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最恐ホラー映画・村シリーズ最新作!本当にあった怪異の記録『実話怪談 牛首村』1/20発売!

北陸最凶の地と、日本の村の恐怖に迫る――!

あらすじ・内容

北陸に最凶とうたわれる二つの心霊スポットがある。
富山県魚津市の山中に取り残された坪野鉱泉の廃ホテル。
そして、石川県と富山県の県境にある曰く付きの隧道、
通称「牛首トンネル」がそれである。

坪野鉱泉では、肝試しに訪れた少女二人が失踪する事件が起き、
24年の時を経て遺体が海から発見されたものの、
いまだ多くの謎が残されている。

映画「牛首村」の舞台ともなったこれらの地の闇を徹底検証、
坪野鉱泉ホテルの探索ルポのほか、
日本各地に残された不気味な廃村を写真付きで紹介する。

また、坪野鉱泉や隧道で実際に起きた怪奇事件、
口減らしや神隠し、双子や牛に纏わる恐怖の村怪談も収録。

北陸最大のミステリーに迫る、実話怪談版・牛首村!

◆目次

●坪野鉱泉怪談紀行(吉田悠軌/著)
●坪野鉱泉ホテル 探索ルポ(栗原亨/著)
●廃村の歩き方(栗原亨/著)
・廃村・峰(東京都)
・十七つの家(茨城県)
・柏崎トルコ文化村(新潟県)
・松尾鉱山 緑が丘住宅群(岩手県)
・永谷集落(福井県)

●牛首実話怪談
「禍地」しのはら史絵
「牛首トンネル」営業のK
「トンネルの果て」久田樹生
「何もない場所。」音隣宗二
「光の集団」影絵草子
「子返しの女」青葉入鹿
「下見」青葉入鹿
「水音と鳴弦」しのはら史絵
「はしらげの立つ村」丸太町小川
「てれんこしょって」丸太町小川
「双児」久田樹生
「ホテル廃墟」神沼三平太
「山の中で」久田樹生

試し読み1話

「てれんこしょって」丸太町小川

 町内会長のSさんから聞いた話。

 今年七十歳になるSさんは、集落の名家の長男だ。振り返るに、少なくとも経済的には恵まれた人生だったと嫌味なく語る。

 そんなSさんが大学生として都心に暮らしていたある夏、集落に帰省して何をするでもなく畦道を歩いていると、急に後ろから、

「うめごど、てれんこしょってがら……」

 と声を掛けられた。

「え?」

 驚いて振り返ると、そこにはなんとも見窄らしい格好のA君が無表情で立っている。

 A君はかつて集落に住んでいた親戚で、Sさんとは同い年だった。叔父の家の長男で、Sさんとはまさに瓜二つといえるほどよく似ていたが、幼い頃から不思議と交流がなかったという。たしか小学三、四年の頃、叔父が相場で失敗したとかで多額の負債を抱え、夜逃げ同然に集落を去ったのだが、その後のことをSさんはよく知らない。 

 突然のことに戸惑っていると、驚くまいことか、A君は眼前でふっと消えてしまった。 

 狐につままれたような心持ちでいたが、二日後の晩にかかってきた一本の電話で合点がいった。

 なんでもA君が亡くなったのだという。

 電話をとった家族は詳しいことを何も教えてくれなかったが、おそらくA君が自分の前に姿を現した時間が臨終の時だったのだろう。

 これが「虫の知らせ」というものか。 

 Sさんには初めてのことでもあり、なんとも言えぬ後味の悪さが残った。

 帰省を終えて大学に戻り、さして興味のない「民俗史学概論」の講義を受講していた際、Sさんは戦慄して目の前が真っ白になったという。 

 配布された資料を瞥見すると、なんでも地方では双子が出生することを不吉と考え、それなりに格のある家で双子が生まれた場合、それを隠してどちらか一方を親類の家――たとえば祖父母やおじの家――で養育する例が見られたとある。そのような差別的な風習が、案外最近まで残っていたというのだ。

 Sさんの中で、点と点が線で繋がった。 

 なぜ同じ集落で同い年のA君と仲良くなる機会がなかったのか。なぜA君の近況や死因を家族の誰もが自分には教えてくれなかったのか。そしてなぜ、A君が今際の際に自分の前に現れたのか。

「うめごどてれんこしょってがら、というのはね、今風に言うと『上手いこと入れ替わりやがって』なんて意味なんですよ」 

 と語るSさんは、今となっては事情は知れないが「A君には恨まれていたようだ。自分は極楽には行けないな」と言って茶をすすった。

(了)

著者紹介

吉田悠軌 (よしだ・ゆうき)

怪談サークルとうもろこしの会会長。怪談の収集・語りとオカルト全般を研究。著書に『オカルト探偵ヨシダの実話怪談』シリーズ(岩崎書店)、『一生忘れない怖い話の語り方』(KADOKAWA)、「恐怖実話」シリーズ『怪の残滓』『怪の残響』『怪の残像』『怪の手形』『怪の足跡』(以上、竹書房)、「怖いうわさ ぼくらの都市伝説」シリーズ(教育画劇)、『うわさの怪談』(三笠書房)、『日めくり怪談』(集英社)、『禁足地巡礼』(扶桑社)など、共著に『実話怪談 犬鳴村』『怪談四十九夜 鬼気』など。月刊ムーで連載中。オカルトスポット探訪雑誌『怪処』発行。文筆業を中心にTV・映画出演、イベント、ポッドキャストなどで活動。

栗原 亨 (くりはら・とおる)

1966 年生まれ。樹海及び廃墟探検家。30 年以上にわたり約1500 箇所の廃墟を巡り、青木ヶ原樹海にて70 体以上の自殺遺体を発見。著書に『廃墟の歩き方』『廃墟の歩き方2』『初めての廃墟の歩き方』『樹海の歩き方』(以上、イースト・プレス)、『新・廃墟の歩き方』(二見書房)、『廃墟紀行』(マガジンランド)、『ウソかマコトか⁉ 恐怖の樹海都市伝説』(秋田書店)、共著に『実話怪談 樹海村』(竹書房)がある。近年はテクニカルダイバーの資格を取得し、海中の廃墟である沈船を30 隻以上探索。

久田樹生 (ひさだ・たつき) 

作家。実録怪異ルポ、映画、テレビ、ラジオなどのノベライズ、他にて活動中。近著は『犬鳴村〈小説版〉』『樹海村〈小説版〉』に続く『牛首村〈小説版〉』。主な著書に『南の鬼談 九州四県怪奇巡霊 』『「超」怖い話 死人』など、その他共著に『社畜怪談』『呪術怪談』、冬の「超」怖い話シリーズなど多数。

神沼三平太 (かみぬま・さんぺいた)

神奈川県茅ヶ崎市出身。O型。髭坊主眼鏡の巨漢。大学や専門学校で非常勤講師として教鞭を取る一方で、怪異体験を幅広く蒐集する怪談おじさん。主な著書に『湘南怪談』『実話怪談 吐気草』ほか草シリーズ、共著に『実話怪談 玄室』『追悼奇譚禊萩』『恐怖箱 煉獄百物語』ほか「恐怖箱百式」シリーズなど多数。

しのはら史絵 (しのはら・しえ)

脚本家、怪談蒐集家。映像、ラジオドラマのシナリオを手がける傍ら、怪談会やイベントも主催。主な著者に『弔い怪談 葬歌』、共著に『怪談四十九夜 地獄蝶』 『高崎怪談会 東国百鬼譚』『趣魅怪談~特殊趣味人が遭遇した21の怪異』『異職怪談~特殊職業人が遭遇した26の怪異』『お化け屋敷で本当にあった怖い話』。

営業のK (えいぎょうのけー)

石川県金沢市出身。職業は会社員( 営業職)。幼少期から数多の怪奇現象に遭遇し、そこから現在に至るまでに体験した恐怖事件、及び周囲で発生した怪奇現象を綴ることをライフワークとしている。主な著書に『闇塗怪談 祓エナイ恐怖』ほか「闇塗怪談」シリーズ、共著に『呪術怪談』『実録怪談最恐事故物件』など。

丸太町小川 (まるたまち・おがわ)

京都と九州某所を拠点にフィールド・レコーディングや音響構成に取り組む傍ら、ヴァナキュラーな怪異を求めて身近の奇談・怪談を収集中。参加共著に『実録怪談 最恐事故物件』『呪術怪談』『怪談最恐戦2021』。

音隣宗二 (おとなり・そうじ)

東京都出身。趣味は映画鑑賞。平均身長。平均体重。最近追いかけてきたアニメ作品が完結を迎え、ロス状態に突入中。参加共著に『呪術怪談』『鬼怪談 現代実話異録』『実話怪談 樹海村』『怪談最恐戦2020』。

青葉入鹿 (あおば・いるか)

静岡県出身。行政書士として働く傍ら出会った人に身近な怪異を聞いてまわる。好物は民間伝承や土着信仰に潜んでいる縁起の悪い話。参加共著に『実録怪談 最恐事故物件』。

影絵草子 (かげえぞうし)

関東在住、幼少期より怪談を収集し、数にして千以上。主に人間の狂気や情念が絡んだ怪談を好む。参加共著に『実録怪談 最恐事故物件』『鬼怪談 現代実話異録』『怪談最恐戦2020』。

シリーズ好評既刊



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