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北陸最恐県、福井県の怖い話!三石メガネ『福井怪談』リリース

福井県出身在住の著者が地元の恐怖譚、怪奇事件を総力取材したご当地実話怪談集。

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【福井豪雨】浸水で現れた幻の錦鯉
【足羽山】味覚に異常が出る墓地
【三方五湖】甘美な悪夢に誘う花
【東尋坊】救いの電話の怪
…ほか、北陸の戦慄怪談38話+福井心霊スポット5選!

あらすじ・内容

福井県出身在住の著者が地元の恐怖譚、怪奇事件を総力取材したご当地実話怪談集が登場!
平成16年、嶺北地方を襲った豪雨災害。床上浸水した部屋を泳ぐ幻の錦鯉の正体は…「福井豪雨」
福井市の足羽山に行った帰りに感じた味覚の異常。息をしているだけで妙な味がするというのだが…「グルメ」
越前市の中学校で連続する謎の飛び降り自殺未遂。事件発生にはある法則が…「そういう日」
祖母からあの家とは関わってはいけないと言われている血筋の同級生。ある日恐ろしい事件が…福井最凶の憑き物筋・牛蒡種の呪「髪を舐める」

……ほか、北陸最恐との呼び声も高い福井の本当にあった怖い話38話!

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著者コメント

福井県、ご存じですか?

雄島に東尋坊、三方五湖。
このコロナ禍では遠出も難しいですが、紙越しの恐怖旅行はいかがでしょう。
本書では福井出身・在住である私が、地元の知られざる怪談奇談をご紹介しております。
自殺の名所での体験談や神の島の怪異など、様々な『福井の裏側』を一冊にまとめました。
試し読みでは、福井豪雨の際に友人が捕まえようとしたアレについて書いております。

あなたの心に少しでも『福井』を残せますように。

試し読み 1話

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「福井豪雨」

 平成16年7月18日、福井県嶺北地方に未曽有の豪雨災害が起こった。
 床上・床下浸水した家屋は1万3600件を超えたという。
 このとき私は学生で、幸い自宅は無事だったのだが、被害を受けた友人もちらほらといたのを覚えている。
 同じクラスだったイシヤマさんもそのひとりだ。

「私のうちさあ、部屋がプールみたいになったよ」
 当時、教室で彼女は笑いながら言った。色白のミドルボブで。おっとりとしているが肝は据わっている。
 同じ福井県民の私が驚くほど方言がきついのだが、ここではわかりやすく書かせていただく。
「膝の上まで水が来てさ。うちのお母さんも大はしゃぎで」
 彼女の家は河《か》和田《わだ》にある。その一階が床上浸水したらしい。
「そしたらすっごい綺麗な鯉が来たのよ」
 どこかで飼われていた錦鯉が、自宅のリビングに迷い込んだらしい。
 迷い犬や迷い猫ならば聞いたことがあるが、迷い鯉の話を聞くのは初めてだ。
「お母さんと一緒に捕まえようかってことになって」
 高く売れそうだから、という理由らしい。
 災害時にそんなことを考えている場合ではないと思うのだが、彼女はそういう子だ。
「それなりに大きいんだけど捕まらないのよ」
 彼女曰く、両足のあいだをからかうようにして泳ぎ抜けていったらしい。
 そのまま翻弄された挙句、ゆらゆらと逃げていった。
「部屋の端に、適当に作った仏壇みたいなのがあるのね。イヌの」
 イヌとは彼女の飼っていた猫の名前だ。ずいぶんと前に天寿を全うしている。
 キャビネットの上に、赤い座布団に乗せた猫のぬいぐるみを置いていた。
 ぬいぐるみの首には数珠をかけ、気が向いたときに手を合わせていたとのことだ。
「その仏壇みたいなとこにめり込んで、どっか行っちゃった」
 キャビネットには鯉の入り込めるスペースはないらしい。
 引き出しに向かって垂直に突っ込み、吸い込まれるようにしていなくなった。
「それって、逃げられたんじゃなくて消えたんじゃあ……」
 しかし彼女にとっては大したことではないらしい。
 高そうな錦鯉を捕まえられなかったと、そればかり悔しがっていた。

(了)

🎬人気怪談師が収録話を朗読!

https://youtu.be/5MrNmo_cOoM

8/29 18時公開予定

著者紹介

三石メガネ Megane Mitsuishi

福井生まれの福井育ち。二年ほど他県で暮らすも、福井が好きすぎて帰郷した。
『だから君だけ、目を閉じて~彼女の遺書と君の嘘~』『猫はよみがえる』の原案ほか、『皆様には【人権】がございません』『小悪魔教師サイコ』をe-Storyアプリpeepにて連載。
共著に『禁足怪談 野晒し村』『街角怪談 噂箱』など。
実は裸眼。