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【第53話】ありのままの痛み

注:この物語は、私の身に起きた「完全実話」ですが、
プライバシーに配慮し、登場人物や企業名等は原則仮名です

(前回より続き)

本当の事を言うと、この当時の自分の感情をまざまざと思い出すと、正直、胸がギュッとなる。

この時代の自分は、ここまでの人生の中で、最も苦しみを味わった時期であった。

この後の様々な過程を経て、今ではこの辛かった経験すら、無くてはならない、大切な経験だったことと理解しているため、この頃を思い出しても、それによって今が苦しくなったり、落ち込んだりはしないが、

当時の感情を蘇らせると、やはりそれは、辛い思い出であることは間違いない。

一つには、目の前に突きつけられた、現実的な「お金」の問題があった。

会社の経営もそうだが、生活する金がない。

まだ幼い我が子の面倒を一人で見ている妻には、どうしても心配させたくない。

だから、妻には内緒で貯金を切り崩し、数ヶ月間は何とか騙し騙しやっていたが、この頃にはついに貯金もショート。

借金生活が始まった。

以前までの自分なら、見向きもしなかった宝くじや、スピードくじを買いだした。

今思えば、かなり重症患者だった

当選金額を想定して、借金返済や現状打開の皮算用を本気でしていた。

宝くじが悪いという訳ではない。

夢を見てワクワクしたり、楽しんだりする事は決して悪い事ではない。

ただ、この時の私は娯楽としてではなく、何かに救いを求め、神頼みのように買っていた。

それなのに、そういう自分の現実を無意識に「認めまい」とする自分がいた。

「何かの間違いで、今は一時的にこうなっているんだ。

これは本当の俺じゃない。

だから、何らかの方法で回復できるんだ。

借金だって、宝くじだって一時的なものにすぎない。

手違いを修正するため、今は仕方なくやってるだけなんだ」と。

しかし、どれだけ自分に言い聞かせても、現実的に月末になれば支払があり、それを賄うだけの収入は無い。

生活費も、減らせるものは減らさなければいけない。

いよいよ生活を切り詰めなくてはならず、妻にも話さざるをえなくなった。

先行投資でお金がかかり、利益があまり出てないため、経営が若干厳しい、と少しずつ妻にも現状を明かしていった。

妻も何となく、調子がよくないのでは、という状況を察知し始めたのか、不安を表現する言葉が目立ち始めた。

家庭の中にまで、どことなく、不穏な空気が流れ始めた。

仕事では相変わらず契約が取れず、経営は悪化する一方だったが、それでも瞑想教室には休まず通い続け、自分の心の変化をかなり感じ始めていた

この頃の私は、瞑想教室で習ったアファメーションを唱え続け、瞑想をしまくっていた。

しかし、前回もお伝えした通り、この瞑想で使うアファメーションは、かつて身に付けた、マイナス感情にフタをするような手法ではなく、むしろ自分の心の葛藤に気づいていく手法だった。

この手法の実践を始めて、最初に気づいた自分の変化は、「感情を逃げずに味わう」という効果が現れ出したことだった。

感情に囚われていると次の行動を阻むので、感情を味わうと言っても、本当は、「自分の感情に嘘をつかない」ということが、この手法の目的であって、

実際には、物事をニュートラルに捉えていき、そこで動く自分の感情を客観的に見て、「このように感じる自分がいるな」と分かる事によって気づきを得ていくのだが、

私自身、プラス思考でガチガチの鎧で身を固める習慣が出来上がっていたために、鎧を脱ぎ捨てた後の、“地肌” とのギャップがあまりに強烈で、感情を客観視するなど、とても思う様に出来ないことも多かった

ちなみに、今では真理への正しい理解があるために、苦しいことや嫌なことに直面することがあっても、自分の感情を味わいながらもそれを客観的に眺めつつ、冷静に意識を「今、ここ」に戻すことが、習慣として身についている。

これは、この頃から習慣にして来た長年の瞑想の成果でもあり、同時に、その後の人生の中で身についた、真理への理解が深まったことによることは間違いないだろう。

だからこそ、今では、多くの方に「真理への正しい理解」を得ていただくための様々な情報を発信することが、私の使命だと思っているし、そのようなサービスを提供し続けている。

しかし、この当時の若かりし自分にはまだ、真理への理解も浅く、感情を味わえば味わうほど、その意識に囚われてしまうことが多かった。

ありのままの痛みが、心を襲う

以前は、日常でムカッと来ることに、プラス思考でピッタリとフタをしていたために、自分の剥き出しの感情がそのまま露呈してしまうなど全く無かった。

以前の会社にいた時には、東山さんからも、

「田久保さんはどうしていつも、そんなに悟っていられるんですか?」

なんて言われていた。

しかし、本当は違った。

いや、違っていたことに気づかなかった。

(次回に続く)


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