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言葉はいつもそばに居てくれる

2018年に出版された、西加奈子さんの短編集『おまじない』の文庫版が、最近発売されたということで読んでみました。

わたしは外で本を読むことが多いので、小説はいつも文庫版を購入しています。
『おまじない』の単行本の表紙は以前から本屋さんで目にしていたのですが、内容は知らずにいました。

読んでみてとっても良かったので、文庫版を待たずにもっと早く買うべきだったと反省しました。

この本は全部で8作の短編集なのですが、どの主人公も社会の価値観に縛られていたり、それに傷ついたり悩んでいたりする「女の子」で、そこに現れる様々な「おじさん」からの何気ない言葉に主人公たちが救われるお話でした。

わたしはこれまで、女として生きてきて、女性ならではの生きづらさを感じることは少なからずあったけど、どこか諦めていたし、きっと男性であるがゆえの生きづらさを感じている人もいるとも思うので、女性ばかりで団結して男性全体を強く非難することだけが解決の方法ではないよな。と考えていました。
もちろん、女性の権利を主張してくれた人たちがいたから今があると思うし、それを辞めてもいい時代にはなっていないと思うので、いますぐに辞めるべきだとは言えません。

この本では、弱さを抱える女の子たちを、その真逆の存在とも思えるような、おじさんが救うというのが、女性だけで解決できる問題じゃないのだと一緒に闘ってくれている感じがして良かったです。

それぞれのお話に出てくる女の子たちを想うと、もやもやしたり、悲しくなったりする場面もありますが、あたたかく、時に力強いおじさんたちの言葉に、わたしもおまじないをかけてもらったような気持ちになりました。


本の中のおじさんたちは実在しなくても、言葉ははっきりとここにあって、いつでもそばにいてくれる。
そう思わせてくれる言葉たちを紡いでくれた西加奈子さんに感謝したくなりました。

弱い自分、嫌な自分、どんな自分も自分であると認めていい。

それに、みんなじゅうぶん頑張っている。誰もかわいそうなんかじゃない。

そうであることを認められない社会、強くならなきゃいけない社会なら、変えていかなくちゃいけないという勇気をもらえるようなパワーを感じました。

みんなに読んでほしいから内容を詳しくは書かないし、どれも良くて選ぶのは難しいけど、今のわたしに響いた作品は、「孫係」と「マタニティ」でした。
もし身近にこの本を読んだ人がいたら、どの話がいちばん響いたか、それはなんでかって話をたくさんしたいです。

母と娘を描いた部分も多かったからか、もし自分に娘がいたらぜひ読んでほしいと思いました。
ここで、わたしが自分の母親ではなく、存在しない娘を想像したのは、各作品の女の子たちの脆さに触れてこの子たちを守りたいなんて思ったからかもしれません。

もちろん、生きづらさの原因は性別だけじゃないから、性別に関わらず、大切な人たちみんなに読んでほしいと思ったし、わたしも、いつでもページをまためくって読み返したいなと思いました。

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