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怪談マンスリーコンテスト・2月結果発表


最恐賞「強制フルコース」菊池菊千代

   
佳作「さがしもの」ミケとーちゃん
  「蜜柑」雪鳴月彦
  「食感」二代目朧豆腐


▼最恐賞作品はコチラから読むことができます


総評コメント


今月のお題は「食べ物」。

素材そのものから、料理、菓子、得体の知れない食材まで様々な食怪談が集まりました。中でも、果物と菓子に纏わる話が多かったでしょうか。

最恐賞「強制フルコース」(菊池菊千代)は、いじめで食べさせた“ある物”から始まる恐怖譚。意外性に富んだ展開に引き込まれました。

佳作は戦時の食糧不足だった頃の切ない幽霊譚「さがしもの」(ミケとーちゃん)、生霊か思念か、母と息子の不思議な奇譚「蜜柑」(雪成月彦)、ある地方の変わった葬儀の風習に纏わる怪異譚「食感」(二代目朧豆腐)の3作を選出。いずれも文体に安定感があり、それぞれ独自の持ち味が光る作品でした。

最終候補作品には、「ひとでなし」(井川林檎)、「お菓子の正体」(渡戸章五)、「無益な殺生」(狼少年源)、「特別な配給品」(鬼志仁)、「センゾウッ!」(卯ちり)、「おはぎ」(おがぴー)の6作品が残りました。リアリティは高いのだけれど怖さがやや弱い、怖いのだけれど、少々できすぎている――そのどちらかの作品が多く、両者のバランスが選考のカギとなりました。

また、今回は食べ物ということで「旬」のある素材が扱われる話が多かったのですが、どうもそれがお話の季節と合っていない作品がいくつも見受けられました。せっかくのお話もそうした隙を作ってしまうと、実話としての信憑性・信頼性が揺らぐことになりますから、十分に配慮していただきたいと思います。

大抵のお話は、取材した時点ではおおまかなあらすじ、事実の羅列になると思います。

例えば、「夏に、友人同士で山奥の廃墟に肝試しに行き、怖い体験をした」という話を聞いた場合、どれだけ怖かったかというのが話の焦点で、体験者も細かいところまでは語れない(覚えていない)場合が多いことでしょう。それを実話怪談として書き起こす際に、書き手はいかに読者をその話の舞台に引っ張り込むか――リアルに想像させるかということに工夫をこらさねばなりません。

そこで想像力を働かせ、夏の山の空気はどんな匂いかな、夜空の様子はどうだったかな……と想像による描写を加えて、これから起こる事件の舞台を整える作業が必要になってきます。その上で、取材した実話をできるだけリアルに再現していくことで、読者に恐怖の追体験をさせることができるわけです。この舞台づくりの段階で、「なんとなく怖そうな、いい感じの雰囲気」を適当に作ってしまっている作品が目立ちます。

深夜丑三つ時のはずなのに、「漆黒の夜空に赤い満月がゆっくりと上ってきた」と書いてしまったら、それは嘘になってしまいます。満月の南中時刻からしてあり得ないからです。春の話なのに「咲き乱れる彼岸花がゆるりと風に揺れて」しまったり、夏に「黄昏空を、雁の群れが何かに追い立てられるように飛んで」いってはいけないのです。雰囲気を優先して適当に盛り上げてしまうと、せっかくのお話まで嘘っぽくなってしまうので十分に注意してください。


さて、次回のお題は「卒業」に纏わる怖い話。学校の卒業式のみならず、悪癖からの卒業、トラウマからの卒業、精神的なあらゆる面での卒業も考えられるかと思います。皆様の卒業怪談、楽しみにお待ちしております!

3月期・募集概要


お題:卒業に纏わる怖い話

原稿:1,000字以内の、未発表の実話怪談。
締切:2020年3月20日24時
結果発表:2020年3月29日
☆最恐賞1名:Amazonギフト3000円を贈呈。※後日、文庫化のチャンスあり!
佳作3名:ご希望の弊社恐怖文庫1冊、贈呈。

応募はこちらから▼


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