【日記エッセイ】「パン屋編② 初の男性販売員」
パン屋バイトが始まった。僕はパンのメニュー、レジ打ち、パンの包み方やらを教わった。
入って驚いたのは5〜6人いるオープニングスタッフの中で僕が唯一の男性スタッフだった。つまり全ての店舗を合わせても男性販売スタッフは僕だけだったのだ。
店長は僕に「タキくんでこれから男性スタッフを雇うか検討するから頑張ってね」と言った。デカい賭けに出たなと思った。
バイトの日々が続いた。もちろん名物販売員なんて程遠かった。
バイト終わりに余ったパンを賄いとして頂けるのだが店長はなぜか僕より女性スタッフの方に沢山パンをあげた。女子に甘い先生みたいな感じだった。賄いのパンはとてもおいしかった。そんな店長は2ヶ月くらい経った頃から厨房で大きなため息をついたりと疲れている様子だった。オープンしたては大変だったんだと思う。
そんなある日である。
僕は大やらかしをしてしまう。僕はバイトの日を間違え、無断でバイトを1日休んでしまう。そして僕はその間違いに気付かず本来なら休みの次の日に出勤した。
店に入ると、店長がドンと座っている。「タキくん、昨日は?」と聞かれる。僕は「昨日?」と言った。「昨日ね、出勤の日だよ」と言われた。僕は慌ててシフト表を確認した。もちろん僕が間違えてる。「すみません、完全に日を間違えてました、申し訳ないです」と謝った。
すると店長は何を言ったか全く覚えてないが、突然ドチャクソにキレた。
僕はあまりのキレようにビックリしたのを覚えている。僕はひたすら怒られた。
僕は再び「すみませんでした。申し訳ないです。今後ないように気をつけます」と言った。
店長は「もういい!もういい!帰ってくれ、もう来なくていい!もう来なくていいから!!」と言った。
えぇ〜〜〜である。僕はあんなに美味しくて可愛いパンを作る人がこんなにもキレるのかと思った。
店長は帰れと来るなを連呼した。僕は帰るしかなかった。そもそも出勤の日じゃない。
次の日である。
僕は店長に謝りにパン屋に行った。厨房には店長がいる。僕は「連絡もせず無断で休んでしまいご迷惑をお掛けしてすみませんでした」と言った。
すると、店長は昨日と全く同じテンションでドチャクソにキレた。
僕が悪いのは百も承知だが僕は昨日と全く同じテンションでキレれる店長に笑いそうになった。キレれる持続力が高い人だった。キレの持続具合は人それぞれである。もう少し日が経ってから謝りに行けば良かった。
「だから昨日もう来なくて良いって言ったろ!!もう君クビだから、クビ!!」
僕は大学1年の初夏に突然クビになったのである。張り紙を見て妄想を膨らませていた頃が懐かしい。
僕は初めての男性販売スタッフとして最悪の結果を出してしまった。僕のせいで多分もう男性販売員を雇うことはないんだろうなと思った。
時は流れ僕が大学3年生の頃、そのパン屋の前をたまたま通ったので店内を覗いた。販売員には女性の姿しかなかった。
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