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【読書感想】朝井まかて『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』

2017.08.02 読了。

朝井まかて『花競べ 向嶋なずな屋繁盛記』

朝井まかてさんのデビュー作ですが、ハイレベルハイクオリティな作品でした。これがデビュー作って凄すぎる。

江戸時代の苗物屋を舞台にしたお話。
本編に出てくる花や実の名前をスマホで検索しながら読み進めるのは本当に楽しかったです。

マンリョウ、センリョウは知っていましたが、十両、百両、紫重実という実があるのは知りませんでした。ちょうどこの時期に花が咲いているはず。そこら辺の山に入ってみようか、などと思案したりしました。活字が現実に繋がる瞬間は読書の醍醐味だなあ、と花競べを読んで沁み沁み思いました。

現代でも花の品種改良は進んでいて、数え切れない程です。主人公の花師である新次は育種を「自然天然と人の技の呼応し合うぎりぎりの美しさ」であるべきと考えています。なるべく手を加えない事を求める新次が終盤で出会う花木が、挿し木で殖やすしかない花木だったというのはしてやられたし、感動で泣きました。

花競べには、個性豊かな登場人物が多く出てきます。粋な人、仇な人、真っ直ぐな人、豊かな人間関係がそこにはありました。

人情話、江戸園芸職人話でもありますが、序盤中盤に蒔かれた種が、ラストで見事な花を咲かせます。ただの時代小説ではないですね。

江戸で愛された花や実は、現代でも昔と何ら変わらず愛でられている。その花木の美しさと逞しさに泣かずにはいられませんでした。本当に素晴らしい小説でした。

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