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日本を脅かす 第4次産業革命 米独印、次の勝者は誰だ 2/3 2015.01.05



日本を脅かす 第4次産業革命 米独印、次の勝者は誰だ 2/3 2015.01.05



CONTENTS

PROLOGUE 「日本抜き」の産業革命が始まる

PART1 革命の火蓋切った ドイツの焦りと決意

PART2 インドが仕掛ける下剋上

PART3 GEの独走を許すな モノ作りの頭脳争奪戦

PART4 トヨタが”下請け”になる日

PART5 馬車のままでは置き去りにされる



今週の特集記事のテーマは

製造業の覇権は渡せない――。
2015年、史上4度目となる産業革命が幕を開けた。
先陣を切ったのはドイツ。産業界と政府がタッグを組み、「つながる工場」で先行する。
インドは虎視眈々と「下克上」を狙い、ITの巨人が主導する米国が待ったをかける。
一方、モノ作り大国を自認する日本はスタート地点で足踏みしたままだ。
革命の渦はあらゆる企業を巻き込み、世界の産業構造を根底から覆し始めた 
(『日経ビジネス』 2015.01.05 号 p.024)


です。



日本を脅かす 第4次産業革命 
米独印、次の勝者は誰だ
(『日経ビジネス』 2015.01.05 号 表紙)


今特集のスタートページ
(『日経ビジネス』 2015.01.05 号 pp.024-025)


第1回は、
PROLOGUE 「日本抜き」の産業革命が始まる
PART1 革命の火蓋切ったドイツの焦りと決意
を取り上げました。

第2回は、
PART2 インドが仕掛ける下克上
PART3 GEの独走を許すな モノ作りの頭脳争奪戦

を取り上げます。

最終回は、
PART4 トヨタが“下請け”になる日
PART5 馬車のままでは置き去りにされる

をご紹介します。

世界の産業を米国がリードし、21世紀も米国が主導権を握りそうな状況にドイツは危機感を抱き、いち早く第4次産業革命の狼煙を上げました。

一方、「IT(情報技術)は米国が世界一」と米国産業界の誰もが確信に満ちています。

IoT(Internet of Things=モノのインターネット)という概念が提唱されるようになった現在でも、「米国が世界一」、といっそう自信を深めています。

IoTとは、あらゆるモノとモノがインターネットでつながり、そこから得られる膨大なデータ(ビッグデータ)を解析することで、ハードの潜在能力をソフトによって飛躍的に高めることが可能になる、という概念です。

ICT(情報通信技術)の巨人が林立する米国は、他国との競争だけでなく、自国内の強力なライバルとの熾烈な競争に日夜晒されています。そうした環境が、強者をさらに強化している、と私は考えています。切磋琢磨しているのです。

そうした中、IT(情報技術)の世界に台頭してきたのは、インドです。「0(ゼロ)の発見」で知られるインド人は、数学の能力が突出した人たちが大勢います。数学の力を利用し、ソフトウェアの開発で目覚ましい成果をあげています。

モノ作り大国を自認する日本はどうでしょうか?
米独印と比較すると、スピード感が乏しいという印象は否めません。日本の大企業が、外国企業の「下請け」に成り下がってしまう可能性は、ゼロではありません。

産業界では、インターネットと、ビッグデータ解析をベースにしたAI(人工知能)、3次元データを活用しモノ作りに有効な3Dプリンターを使えば、今まで無名な企業でも一気に業界トップに並んだり、踊り出ることも不可能ではありません。

良くも悪くも、凄い時代になったものです。
私たち消費者(利用者)に必要なことは、第4次産業革命の行くえをしっかりと見極めていくことです。

先進国と新興国との格差は、IoTを活用することによって一気に縮めることが可能になった、という事実を認識する必要があります。

国内の瑣末な事象に気を取られているうちに、外国企業によって日本企業がM&A(合併・買収)の餌食になったり、経営破綻に追い込まれる事態も想定しておかないといけない時代になった、と考えています。

今まで安泰だったからこれからも永遠に大丈夫だ、という安易な考え方はもう捨てた方がいい、と思います。

「優秀な」あなたでも、「明日から出社しなくていい」と肩を叩かれる日は来ない、とは断言できなくなった、と考えるべきです。


では、本題に入りましょう!

その前に復習しましょう。
過去3回の産業革命と、4回目の産業革命を再度、概観してみましょう。

より深く理解するためです。もちろん、「もう十分に分かっているよ」という方は、この部分を飛ばして構いません。

『日経ビジネス』は下図にまとめています。ひと通り見てみましょう。

(イラスト=Getty Images)


(写真=Getty Images、以下同)




1回目の産業革命
は、18世紀に英国が覇権を握った、「蒸気機関」が象徴的です。

2回目の産業革命は、20世紀初頭に米国が覇権を握った、大量生産を可能にした「電気エネルギー」が象徴的です。

3回目の産業革命は、20世紀後半に「カイゼン」を駆使した日本の製造業が、世界中から注目され、「コンピューターによる自動化」(産業用ロボットを含む)が象徴的です。

そして、4回目の産業革命は、2015年から始まります。どこが覇権を握るのか。米独印か。はたまた日本でしょうか?あるいは、全く想定されていなかった国でしょうか?いずれにせよIoT産業革命と言えます。

すでに、4回目の産業革命の覇権の争奪戦は、始まっています。IoT産業革命によってどう変わるのでしょうか?

『日経ビジネス』は3つの大転換がある、と指摘しています。

 1つ目は、単一製品の大量生産時代が徐々に終焉へ向かうことだ。カスタムメードを大量生産する時代が到来する。その先頭を走ろうとしているのがドイツだ。

 次は、クルマなどのモデルチェンジの概念が変わる。ネットなどで集めた消費者ニーズを基にソフトをアップデートし、まるでスマートフォンのようにモノを進化させる。

 これら2つの変化で主導権を握れるかどうかで、主従が逆転する。これが、3つ目の変化である。

 膨大なデータを操るIT企業が製品開発を指揮し、製造会社を下請けのように使う時代も現実味を帯びてくる。

 そして、国家間の下克上が始まる。

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米独印、次の勝者は誰だ 
2015.01.05 
p. 027 


こうのような世界の動きに対して、日本や日本企業は第4次産業革命の中核に位置することはできるのか、ということに注目が集まります。

その点について、『日経ビジネス』は冷徹に断言します。

 これから到来する第4次産業革命の中核に、残念ながら日本の姿は見えない。

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2015.01.05 p. 027
 


インドの台頭は目を見張ります。日本はオチオチしていられません。
お尻に火がついた、という認識ができるかどうか、がポイントです。


PART2 インドが仕掛ける下克上

この章のキーワードは、下克上です。

私たちは、インドのことを知らなすぎる、と思います。今も残る「カースト制度」「インド仏教」「インドカレー」「ゼロの発見」「ガンジス川の沐浴」などなど。

他には、バンガロールはIT企業の集積地として有名ですね。欧米の最先端企業のソフトウェア開発拠点となっています。

さらに言えば、医学が進んでいます。
米国の大学や大学院へ留学し、医学知識や医療技術を身につけ、本国に戻り、医師をしている人たちがいます。
高度な医学知識や医療技術を欧米に比較して格安な料金で提供しています。
欧米から観光を兼ねて、治療のためにインドを訪れる患者が多いとか。

そんなインドで、今まで知られていなかった地域でも、大きな変化が起きています。

『日経ビジネス』取材班のリポートを読んでみましょう。

 先進国が経てきた進化のステップを一気に飛び越え、製造業の基盤が未熟な新興国が、いきなり第4次産業革命の主役に躍り出ることもある。それに最も近い国の一つが、ソフトウェア開発の人材が集まるインドだ。

 多くのIT企業や有力大学を擁し、インドを代表する文教都市プネー。その郊外の工業団地にある日韓合弁のプラスチック品生産会社EKI。

 全部で33台の機械はすべてインターネットに接続され、工場の制御室にあるモニターで稼働状況を監視できる。そのデータを基にして、生産の効率が最も高くなるように、各機械の生産順序やスピードが調整されていく。

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今までの発想では、新興国は先進国の足跡を辿るしかなく、先進国に追い付くことはできませんでした。

ところが、IoTを活用すれば、中間のプロセスを飛ばして、一気に先進国に追い付くことが可能になりました。

先進国も、今後は、うかうかしていられなくなりました。

第4次産業革命の本質は、その点にある、と私は考えています。

インドが台頭してきた背景には、国と企業の連携が上手くいっていることも見逃せません。

 インド企業がIoTで攻勢を強める背景には、2014年5月に首相に就任したナレンドラ・モディ氏の積極的な産業育成政策がある。モディ氏は、事務手続きや税制を簡略化して海外企業の工場を誘致する「メーク・イン・インディア」や、中堅都市や村レベルまで高速の光通信網を整備する「デジタル・インディア」を推進。製造業とITの両面で強力な支援を約束した。

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モディ新政権は、製造業とITを融合できるIoTを
積極的に推進(写真=Getty Images)


インドの方向性は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が推進する「インダストリアル・インターネット」と同様なものです。

 2014年12月22日号の「日経ビジネス」特集でも紹介した、この分野で先進的な米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、ハードウェアの製造だけでなく、ソフトウェアやデータ解析を強化してモノ作りの「サービス化」を進めている。

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詳細は、

をご覧ください。

インドの魅力はそれだけではありません。若くて低コストな労働力を豊富に抱えています。

「世界の工場」として君臨してきた中国では人件費が高騰、若く低コストの労働力を豊富に抱えるインドに対して世界の注目が集まっている。

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2015.01.05 p. 037
 



では、IT大国米国の動向はどうなっているでしょうか?

PART3 GEの独走を許すな モノ作りの頭脳争奪戦

この章のキーワードは、IoTです。

下の図表をご覧ください。
インテルがサンフランシスコで開催した記者会見の席上で、背景に映し出されたタイトルです。
IoTが3カ所に出ていますね!IoTへの意気込みが感じられます。


サンフランシスコでの記者会見に登壇した、
インテルのダグラス・デイビス副社長
(写真=鍋島 明子)

『日経ビジネス』は、米国の息遣いを熱く語っています。

 一度は失った製造業の覇権を、奪い返そうとしているのが米国だ。工場の工作機械へつながり顧客情報を送り込むシステムや、ソフトのダウンロードにより製品を進化させるといった第4次産業革命。IoTを制する企業がモノ作りを制する時代に入り、米国に追い風が吹く。半導体やソフト、ネットといったITの巨人たちが入り乱れ、「モノ作りの頭脳」の座を巡る激しい駆け引きが始まった。

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2015.01.05 p. 038
 

IoTがどのように使われるのか、具体的に見てみましょう。

 ネット接続機器の代表格であるパソコンやスマホだけでなく、クルマや家電、産業用設備などのモノがネットに接続するIOT。

 米調査会社、ガートナーは、2020年にネット接続機器が2014年の約7倍となる250億個に急増すると予測している。

 その内訳は、自動車分野が約35億個、産業分野では約83億個、一般消費者向け製品は約131億個に上る。

 集めた大量のデータを分析し、活用することに長けた企業が、製造業の競争力の根幹を握る時代がやってくるのだ。

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米独印、次の勝者は誰だ 
2015.01.05 p. 039
 


出所:ガートナー(2014年11月)の資料を基に本誌作成


「日経ビジネス」は、IoTを推進する代表格GEの動向に注目しています。

 IoTの覇権を握ろうと、コンソーシアムを作る動きが広がり始めた。

 その代表格が、2014年3月に設立されたインダストリアル・インターネット・コンソーシアム。

 産業向けソリューションや分析ソフトを持つGE、同じく分析ソフトを持つIBM、センサーに使う半導体のインテル、通信機器のシスコシステムズ、ネットワークを提供するAT&Tの5社が創設メンバーだ。

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2015.01.05 p. 039
 


コンソーシアムの構成企業を見ると、各分野の巨人が出揃っていますが、「呉越同舟」の感が否めません。
果たして長続きするのか、気になるところです。

他にもコンソーシアムが創設されていて、下の図表をよく見ると分かりますが、複数のコンソーシアムに属する企業があります。

例えば、インテル、シスコシステムズ、サムスンがそうです。

複数のコンソーシアムに属すことで、本流が何なのか見極める必要に迫られ、「置いてけぼり」を喰らわないための、リスクヘッジ(リスク回避)である、と私は考えています。

上の図表で見づらいところがあると思われますので、6つのコンソーシアムの構成メンバーを書き出します。

Industrial Internet 
GE/IBM/インテル/シスコシステムズ/AT&T など115社

ALLSEEN ALLIANCE 
クアルコム/マイクロソフト/ソニー/パナソニック/シャープ など約100社

OPEN INTERCONNECT 
インテル/サムスン/シスコシステムズ など約40社

スレッドグループ 
グーグル/サムスン/ネスト など約10社

amazon.com 
アマゾン

HomeKit 
アップル

気になるのは、日本企業はALLSEEN ALLIANCEに集結していることです。大丈夫なのだろうか、と少し不安になりました。

いずれにせよ、IoTのコンソーシアム、覇者はどこが主役になるのかは、10年以内に決着がつくことでしょう。

 どのグループが勝ち残り、技術標準を握るのか。先行きはまだ混沌としている。

 見通しを困難にしている一つの要因が、複数のグループに参画し、二股をかける企業も珍しくはないことだ。

 インテルはIoT関連の2つのグループで主要グループになることで、負け組になるリスクを極力減らそうとしているようだ。

 同じコンソーシアム内でGEらと協調するIBMも、それとは別にしたたかな独自戦略を進める。背景には、この分野で先頭を走るGEへのライバル意識がある。

 自社でモノ作りを手掛け、しかもIoTでも先駆的なGEに独走を許せばIBMやインテルといった従来型IT企業のビジネスチャンスは小さくなり、第4次産業革命の果実を総取りされかねないと警戒する。

 米国は、「競争と協調」が複雑に重なり合う様相を呈している。

 「IoT時代にモノ作りや開発の主導権を握るのはアマゾンかもしれない」という意見を持つ企業関係者や有識者は少なくない。

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米独印、次の勝者は誰だ 
2015.01.05 p. 041
 


「日経ビジネス」は、気になることを書いています。
IoTはあらゆるモノとモノがインターネットに接続されるとセキュリティの問題が大きくクロースアップされます。その対策はどうするのか、ということです。

 ネットにつながっている限り、物理的に離れていても遠隔から攻撃が可能になる。その影響は、機密情報の漏洩だけにとどまらず、機器が収集したデータの改ざん、重要な機器の操作権限の乗っ取りなど多岐にわたる。

「今後、電力や工場内の工作機械の制御など、従来は外部とのネット接続を前提に構築されていない旧式なシステムや機器の安全対策が、より重要になる」。IBMでIoTのセキュリティーを研究しているJ・ラオ氏は、こう指摘する。

「セキュリティーを懸念し過ぎてIoTの活用で出遅れるのはナンセンス。競合他社に先を越されて負けるだけだ」(ラオ氏)という。

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米独印、次の勝者は誰だ 
2015.01.05 p. 041
 



今までの話とは異なりますが、インターネット上で新種の犯罪が発生しているという報告がありました。

2015年1月5日夕刻に、FM J-WAVEの番組で、「ransomware(ランサムウェア) 、身代金ソフト」というマルウェアが広がっているということです。

どういうものかと言いますと、普段使っているサイトにアクセスしようとするとできなくなり(人質に取られ、)、元通りに使えるようになるためには、ランサムウェアの管理者にお金(身代金)を支払って復元してもらうというものです。

例えば、ネットゲームやネットバンキングのサイトにアクセスできなくなり(つまり人質に取られ)、復元するためには「身代金」を払わなければならないのです。

IoTの話に戻しますと、デファクトスタンダード(事実上の標準)を握ったところが、主役になるのです。

日本企業そして日本が、国内問題ばかりに気を取られているうちに、世界の動きに「置いてけぼり」を喰らう危険性が大きいと思います。

その点に気づいている人たちはいるはずです。何か早急な対策を講じてもらいたい、と願うばかりです。

最終回は、

PART4 トヨタが“下請け”になる日
PART5 馬車のままでは置き去りにされる

をお伝えします。

ご期待下さい!


🔷編集後記

この特集記事(元記事)が公開されたのは9年前(2015.01.05)のことで、アメブロでも9年前(2015-01-08 19:22:57)のことでした。

大幅に加筆修正しました。

9年前に IoT の覇権争いをしていた顔ぶれは、当時、名の知られた企業ばかりでした。

この1~2年では IoTよりも、AI やロボットのほうが話題にあることが多くなっていますね。そして、その中心となるものは半導体です。

現在では、半導体関連企業の主役はエヌビディアですが、9年前には一部のゲームマニアを除き、ほとんど名前を知られていませんでした。

エヌビディアはGPU(画像処理半導体)を企画する企業でした。製造はしていません。製造は製造専門の企業に委託しています。

エヌビディアはどのような存在なのかを簡単に説明しますと、最先端の半導体を企画する企業であることです。英国のアーム(ソフトバンクグループ傘下)に設計を依頼し、台湾のTSMCに製造を委託しています。

半導体関連企業の中で、エヌビディアは一強であり、当分の間、その地位が揺らぐことはないでしょう。

このような米国企業が出現すること、さらには米国にはそうした土壌があるということはとてつもなくすごいことだと思います。

インドの台頭という話を時々耳にしますが、米国を抜くことは容易なことではないと考えています。

インドについて考える前に、中国を考えてみましょう。

一時、GDPで中国が米国を抜き、世界一になるという話が話題になりました。しかし、今ではどうでしょう。

確かに13億人の人口を抱え、労働力は大きいかも知れませんが、問題は習近平国家主席の独裁が続き、不動産バブルが破裂し、中国経済は揺れています。日本同様に少子高齢化が進み、人口減少が起きています。

習主席の富裕層に対する弾圧を強める政策に辟易し、中国の富裕層は他国に移住する人々が増えているそうです。

私の知る限り、GDPの多寡だけで世界一を決めるのはおかしい、と長年考えてきました。

私は世界の「基軸通貨」をもっと考えないといけないと思っています。基軸通貨はほとんどの国々で使える(通用する)ということです。

中国人民元が世界中で使えると思いますか? 現状では無理ですよね?

同様に、インドは2つの大きな問題を抱えています。1つはカースト制(身分制度)がいまだに残っていることと、もう1つは中国と同じようにインドのルピーが基軸通貨になるだろうかということです。

ここで、基軸通貨の歴史を振り返ってみましょう。

21世紀の基軸通貨(7) 基軸通貨の歴史

約100年ごとに主役が交代
日本経済新聞 
2010年3月31日 4:00から抜粋

かつて覇権国の交代にはその勢力図を大きく塗り替える戦争がつきもので、およそ100年に1度主役が変わってきた。

14~15世紀には、東方交易を中継した地中海貿易が隆盛を極めるなか、地中海の制海権をめぐるジェノバとの戦いに最終的に勝利を収めたベネチアが覇を唱え、その通貨であるドゥカード金貨が通用した。

16世紀には、イタリア戦争にともなうフランスの侵攻によりイタリア港湾都市国家が疲弊し、逃避した金融資本の支援を受けたスペイン、ポルトガルが台頭する。多種多様な金銀貨をはじめ、貴金属そのものが遠隔地貿易の重要な生産物であり、また国際決済手段でもあった。

17世紀は独立戦争を経たオランダが、オランダ東インド会社のアジア進出により一大海上帝国を築き、中継貿易で富を蓄積した。計算貨幣であるバンコ・グルデンでの払い出しを保証したため、これが国際決済通貨として広く利用された。

18世紀は、スペイン継承戦争を経て英国・フランスが植民地貿易を展開した時代であり、ポンドとリーブルが植民地通貨として利用された。

19世紀には、ナポレオン戦争、ウィーン会議を経て大英帝国がその時代を画すこととなり、ポンドが最盛期を迎える。

20世紀はもちろん、2度の世界大戦を経たドルの時代である。

このように、基軸通貨は覇権国や貿易の中心地と共に変わってきた。第1次大戦から約100年がたち、貿易の重心も大きく変わった。時代の節目が次第に近づきつつあるのかもしれない。


しかしながら、私は、基軸通貨としてのドルが他国通貨に取って代わる可能性は当分の間ないと考えています。なぜなら米国からは次々と巨大企業が出現し、時価総額で世界のトップ10を占めているからです。これからもこの構図は簡単には変わらないと考えています。

その理由は、米国は世界中から移民を受け入れ、多様な考え方を持つ人たちが多く存在し、起業家精神があり、世界最高峰の教育機関(大学や大学院)が数多くあることです。

さらに言えば、米国には巨大な株式市場があります。NY証券取引所とナスダックです。

statista

2024年、米国の株式市場は世界株式の時価総額のおよそ60パーセントを占めています。世界株の時価総額に占める割合が米国に次いで大きい国は日本で、それに英国が続いています。なお、米国のニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック(NASDAQ)は、世界最大の証券取引所です。

statista 


あなたはインドがこれから数十年でGDPで米国を抜き、ルピーが基軸通貨となると予想しますか? もしそれが実現するとしたらどのような理由でしょうか?


(9,588 文字)


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