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【読書感想】西川美和『永い言い訳』

2017.03.06読了。

西川美和著『永い言い訳』

映画ではよく理解できなかったところがあったが、小説を読んでスッキリした。

小説では、主人公の妻・夏子視点からの描写があり、本当の夏子に触れることができる。夏子はすぐ死んでしまうが、夏子の気持ちは読み手に託されているので、小説を読み進める時に「夏子の目線」でいることも出来て非常に面白かった。

登場人物に視点がドンドン移っていく。すごく独得。一人称二人称三人称と統一感がないのに、散漫としていない。人の心は移ろいゆくものなのだと、説得力が増す構成と文体だった。

主人公である衣笠幸夫の器は小さく、性根は脆く汚い。
それを妻に見透かされてきたと勝手に決めつけ勝手に劣等感を抱いている。

愛してる、とかもうそういうところにはいない。むしろ、憎しみに近い感情だったのかもしれない。

でも、自分の頭皮に触れる妻の指は心地良かった。

私は、この指の描写がとても好き。
肌や感性が心地良いと思えるから、感情で愛せる。
感情って、後付けなのかもしれないな。

幸夫が妻を、本当に愛していたのか、愛していなかったのか、本当のところは分かるようで分からない。

でも、たぶん、彼は『幸夫』と呼ばれる度に、少しずつ救われていったし、これからも救われる。

うまく言えないが、私自身も救われた小説だった。

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