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正しい耳かきの方法、割り切れる分母

 耳かきをしたいと思ったとき、9分の3くらいの割合で、耳かきがすぐに見当たらない。そして私は、「9分の3」と口に出してから約分ができることに気が付く人間である。だから肝心な時に必要なものが手元にない。5秒でものを失くす。ADHD?ちがう、すべては後から約分するような、そんな生き方に依るものだ。

 耳かきが見当たらないので、小指に頼ることにする。わりに整った自分の爪を見る。最近ようやく、きちんと爪を切るようになった。伸びてきたなと思ったら別の爪を使って切り込みをいれ、うまいこと剝がすという手段をとっていたが、爪切りを使った方が楽だと気が付くのに25年を要した。ある瞬間に「よくよく考えた」のである。GLAYのTAKUROがそろそろ『HOWEVER』を書いたかどうかという歳で得た収穫がこれである。そしてこれまで爪切りを使ってこなかった原因は耳かきの場合と同じところにある。

 小指で耳をほじることは中耳炎の遠因になるのでよしたほうがいい。しかし耳の中が痒いししょうがない。少しだけ小指を耳の中に挿入する。しばらく、ほじるという行為を行う。掻くというより、ほじっている。鼻をほじらなくなって何十年。今唯一、私に許されたほじるという行為。しかし驚くことにこの小指での耳かき、何一つ快感を催さないのだ。

 そもそも昨日耳かきをしたのだから、そう遠くには行っていないはずだ、と文節の後半は刑事ドラマでも通用するようなセリフをワンルームの部屋で一人こぼす。幸い先週末に部屋を模様替えおよび掃除したので、もの探しがしやすい。ローテーブルの下を見たが見つからない。クッションを持ち上げるとそこに耳かきが転がっているではあるまいか!それを探しながら、耳かきに「耳かき」以外のきちんとした名称があったらどうしようかと思った。またあとから約分することになるのか?しかしWikipediaの答えは「耳掻き耳かき、みみかき、: Ear pick)は、の穴(外耳道)の内側をこすって掃除する行為。また、その際に用いる、先端がへら状になった細長い棒状の道具」だったので俺の勝ち。


 最近iPhoneの外カメラが壊れた(インカメは使える)。マッチングアプリをまた初めてみるかと思ったが、インカメの画質とカメラワークでは、本人確認書類を読み込ませるのが至難の業となってしまい、マッチングアプリを物理的に封じられた。これはもうこの方法での恋愛に縁がないということだと思ったので二度とやらない。

 仕事で、小学生のころ住んでいた町のよく通ったジョリーパスタに行ったのでその風景を切り取りたかったけど外カメは真っ黒で、仕方がないからインカメで撮った。なかなかに画質が悪い。フィルムでもないのでセピアにも染まらず中途半端だ。いつかこの目もこうやって霞んでいくのだろうが命が止まるまでは思い出せるように、いくつもの景色をきちんと目に焼き付けていたい。たいていの糸は、辿ればほどくことができるのだ。


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