2018.10.15函館教育大学韓国語授業資料「この授業を始めるにあたって」

この授業を始めるにあたって

勉学、特に語学に関しては、『自ら学ぶ意志』がないとなかなか上達しない。毎日コツコツという、いかにも時代錯誤でかっこ悪い方法しか、語学上達の道はない。
最近は確かにSLA(第二言語習得)研究が、認知心理学や脳科学の分野から知見を得て、目覚しい発展を遂げているが、この研究からは、「このように人間が言語を習得する『らしい』」という話はできても、「こうすれば人間は必ず外国語が上手くなる」という一般化された方法は導きだされていない(もし存在すれば、誰もが外国語がぺらぺらなはずである)。
外国語は、学習する本人が外国語そのものや、外国語が使われる文化および、その文化に生活する人々に興味を持ち、理解していく過程の中で上達していくものである。その時間がどのくらいになるか、また発音や文法を完璧に習得できるかどうかは、本人にしかわからない問題である(教師は「いつできるようになる」という保証は絶対にできない)。
発音は口や舌を動かす「動作」の問題であるから、実際に口を動かす練習を長時間せずに上手くなることはあり得ないし、語彙や文法の使い方も、「実際に使われている現場(外国人が話す会話の場や外国人が書いたテクスト)」に接触することなしに辞書だけを暗記して使えるようになることはない(英語における三人称単数の-sなどはルールを教えられても実際に上手く使えるようになるのはかなり後だという研究結果もある)。
とにかく、「外国人ならどのように話すのだろうか?」「なぜ、外国人はこのように話すのか?」などと自ら考え『コツコツと使いたおす』こと。これしか語学上達の道はないように思う。では、教える側は何をしてあげられるのだろうか?
これには、教師が持つ哲学によって、さまざまな答えがあると思うが、この授業で教師は、「サポート」に徹しようと思う。外国語習得が学習者本人の問題である以上、教師は「教え込む」ということができない(もちろん一方的に「韓国語はこのように発音して、こういう構造で、このように解釈するんだ」ともっともらしく「解説」することはできるが、学ぶ側に理解できる準備が整っていないのに、うんちくを語っても、頭に入るはずがない)。
しかし、教師は学習者が何らかの疑問を持ったときに、的確に答える準備はしてあるし、学習者がレベルを上げたいという時に課題を出すことはできる(宿題を増やすだけかもしれないが)。よって、この授業では学習者側に自主的に学習してもらいながら、教師がサポートする形で授業を進めたい。
しかし、外国語を習い始めた人に、いきなり「自分たちで勉強しろ」と言っても、何をすればいいのか途方に暮れてしまうだろう。
それでこの授業では、教師が準備した「メニュー」を毎回の授業で自主的にこなしていきながら、問題が生じた時に教師に助けを求めるという形で行いたいと思う。

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