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第1回 「理念採用」で大手や人気企業に勝てるわけ

1 逆立ちしても大手企業には勝てないのか

 「逆立ちしても大手には勝てない」というのは、人材採用において、中堅中小企業の経営者や人事担当の方から口癖のように聞く諦めに似た言葉です。

 中堅中小企業だけではなく、大手の中でも人気企業、ブランド企業とそれ以外の知名度の低い企業や不人気業種や衰退業種との間には採用“格差”があり、同じような悩みを抱えているようです。

 例えば介護や物流、産廃処理などの業界では市場のニーズはあって、人材がいればもっと成長できる余地があるにもかかわらず、現状維持にさえ苦労しているのが現状です。

 中堅中小企業と人気・ブランド企業ではない大手にとっての採用の厳しさは、好景気で売り手市場になったり、新卒採用のスケジュールが大きく変わる混乱期にはさらに顕著です。果たしてこの採用“格差”は、本当に逆立ちしても埋めようがないのでしょうか。

 私は社会人になって以来30年以上にわたって人材採用に関わってきました。新卒で入社した会社での配属が人事部で、まずは自社の採用を担当しました。

 当時新卒採用は年間1000人規模、中途採用にも積極的で多い年は3桁の採用目標が下りてきました。さらに当時は正社員を上回る数千人のアルバイトがいて、正社員と変わらない勤務時間で仕事を任されている人も少なくありませんでした。

 私は長期の人から短期の人まで毎日何人もの採用をするべく、日々2ケタ以上の応募者の方にお会いしていました。人事部時代、面接でお会いした人数は数年で1万人を超えていたと思います。

 当時は会社の知名度も人気も高くなかったため、人気企業やブランド企業と競争しながらより質の高い人材を数多く採用するためにずいぶん苦労しました。

 が、そのかいあって人気就職先ランキングの上位をにぎわす企業と戦っても、次第に勝てるようになってきました。人気・ブランド企業でなくとも採用で勝つことができるのだと自信が持てました。

 その後、人事部から事業部に移って、クライアントである他社の採用を支援するようになるのですが、その際に現場で耳にしたのが冒頭の言葉だったのです。

 中堅中小企業だけでなく、人気・ブランド企業ではない大手の担当者も、「うちなんか逆立ちしても大手には勝てない」と諦めていたのです。

 10年余りにわたって、中堅中小企業や人気・ブランド企業ではない大手企業の採用を支援しました。

 全ての会社で大成功したとはいいませんが、多くの会社で大手や人気企業、ブランド企業に伍(ご)する採用ができました。個別の企業ごとに対策を考えてきたわけですが、振り返ってみると成功したケースには共通するポイントがあることも分かってきました。

 結論を先に申し上げれば、中堅中小企業や不人気大手企業であっても、「逆立ちなどしなくとも、人材採用で大手や人気企業、ブランド企業に勝つことができます」。

 その後私は新卒で入ったその会社を退職して独立するわけですが、きっかけはまさにこれら企業の採用を支援してきた経験でした。中堅中小企業や不人気大手企業が採用で成功するためのカギも、入社後に従業員が生き生きと働くためのカギも同じなのだと分かったのです。

 しかしそれを具現化する部署が社内になく、新規事業として社内提案しても当時の経営方針からは実現可能性がないと分かったので独立して自分で始めようと考えた次第です。

 ※後日談ですが、私が退社して現在の事業を始めた数年後、同社の経営方針が転換し、関連会社で同じ事業を始めることになりましたが。

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