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盛田昭夫 『21世紀へ』(004)

盛田昭夫 『21世紀へ』(004)

盛田氏が孫子の兵法を念頭に置いて、書いていることは明らかです。

「彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」
(『孫子』第三章:謀攻篇)

「百戦百勝は善の善なるものにあらず」
(同上)

孫子は百戦して百勝することが最善とは言っていません。
戦わずして勝つことが、最善と述べています。

盛田氏の
「経営者は自分の会社を率いて競争していくものだ」
という言葉は、経営者は皆、自覚しなくてはならないことです。

孫子の兵法

INVENIO LEADERSHIP INSIGHT 

孫子の兵法は、中国春秋時代(紀元前500年ごろ)に、思想家孫武によって書かれたとされる兵法書のことをいう。戦略論としての評価は非常に高く、クラウゼヴィッツの戦争論と並び、東西の二大戦争書とも呼ばれている。
「孫子の兵法」は軍隊の配置、戦術の実施などを取り上げた兵法と謀略の極意の集大成であり、中国の歴代の武将だけでなく、日本でも鎌倉時代、戦国時代の武将の必読書であったし、ナポレオンも「孫子の兵法」を学んだとされ、現在でもアメリカ軍で軍事における教科書として参照されるほど影響力が高い。ビジネスにおいても幅広く活用されており、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツが愛読していることでも知られている。

孫子の兵法
INVENIO LEADERSHIP INSIGHT


『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック

目次
はじめに
第1章 経営の原則
第2章 人材の条件
第3章 マーケットの創造
第4章 国際化への試練
第5章 経済活性化の原理
第6章 日米関係への提言
第7章 変革への勇気
第8章 日本国家への期待
第9章 新世界経済秩序の構築
あとがき


第1章 経営の原則

「競争に勝つことがすべて」(1967年)から


経営者は競争していく存在

日本と外国では、人情とか人間の慣習などがたしかに違う。

しかし経営の本当にあるべき姿は変わらないと思う。

いうまでもなく、経営者というものは、日本、外国を問わず、自分の会社を率いて競争していくものだといっていい。

21世紀へ 盛田昭夫 010 p.36



おのれを知ることが肝心

勝つためにはどうしなければならないか。

それには、敵を知り、おのれを知ることがまず第一である。スポーツと同じで、勝とうと思えば、自分は何ができ、敵はどのくらいの力があるかを知らなければならない。

要するに、自分には何ができるか、自分は何をやるのがいちばん得手なのか、自分のやっていることがうまくいっているかどうか・・・・・・というように、おのれを知ることが肝心なのである。

21世紀へ 盛田昭夫 011 pp.36-7



敵のことをよく知ること

次に、経営者たるものは、敵をよく知らなければならない。そのためには、自分の商売のいちばん武器になる専門知識を持っていなければならない。
それがあってこそ、自分の事業の先を見通すことも可能なのである。

21世紀へ 盛田昭夫 012 p.37




盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田氏が、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという気持ちがビンビンと伝わってくる本です。

盛田氏の「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることは多くが当たっています。
盛田氏の慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

アマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられるでしょう。


🔴「自分の商売のいちばん武器になる専門知識を持っていなければならない。それがあってこそ、自分の事業の先を見通すことも可能なのである」


この言葉の後に、盛田氏は次のように述べています。

これからの経営者は、事務屋であっても技術的知識も兼ね備え、技術屋であれば経理の知識もあるという、両刀使いでなければつとまらないであろう。

21世紀へ 盛田昭夫 p.38


盛田氏が言いたかったことは、一つだけの専門バカ(深掘りできていればそれだけでも素晴らしいことですが)になるな、ということだったのです。

さらに言えば、複眼思考、つまり物事を多面的に見て判断することの重要性を説いたとも考えられます。


複眼思考

複眼思考とは、複数の視点を自由に行き来することで、ひとつの視点にとらわれない相対化の思考法といってもよいでしょう。

オックスフォード大教授が教える「自分の頭で考える」ための技法
自分で考えるとはどういうことか
2022.02.22



⭐出典元 複眼思考 オックスフォード大教授が教える「自分の頭で考える」ための技法 自分で考えるとはどういうことか 2022.02.22




盛田氏は、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンです。表現がダサい? 古い?




⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。
さらに、ここ数十年で業態を変えてきましたね。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで8年前(2014-06-19 21:27:35)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1


今やソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元




⭐回想録


⭐プロフィール


⭐私のマガジン (2022.12.10現在)

























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