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エッセイ

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単発エッセイ
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#エッセイ

柄シャツ以降

 このままだと柄シャツを着ない人生になる。文学フリマ東京38を翌々日に控えた夜のこと、両者…

瀧本緑
5か月前
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日記:リフレクション・エターナル

Nujabesのビートが自室全体に響き渡っている。昨秋に入った大阪のカフェがたまたま「Nujabesし…

瀧本緑
1か月前
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銭湯へ行けばどうにかなるのか

銭湯へ行けば万事解決すると思っている節がある。寂しさも辛さもどこにも行けないような気持ち…

瀧本緑
2か月前
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もう一度キッチンに立つために

もう一度料理をするために文章を書く。左記の文章はバックスペースキーを押した後にタイプされ…

瀧本緑
2か月前
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悪役の黄色い靴下

 求婚待ったなし。お嬢様はわたしと相思相愛。いやはやわたしとしたことが。この黄色い靴下は…

瀧本緑
4か月前
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「ごまをすってお待ちください」

 好きなとんかつ屋で「ごまをすってお待ちください」と毎回言われる。わたしは「はい」と応え…

瀧本緑
4か月前
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そいつのささやかな不幸を祈って叫ぶ夜がわたしたちには必要

 このクソ世界で、優しさや控えめであることは基本的に仇です。優しさの類を重んじると悪意の矢面にいつも立たされ、基本的に言われっぱなしです。優しさは時々「ガチ」で報われることもあるとて、天秤にかけてみればとてもイコールにはならないと思う。そもそも見返りなど求めていないし。  また言葉を飲み込んでいる。のに、お前は言いたいことを全部言っている。何か思ったときに、誰に対してもすぐに意見を表明できる人とそうでない人がいるわけだが、別に前者がいいわけではないし、後者に属する人が前者に

栓抜きをゆずる/返事はいいけど聞いてない

 ずっと大事に思っている人間のこと、いまさらどうして大事なのか問うたところで無粋かもしれ…

瀧本緑
8か月前
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正しい耳かきの方法、割り切れる分母

 耳かきをしたいと思ったとき、9分の3くらいの割合で、耳かきがすぐに見当たらない。そして私…

瀧本緑
2年前
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社会人3年目は謝罪で食い扶持を繋ぎTOEICに駆り立てられ、アレクサに挨拶をしている

 ここ2か月くらいの自分のエッセイが暗すぎて泣いた。いったいどうしたというのだ?おそらく…

瀧本緑
2年前
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白紙は与えられた

 ここ最近は新人賞へ向けた中編小説をひたすら書いている。学生時代のラジオドラマと、組み立…

瀧本緑
2年前
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「思い出の味」がロストテクノロジーになったかもしれない

 同志社大学の隣に「麺家あくた川」というラーメン屋がある。2016年初頭にできたそのラーメン…

瀧本緑
2年前
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You Make Me Feel Special

 ひどい寒さに震えた一日だった。頑張って外に出て、久々に心を預けられるかもしれないなと思…

瀧本緑
2年前
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若くして髪が薄い。美容師はドライヤーの魔法使い

 若くして髪が薄い。鏡を見る度に、未来を覗いているような気持ちになる。美容院に行く頃には、毎度髪はずいぶん伸びていて、自分の毛量を忘れられる。けれどシャンプー台で水分をたっぷり含んだ僕の頭からは、ほんのり地肌が顔をのぞかせている。「今日はどうされますか?」ひょっとするとどうもならないのではないか。「前のがとってもよかったので」と消え入るような声で言う。わかりましたよとにこやかに美容師さんは答えてくれる。そうだ、ここは表参道。魔法の場所。どんな頭も髪型も、オシャレに仕上がる不思