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可視化経営 人的資本もリスクも掴む 2022.10.24 1/3

【『日経ビジネス』の特集記事 】 #19

✅はじめに

⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。
Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。

⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
プロフィールから)


日経ビジネス電子版セット(雑誌+電子版)「らくらく購読コース」で、2022年9月12日号から定期購読を開始しました。



日経ビジネスの特集記事 #19

可視化経営 人的資本もリスクも掴む 2022.10.24 1/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

カリスマ経営者が一人二人とこの世を去り、カリスマ経営者とは異なる経営を模索する動きが出てきています。

例えば一人ではなく、数人でグループ経営をする企業もあります。
カリスマ経営者のツルの一言で経営方針を変更するのではなく、グループで協議し経営していくのです。

ただグループ経営には問題点があります。
一例を挙げれば、議論ばかりで結論が一向に出ず、決断を急がなければならない場面で、アジャイルに対応できないことです。

その原因は、経営が「可視化」できていないためではないかと考えています。


カリスマ経営者が時代を読んで事業を起こし、ヒットに導く。その特異な才能と経営哲学は、多くの人を魅了してきた。しかし、今はカリスマがいなくても、成長を目指せる時代だ。テクノロジーの進化によって、経営の実情がかなりの精度で「見える」からだ。

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PART 1 「経営の聖域」が消える
勘と経験よ、さらば
何もかもが見える時代


まず、ローソンのケースを見てみましょう。

可視化① 販売予測
ローソン
AIが値引きアシスト
廃棄減り、粗利増える

コンビニの仕入れおよび商品の配置は、長年の勘と経験がモノを言う世界でした。それが変わろうとしています。特定の人に依存するのではなく、AIを使って「可視化」しようとしています。

長年の勘と経験がものをいう世界に「可視化」の波が押し寄せている。

コンビニ大手のローソンがこの夏、都内の162店舗で実施したのは、AI(人工知能)を使って最適な値引き額を算出する実証実験だ。

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ご存じのように、コンビニはフランチャイズ契約で成り立っています。
各店舗は独立採算制を取っています。店舗経営者は一国一城の主ですが、
本部の指示に従って商品を仕入れ、陳列し、売れ行きの悪い商品の入れ替えはすべて各店舗が行います。利益を出せるかどうかは各店舗の経営者の手腕にかかっています。

各店舗の経営者にとって一番苦労する点は、ロイヤリティと呼ばれる本社が得るチャージが高額であることです。

大手3社(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン)のロイヤリティの割合は、売上総利益(粗利)の21%~76%と幅が広く高率で、フランチャイジー(店舗経営者)にとってはかなり厳しい条件になっています。


⭐参考データ 【フランチャイズ】大手コンビニ3社の加盟金とロイヤリティ事情 2019年10月21日


極論を言えば、フランチャイザー(本部)は何もしなくても、フランチャイジーからお金を吸い上げることができる仕組みです。

たとえフランチャイジーが潰れても、代わりはいくらでもいますので(新規加盟希望者も複数店舗運営者)、フランチャイザーは困りません。

コンビニの経営はフランチャイズ契約によって成り立っている。「複数の店を営むオーナーも多い。値引き判断を経験の浅い従業員にも任せられるようになれば負担減につながり、仕入れ予測もしやすくなる」(次世代CVS統括部の石川淳マネジャー)

ローソンはそう考え、過去の販売実績や来店客の行動パターン、混雑する時間帯といった情報に、加盟店オーナーへのヒアリングも組み合わせ、値引きの精度を高めていった。

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実証実験の結果はどうだったのでしょうか?

約3カ月の実験では、対象商品群の廃棄額を約4%減らし、粗利を約1%増やす目標をおおむね達成したという。至難の業を機械化することで、店の利益を伸ばす結果を得られた。ローソンは2023年度中に、このシステムを全国展開する計画を描く。

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このシステムが全国展開された後、目に見える成果が得られるか注目されています。


⭐参考データ コロナ禍でのコンビニ大手3社の業績を比較してわかったセブンイレブンが強い理由 @DIME 2022.01.23



経営の可視化

ここ数年、様々な業界で広がりを見せているのは、経営を徹底的に可視化する動きだ。具体的な数値や指標に落とし込むことで組織の課題が明確となり、PDCA(計画・実行・評価・改善)を回すことができる。テクノロジーの進化が「可視化経営」への転換を迫っているのだ。

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よくご存じのようにPDCA(Plan・Do・Check・Act)です。現代ではこの考え方は古いと言われることがありますが、行動規範としては生きています。


可視化② エンゲージメント
ソニーグループ
従業員約11万人を調査
役員報酬の評価に反映

ソニーグループは社員だけでなく、役員に対してもエンゲージメント(会社への貢献度)という概念を「可視化」することに挑んでいます。

当然と言われればそれまでですが、今まではどの企業も役員に対しては、
エンゲージメントという視点で評価することが乏しかったと思われます。

ソニーグループは従業員のエンゲージメント(会社への貢献意欲)という、抽象的な概念の可視化に挑んでいる。
(中略)
全世界約11万人の従業員を対象に年1~2回のアンケートを実施。働きがいや成長の実感、職場の価値観への共感度合いなど、40問前後の設問に答えてもらい、一人ひとりのエンゲージメント率を集計している。

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エンゲージメント率とは次の通りです。

エンゲージメント率とは企業と従業員の結び付きの強さを示す指標で、スコアが高いほど、生産性の向上や離職率の低下が期待できる。

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BE Heard(ビー・ハード)と呼ばれる人事情報システムなどを使ったそうですが、その結果、どの程度の成果が上がったと思いますか?

アンケートの各設問とエンゲージメント率の因果関係を、数理的に分析し対策を施すことで19年度に85%だったエンゲージメント率は、21年度には89%にまで高まった。ソニーグループは役員報酬の評価項目に、エンゲージメント率を採用している。

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エンゲージメント率は2年で4%上昇したそうです。2年で4%の上昇を高評価するかどうかですが、私は向上したと解釈しています。

エンゲージメント率という考え方が、全従業員(役員も含む)に浸透した結果、成果が得られたということです。

こうした取り組みは、一度良かったからと言ってそれで終わりではなく、継続的に取り組んでいくことが不可欠です。


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可視化③ 接客力
CRISP
75%の来店客を識別
時給アップも検討へ

社内データを外部に公開している企業があります。
CRISP という、サラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」を展開する企業です。この企業のことは今回初めて知りました。

店舗別の売上高や良品率、5分以内調理完了率、顧客満足度、スタッフの熱狂度。サラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」を展開するCRISP(クリスプ、東京・港)は、社内で独自に集計したこうしたデータを、惜しげもなく外部に公開している。

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社内データを外部に公開した背景には、勘とセンスで店を開発し、ヒットへと導いてきた創業社長の存在がありました。

「占師の意思決定に頼った外食業界のあり方を変えたい」(宮野浩史社長)という思いからだ。占師とは特に創業社長を指す。自らの勘とセンスで店を開発し、ヒットへと導く。しかし、なぜ売れたかは、本人にも分からない。分析できるデータがそろっていないからだ。かくいうクリスプも創業当初はそうだった。

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こうした背景があり、危機感が可視化へと突き進んだのでした。

クリスプはデータの収集、可視化をとことん突き詰めることにした。今や「来店客の75%程度は、完全に個人として識別できている状態」(宮野氏)だ。

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可視化は、具体的にどのような成果をもたらしたのでしょう。

例えば、同じ時給で働いていても、Aさんが接客すれば再来店率が80%で、Bさんは20%だったとすると、店の売り上げへの貢献度は雲泥の差になる。「素晴らしい接客をする方なら、時給3000円を払ったっていい。接客の質を見える化できれば、優秀な人はもっと稼げるようになる。逆に言うと、外食の接客は、誰でもできるような仕事ではなくなるはずだ」(宮野氏)

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可視化④ 顧客体験
SHIFT
ウェビナーの視聴者
時系列で感情を追う

感情を可視化できないかと考えて、システムを開発した企業がありました。
それがSHIFTでした。

システム会社のSHIFT(シフト)は取引先などを招いたセミナーをオンラインで開くうちに、視聴者の感情を可視化できないかと思いついた。

開発したのが、リアクションを記録する新機能だ。「いいね」「拍手」「驚き」「笑い」「メモ」など、ウェビナー画面に表示された様々な絵文字を押すと、他の視聴者の画面にもアイコンが表示される。多くの人が「笑い」のリアクションを選択すると、無数の絵文字が画面に表示され、場の盛り上がりが共有される。
視聴者のリアクション量を時系列で記録するというこの機能は、特許を取得した。

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特許を取得したということですが、感情の可視化にはまだ改良の余地があると思います。今後に期待したいと思います。



可視化⑤ 電話の声
RevComm
伝わる話術を徹底解剖
「敏腕営業」育成に力

電話営業やコールセンターという言ってみれば裏方仕事の世界でも、可視化の流れが広がっているそうです。

会話の速度や抑揚の強弱、沈黙回数といった「話術」をAIで解析してスコア化してくれるのが、RevComm(レブコム、東京・渋谷)が開発した「MiiTel(ミーテル)」というサービスだ。

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ミーテルに関する解説が書いてあります。

ミーテルは自動で録音する通話音声の文字起こしをして要約もする。22年2月には話し手の感情を認識する機能を追加。既に1500社以上が導入済みでパイオニアもその1社だ。

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トップセールスマンの話術を忠実に再現できれば、誰でもトップセールスマンに近い営業ができるようになるかもしれません。


トップセールスの話術を忠実に再現できれば、誰でも敏腕営業として活躍できる道が開ける。可視化は、スキルの継承にも大いに役立つ。

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可視化⑥ 感謝の気持ち
Unipos
「称賛」を贈り合う
静岡銀行が社風改革

銀行業界は改革が進まない業種の1つです。
部署ごとの壁が厚く、壁を取り外す力が働きにくく、目に見えない壁をぶち壊す覚悟のある経営者がなかなか出てきません。

さらに、失敗すると敗者復活ができないという体質が浸透しているため、挑戦する人が出てこない業界でもあります。

そのような中、地銀の雄と言われることがある、静岡銀行で新しい試みが行われています。

静銀が利用するのはメンバー同士がお互いを褒め合い、ポイント(ピアボーナス)などの報酬を贈り合えるチャットツール「Unipos(ユニポス)」。21年5月に導入した。感謝の気持ちを可視化して、コミュニケーションの活性化を図っている。

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どのような意図を持って、ユニポスを導入することになったのでしょうか?

「銀行は叱責の文化。失敗が許されず挑戦しづらい環境を変えたかった」。そう振り返るのは静銀の藤島秀幸・経営管理部理事部長だ。他者に称賛のメッセージを贈ることで、褒め合いの文化をつくり、社員一人ひとりの心理的安全性を高めたい──。

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水を差すようなことを言いますが、日本人は褒めるのが下手だと思っています。眉唾ものや白々しいことを言うことはできても、センスが感じられ、褒められた人が思わずニッコリしてしまうような表現が出来るような人は、多くありません。

「褒め合う文化」を作るのは良い試みですが、そのあたりに改善の余地があると考えています。



可視化⑦ メンタルヘルス
iCARE
健康状態を可視化
ハイリスク者を抽出

メンタルヘルスがようやく解決すべき重要な課題に上ってきました。
今年(2022年)9月に東証グロース市場にメンタルヘルステクノロジーズという企業が上場しました。

「メンタルヘルスソリューションやメディカルキャリア支援、デジタルマーケティングなどを手掛ける」企業ということです。(「株探」から)


今後、メンタルヘルスはさらに重要度が増して来ると思います。
心と身体の健康維持は個人の問題だけでなく、全従業員という括りで企業が考えるべき課題です。

人事部門を中心に約500社が導入しているのは、iCARE(アイケア、東京・渋谷)の「Carely(ケアリィ)」というサービスだ。

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なぜ、メンタルヘルスが重要なのでしょうか?
その一つの回答が提示されています。

近年のハイリスク者面談で多いのは「長時間残業などの労働環境への不満よりも、やりたい仕事と会社から求められることにギャップがあり、精神的ストレスを感じる」(アイケアの小川剛史氏)といった相談だという。社員の離職を防ぐためにも、メンタルケアの重要性は高まっている

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それにしても、サービスを提供企業名には、カタカナやアルファベットばかりで、漢字はありませんね。サービスを利用する企業名には漢字がありますが。



次回は、

PART 2 潜在危機から目を背けない
リスクを防ぐ適時予測
コロナ、災害にも効果

についてお伝えします。



🔷 編集後記

「可視化」(見える化ともいう)することで、今まで曖昧なことであったことや、見ているようで見えていなかったことに気づかせることができます。

ただし、問題はその先です。可視化して見えてきた課題をどう解決するかということです。

可視化はあくまで問題を明確化することであり、解決策ではありません

しかし、問題が明確化されなければ、対症療法あるいはもぐらたたきと言ったほうがわかりやすいかもしれませんが、それらの方法では本質的な問題解決には至らない、ということを自覚しなければなりません。




⭐ 私の回想録


⭐ 私のマガジン (2022.11.05現在)






















   

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