毎日小説を読むことは時間的に難しいし、「しばらくはいいや」って飽きる瞬間もある。いくら美味しくて栄養価が高いといっても、毎日のように食べていたらお金と時間がどんどん減っていくし、「大変よろしゅうございますが、お口に合いませんでした」なんてことも珍しくない。

ファストフードしか食べないのも身体に悪いし、誰かの手料理しか食べないのも現実的に無理がある。大事なのはバランスだ。

日々、ネットのテキストを追いかけながら、ときどき本を開くことで、頭の栄養バランスを整えてやるのがいいと思う。情報洪水に疲れた方には、「美味しい文章」を読むことをおすすめしたい。紙の本ばかり読んでいる方には、「たまにはスマホを見たら?」と提案したい。

ところで、僕が今、このnote上に書いている記事はファストテキストなのだろうか。

願わくば、最後まで読まれた方にちょっとでも「美味しかった」と思っていただけたら、書き手としてこの上ない幸せである。


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