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「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 2023.02.27 3/3





日経ビジネスの特集記事 75


「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 2023.02.27 3/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

CONTENTS

PART 1 業界大手、必ずしも「最強」にあらず 高額・後発でも勝てる ファンつかみ下剋上 

COLUMN 「推し活」の経済効果、企業を動かす

PART 2 アップルはやっぱり強かった 業界トップ企業に学ぶ ブランドの磨き方

PART 3 JALや楽天カードに見るNPS活用術 データから課題発見 不断の改善で強く

COLUMN NPSは業績アップの「先行指標」

PART 4 売れ続ける王将、トミカ、メルセデス 値上げは怖くない 強固なファンが下支え

INTERVIEW メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長に聞く ファンづくりへ「高価だけど身近」追求



第3回は

COLUMN NPSは業績アップの「先行指標」

PART 4 売れ続ける王将、トミカ、メルセデス 値上げは怖くない 強固なファンが下支え

INTERVIEW メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長に聞く ファンづくりへ「高価だけど身近」追求


を取り上げます。


企業は今、空前のコストアップに見舞われ、値上げの決断を迫られている。値上げに成功する企業と客離れに泣く企業を分けるのは、熱烈なファンがいるかいないか。本誌は2022年に続き、2回目となる1万人規模の消費者調査を実施し、「顧客推奨度(NPS)」という尺度で、10業種の企業・ブランドをランキング化した。

(「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 2023.02.27
p. 008)


3度目の掲載になりますが、まず、次の図表をご覧ください。NPS(顧客推奨度)総合ランキングです。

恐らくあなたの想像とはかなり違ったのではないでしょうか?
私も意外に思った企業もありました。


(調査概要)2023年1月に調査会社マクロミルに依頼し、
インターネット上で20歳以上の男女にアンケートを実施。
1万335人から回答を得た。
10分野の最大10社の商品・サービスについて、
直近1年以内に利用したことを確認した上で、
その商品・サービスについて
「友人や同僚に薦める可能性はどのくらい
ありますか」と尋ねた。
回答は「全く薦めない」の0点から
「強く薦める」の10点まで11段階の選択式。
「顧客推奨度(NPS)」の定義に基づき、
10~9点を選んだ人を「推奨者」、
6点以下を「批判者」とし、
全体に占める推奨者の割合から
批判者の割合を引いてNPSを算出した。
スコアは四捨五入しているため、
計算が合わない場合がある。
回答者数が100人未満だった企業・ブランドは
除外した。
「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件
2023.02.27


NPSについてまず触れておきましょう。

ネット・プロモーター・スコア(英語: Net Promoter Score, NPS)とは、フレッド・ライクヘルド(英語版)が提唱した、顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を知るための指標。日本語では「顧客推奨度」や「正味推奨者比率」と翻訳される場合もある。

ネット・プロモーター・スコア Wikipedia 


これだけではピンとこないかもしれませんので、もう少し具体的に見てみましょう。

主に「顧客との接点があるシーン」において利用される指標だが、特に「購入行動に直接的に関わるシーン」「購入後に使用したシーン」「ブランドがどのような認知なのかというシーン」における、顧客ロイヤルティの指標として用いられることが多い。

世界では、Apple、Amazon.com、Google、Facebookなど、顧客志向を重視する企業で特に採用されるケースが多く、アメリカ合衆国のフォーチュン500のうち、約30%が既にNPSを経営指標として採用している。

最近では日本においても、最大のフードフェスティバル「肉フェス」における、NPSのデータを元にしたスポンサー企業誘致の取り組みなど、様々な場面でNPSが活用されている。

ネット・プロモーター・スコア Wikipedia 
ネット・プロモーター・スコア Wikipedia



COLUMN NPSは業績アップの「先行指標」


NPSのスコアと企業の売り上げの相関

NPSのスコアが上がれば、企業の売り上げはどう変わるのか。それを分かりやすく示したデータがある。
日本国内の主要クレジットカードを対象に「そのカードを親しい友人や知人に、どの程度薦めたいか」を、0点から10点の11段階で選んでもらう。すると、推奨度が10点の利用者は、5点の利用者と比べて毎月のカード利用額が平均で2万円多く、平均利用回数も2.4回多いという結果が出た。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 027 


「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件
2023.02.27


9点や10点をつける推奨者は、その商品やサービス、ブランドを心から気に入っている可能性が高い。推奨者と長期にわたって良好な関係を築いていくことで、PART3でオルビスが経営の重要指標にしていると紹介したLTVも高まり、業績の向上が期待できる。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 027 

今までNPSについて紹介してきましたが、これだけが唯一絶対な指標というわけではもちろんありません。

NPSの長所は、既存顧客のロイヤルティーを数値として可視化できること

NPSの長所は、既存顧客のロイヤルティーを数値として可視化できることにあるという。NPSを上げるためにPDCA(計画・実行・評価・改善)を回す過程でファンが増えて収益が伸びる。結果、株主へのリターンも大きくなるという流れだ。「実際の成果につながるまでには時間がかかるが、スコアが上がれば業績が今後上がっていくという確からしさがNPSにはある」(大越氏)

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 027 

*大越氏:ベイン・アンド・カンパニーの東京オフィスの大越一樹パートナー

NPSは「広告以外の手法でどれだけ売り上げを増やせたか」(「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 2023.02.27 p. 027)を可視化できないそうです。

そこで、このNPSを補完するEGRが登場します。

NPSを補完するEGR

このNPSを補完する指標としてベインが新たに提唱しているのが、プロモーター獲得成長率(EGR)である。EGRは広告以外の手法でどれだけ売り上げを増やせたかを可視化する。既存顧客による継続的な売り上げと、口コミで獲得した新規顧客の売り上げ拡大を追う指標だ。これをNPSと組み合わせることで、顧客のロイヤルティーを高めた成果を、実際に売り上げ増という形で収穫できているかどうかをつかめる。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 027 


重要な点

重要なのはNPSやEGRを計測するだけでは意味がないということ。分析して地道に改善を重ねることで、初めて強固なファンベースを獲得できる。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 027 


ベイン・アンド・カンパニーに関連する記事が見つかりました。
この中で、NPSについての解説に続き、EGRに関する解説がありました。

ネット・プロモーター・システム(NPS)で「顧客愛」というパーパスを実現する

ダーシー・ダーネル(ベイン・アンド・カンパニー パートナー) インタビュー ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部

2022.11.23 4:20

――米国『ハーバード・ビジネス・レビュー」2021年11-12月号で発表した際の論文タイトルは、「Net Promoter 3.0」です。これまで1.0、2.0、3.0と、どのように発展してきたのでしょうか。
 1.0 は、冒頭のNPSの定義とシンプルな「親しい人に薦めたいか」という質問です。

 2.0では、NPSの数値を使い、現場、中間管理職、経営陣が顧客の声を聞いて、顧客から学ぶことができるようにするシステムに進化しました。システムを有効に運用するには、次の3つのプロセスが必要です。

(1)現場対応のフィードバックループ:現場でスタッフが直接顧客からフィードバックをもらい、改善を目指す。

(2)チームでの作戦会議:(1)の現場の知見を集め、メンバー同士で学び合う場として、チームで定期的に作戦会議を行う。

(3)組織対応のフィードバックループ:(1)のデータから、現場や組織内だけでは解決できない問題――例えば料金体系を変える、商品設計を変える、データを使って顧客体験のシステマティックな改良を検討する、など、取引先や顧客などが絡む問題に本社で組織的に対応する。

NPS3.0では、2つのイノベーションがありました。

 ひとつは、EGR(Earned Growth Rate、プロモーター獲得成長率)という数値を開発したことです。これは、推奨者が誰かにその企業の商品・サービスを紹介したことで、企業の成長にどれくらいの影響を与えたかを測定できるものです。

 具体的には、既存顧客からの継続的な売上高と、既存顧客の紹介による新規顧客からの売上高の合計が、自社の全体の売上高に占める割合を示します。

 もうひとつは、顧客とのやりとりの情報が蓄積されるなかで、対面の現場で得たデータとデジタルで獲得されたデータを、継続的に自動的に統合するようなプロセスを確立したことです。

――EGRの開発によって、企業にどのような恩恵があったのでしょうか。

 これまででも、NPSの概念自体は広く理解されていましたが、それが実際のビジネスにどのようなインパクトを与えるのかははっきり測定できませんでした。

 EGRを使うことで、NPSのリアルな事業への影響をシステム化して理解することができ、それをよりよくサポートしたり、採り入れたりするにはどうすればよいかがわかるようになったのです。

――NPSが米国で浸透しているのは、なぜですか。

 多くの経営陣は資本主義経済の中で利益を追求しており、そのこと自体は、従業員や株主に対して負っている責任を果たすための立派な仕事です。ただし、経営者に直接的な喜びをもたらすものではありません。

 誰かの人生に好影響を与えていると感じられるほうが、励みになるし、喜びがある。しかも、結果的に企業の業績成長にも結びついていることがデータで明らかになっている。そのことを米国の経営者が実感しているからだと思います。

そして、「この商品・サービスを友人や同僚に薦めたいか」というシンプルな質問と答え自体が、わかりやすく説得力のあるものであることも大きな理由でしょう。

 さらには、NPSの算出方法を秘匿せず、オープンソースにして、みんなが使えるようにしていることも普及した理由のひとつだと思います。

DIAMOND ONLINE 

EGR(Earned Growth Rate、プロモーター獲得成長率)は推奨者が誰かにその企業の商品・サービスを紹介したことで、企業の成長にどれくらいの影響を与えたかを測定できるもの。

DIAMOND ONLINE 


PART 4 売れ続ける王将、トミカ、メルセデス 値上げは怖くない 強固なファンが下支え


あらゆるコストが上がる中、値上げの巧拙が問われている。客離れを引き起こさないためには、ロイヤルティーを上げるしかない。既存顧客を守るだけでなく、新規顧客の獲得にも濃密な関係づくりが不可欠だ。
(「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 2023.02.27 
p. 028)


日本は30年間にわたるデフレを脱却し、インフレとなりました。
モノの値段が上昇しましたが、賃金は上昇してもインフレ率をカバーするほどには至っていません。

そんな中、値上げをする企業が増えています。それでも売れ続ける秘密を探るのが PART 4のテーマです。

果たして実態は____。

コスト上昇分のうち、価格転嫁できているのは4割程度──。帝国データバンクは2023年1月、約1万1000社の調査結果を公表した。価格転嫁率が高かったのは、卸売業や原材料メーカー。一方、サービス業など消費者向けの業種は総じて低く、2割以下にとどまった。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 028 


値上げ打ち消す客離れ

例えば「1皿100円」を売りにしてきた回転ずし業界では、スシローとくら寿司が22年10月から値上げに踏み切ったが、毎月の既存店売上高は前年比でスシローが約30%減、くら寿司は約5%減に。値上げの効果を打ち消すほどの客離れに苦しむ。

業界関係者は「値上げをしていない『はま寿司』に客が流れている」と話す。スシローもくら寿司もNPSのスコアは低い。ロイヤルティーが低ければ、当然安いほうへと客はなびく。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 028 


値上げしたことで客離れした業態がある一方で、値上げに成功した外食チェーンもあります。

王将フードサービスのケース

値上げに成功した王将フードサービス

値上げに成功した外食チェーンもある。「餃子の王将」を運営する王将フードサービスは、22年5月と11月に2度の値上げを実施。主力のギョーザは税込み242円がまず264円に、さらに275円になった(西日本地区の場合)。にもかかわらず、既存店の客数は22年12月を除いて前年同月比プラスを維持。値上げ効果で客単価も上昇している。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 029 


成功した理由 → レシピの改良とファン獲得戦略

王将は「商品の品質・価値の向上を実感いただき、値上げを納得してもらえた」と話す。単なる値上げにならないよう、値上げ前にギョーザをはじめとする売れ筋14品目のレシピを改良。利用者からは「おいしくなった」との声が届いているという。

しかしそれ以上に注目したいのは同社のファン獲得戦略だ。飲食500円ごとにたまるスタンプを集めると発行される「ぎょうざ倶楽部会員カード」の発行枚数(会員数)は、22年度に過去最高の102万枚となった。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 029 


「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27


タカラトミーのケース

タカラトミーと言えば、ミニカーとリカちゃんというイメージがありますね。

主力のトミカの値上げ

トミカは22年7月出荷分から、定番シリーズの希望小売価格を8年ぶりに値上げし、税込み495円だったのを550円とした。しかし、トミカが主力となるプリスクールカテゴリーの売上高は22年4~9月期、前年同期比で約7%増と好調を維持。22年のクリスマス商戦も堅調で、客離れは起きていないという。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 029 


「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27


LINEの有効利用

好調の背景にあるのが、21年11月に始めたLINEの公式アカウントだ。登録者(友だち)数は、開始から1年で20万人を超えた。タカラトミーメディア戦略室室長の木村貴幸氏は「ファンと心地よい関係を築くのにLINEは適している」と話す。

メールマガジンより総じて開封率が高く、加えてトミカやプラレール、リカちゃんといったブランドのファンごとに情報を送れるセグメント配信が可能なLINEは、顧客とつながるのに効果的なツールだ。電話番号にひも付くアカウントも、長期的に顧客とつながる点で優位性がある。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 029 


LINEにも弱点があるが、補って余りある優位性

もちろんLINEにも弱点はあり、1度登録されても、アカウントを遮断されてしまうことがある。ただ、木村氏は「一般的なメーカーの公式アカウントに比べるとブロック率は非常に低い」と話す。忙しい時間帯などに情報が来るとストレスになることから、配信時間を10時、12時、17時、20時と4つの時間帯から選べるようにした。子どもが喜ぶ動画コンテンツを配信するなど内容にも工夫を凝らしている。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 029 

ただツールを使うだけでなく、創意工夫が重要ということです。

ここまで読んで疑問が湧いたかもしれません。

「既存顧客を大切にすることは分かったが、新規顧客の獲得にはつながらないのではないか」(「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 030)


メルセデスベンツ日本のケース

(写真=上:菊池 くらげ)
「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27


新規登録台数1位のメルセデスベンツ

高級車の代名詞となっているメルセデス。ここ10年ほど、価格帯を下げずに顧客層を広げてきた。輸入車の新規登録台数では15年に独フォルクスワーゲン(VW)を抜いて首位に。17年には過去最多の約6万8000台を記録した。足元では半導体不足などで輸入台数の確保が難しくなっているが、それでも8年連続で輸入車トップの座を守り抜いている。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 030 


上野金太郎社長

快進撃を指揮しているのが、日本法人メルセデス・ベンツ日本(東京・品川)の上野金太郎社長。1987年に同社の新卒1期生として入社したとき、「輸入台数は年2万台に満たなかった」(上野氏)。2012年、社長に就任すると「最も愛されるブランドへ」という方針を打ち出した。
(中略)
「メルセデス・ベンツというブランドはよく知られているが、ちょっと近寄りづらいイメージがあった」と上野氏。そこで「メルセデス ミー」というブランド発信拠点を東京と大阪に開設した。今はやりの「売らない店」の先駆けだ。グッズショップ、カフェ、そば屋などを併設し、車やメルセデスに興味がない人も立ち寄りやすい雰囲気にした。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 030 


「金太郎って本名?」と疑いを抱いたのも無理もありません。
うけ狙いで付けたのではないかと思いますね。
実は本名です。

『なぜ、メルセデス・ベンツは選ばれるのか?』(メルセデス・ベンツ日本株式会社代表取締役社長 サンマーク出版 2015年4月10日 初版印刷 2015年4月20日 初版発行)の中で、「金太郎」の命名について次のような記述があります。

上野金太郎という父がつけた「ザ・日本人」な名前は、昭和に活躍したプロレスラーと間違われることもありますが、覚えやすく親しみやすいのでしょうか。営業時代の取引先から初めてお目にかかる政治家まで「忘れないな、あなたの名前は」「ベンツの金太郎さんですね」といっていただけます。これまで出会った多くの人とご縁が続いているのは、名前のおかげでもあるのかもしれません。

『なぜ、メルセデス・ベンツは選ばれるのか?』pp. 83-84 


「『メルセデス ミー』というブランド発信拠点を東京と大阪に開設した」と日経ビジネスの本文では書かれていますが、「メルセデスミー」は世界中で使われていましたが、日本では当初「メルセデス・ベンツ コネクション」だったそうです。

<メルセデス・ベンツ コネクション>という情報発信の場をつくり、お客さまに出会えば、そこから販売店につなぐことも可能です。日本にはメルセデスの理念を理解している販売店が二〇〇以上ある。

『なぜ、メルセデス・ベンツは選ばれるのか?』p. 49 


本文に戻ります。

もう一つ、上野氏が仕掛けたものに、14年の任天堂の人気ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」とのコラボレーションがある。テレビCMでは、ゲームの中で小型多目的スポーツ車(SUV)「GLA」が走り回り、最後は実写のマリオが本物の車から降りてくる。海外の高級ブランドらしからぬ内容に、度肝を抜かれた消費者は多かったはずだ。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 pp. 030-031 


ブランドイメージを壊すリスクはあったはずです。それでも行なったのは?

ブランドイメージを壊すリスクもあったはず。これに対して上野氏は「社内でハレーションは当然ある」とした上でこう続ける。「節操なくコラボしているわけではない」

重要なのはコラボ相手にもコアなファンがいるかどうか。最近では電気自動車(EV)の販促で人気漫画『ONE PIECE(ワンピース)』とコラボ。スポーツではトライアスロン大会に協賛し、プロ野球の千葉ロッテマリーンズのリリーフカーとして車両を提供している。

やみくもにアピールするのではなく、「推し」があるファン集団にアプローチし、メルセデスも推してもらう戦略だ。「好きになってくれたら最高だが、気にかけてくれるだけでもいい。気にしてもらえるって何かの始まりじゃないですか」(上野氏)

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 031 


日経ビジネスは次のように記しています。

嗜好の多様化が進む中、万人に受ける戦略はもはや存在しない。既存の顧客を大切にしつつ、自らの枠から少しずつはみ出して、新たなファンを獲得していく。そんな戦略が今、求められている。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 031 


INTERVIEW メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長に聞く ファンづくりへ「高価だけど身近」追求

最後に、上野金太郎社長へのインタビュー内容を抜粋してお伝えします。


メルセデス・ベンツ日本の
上野金太郎社長
1964年東京都生まれ。
早稲田大学社会科学部卒、
87年メルセデス・ベンツ日本入社。
ドイツ本社勤務や副社長を経て
2012年から社長兼最高経営役員。
初の日本人トップとして同社を
率いる。
(写真=菊池 くらげ)


_ファンづくりではどんなことを意識していますか。

「自分には関係ない車」から「自分に関係ある車」に持っていくことに最大限の力を入れました。ただ、身近なだけではだめですね。身近、かつ、手が届くか届かないかぐらいを意識しました。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 031  


_半導体不足や原材料高などに伴う値上げと厳しい事業環境が続きます。

もちろん値上げは苦渋の判断です。インポーターとして私たちがやっていることは、大枠のマーケティング、輸入台数の確保、あとは情報をどうしっかりとお客様に伝えるか。一番苦労しているのは最前線にいる販売店で、販売店とお客様との関係がすごく大事だと思います。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 031 


_今後も「愛されるブランド」であるための戦略を教えてください。

私は社長になったとき、「最も愛されるブランドへ」と言いました。お客様に離れたくないと思ってもらうためには何をすべきなのか「自問自答してほしい」と社員には話しています。愛されるとまでいかなくても、好かれるために。
当然、好いてくれているときは近くにいてくれるでしょうが、どれだけ長く保つかが大事です。それができないと、次から次へと違うものを好きになってしまう。継続してもらうために、お客様の思いを先取りできるようにしていきたいです。
(中略)
メルセデスの星のマークをどう輝き続けさせるか。私たちは磨くという部分をやっていて、それは重要な仕事だと思っています。

「推し企業」ランキング 値上げしても選ばれる条件 
2023.02.27 p. 031 



🔷編集後記

今回の特集は楽しみながら読めました。身近なテーマが取り上げられていたからです。

今特集は、日経ビジネスが得意な独自の視点から捉えたランキングです。
そのため、ランキングの結果はあなたの感覚と少しずれがあるかもしれません。

それでいいのです。

私はいつもずれています。
視点が変われば、モノの見え方が変わるということを理解すればよいと考えています。

NPSを活用し、業績を向上させている企業をご紹介してきました。他社でもどうような取り組みはしているはずですが、期待どおりの結果が得られないのはなぜでしょうか?

それは、おそらくデータに依存しすぎて、顧客の真の要求に応えていないからではないかと推測します。

つまり、顧客の回答の裏には言葉では言い表すことのできない真の問題(本質的なものや恥ずかしさ、劣等感)が潜んでいる可能性があるということです。

言外を読むということが欠かせません。仮に読み間違えても、何度も繰り返すうちに本質が浮かび上がってきます。固定されたものではありませんが。

あなたの「推し企業」はどこですか?

「顧客推奨度(NPS)」という尺度を知ったことは今回の学びになりました。


🔴情報源はできるだけ多く持つ

海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。そうすると文献に当たることが必要になります。

日本の国立国会図書館のウェブサイトや米国の議会図書館のウェブサイトに当たってみるのも良いかもしれません。

もちろん、ロイターブルームバーグなどの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。

あるいは『日経ビジネス』『東洋経済』『ダイヤモンド』『プレジデント』などの雑誌やウェブ版から情報収集することもできます。これらの雑誌やウェブ版の購読をお勧めします。

あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPTBardに質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。

ロイター

ブルームバーグ

moomoo


(10,827文字)


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