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【#dbn二次創作大会】 禁酒奥義継承 【ショートコメディ】

dbnはお酒を飲み過ぎだ。明らかにのみすぎだ。

自分でも自覚している。当然人にも言われる。

今日こそは、今日こそは、絶対『禁酒』を成功させてやるんだから…!!

そう言ってみたものの、気が付けばうらぶれた路地裏の飲み屋街で酔客に紛れてレモンサワーをガブ飲みするdbnがいるのであった。

そこへたまたま打ち上げに来ていたエグザイルの下部団体の何がしかの色の黒いグループ達が店員に向かって吼えた。

「レモンサワー五十杯!!」

申し訳なさそうな表情を浮かべながら、店員が頭を下げる。

「実は、レモンサワーは既に品切れでして……」
「なんだとこの野郎! そんな訳あるか!」
「じ……実はあちらの方が……」

店員がそっと指差した方向を見て、何がしかのグループ達は一斉にどよめいた。
カウンターで一人、次々にグラスを空けるその姿はまさに異様としか例えようが無かった。

シャンパンタワーのように積み重ねられたジョッキの山。
髑髏の首飾りのように首回りに重ねられたレモンの首飾り。
良く見てみると顔を赤らめるどころか『パンダ』のように肌は白く青褪め、目の周りだけが黒ずんで見える。

「お……おれ、ビビビ、ビールでいいや!」
「お、俺カシスウーロン!」
「俺、ハイボール! レモン入りで」
「馬鹿! やめろ!」

そんな声をもろともせず、dbnはグラスをターン! と叩きつけるように置いて、店員に向かって指でバッテンを作る。

dbnはそのまま店を出て薄暗くうらぶれた通りを歩く。
イヤホンから流れる「宗右衛門町ブルース」に身を任せるまま歩いていると、ふいに肩を叩かれた。
イヤホンを外して振り返ると、そこにはdbnには見覚えが無く、歯も全く無い仙人のような髭を蓄えた男が立っていた。

浅黒くシワだらけの顔、歳は六十を越えているだろうか。ヨレヨレの黒キャップにはDJ・HONDAのロゴが白マジックで手書きされている。

イヤホンを外し、顔をしかめながらdbnは男に声を掛ける。

「あの……何でしょうか?」
「おう!!百円くれよぉ!!」
「……失礼します」

なんだ、ただの物乞いか……そう思っていると前からやって来た角刈りで小太りの男がdbnを指差し、声を張り上げた。

「その人、物乞いじゃないよ!!」
「なんで……心の声が分かったんですか!?」
「違うよ! 行き詰まった作者の苦肉の策だよ!」
「そ、そうですか……」

小説においてあんまり書いちゃ行けないような理由に納得するしかなかったdbnは老人を振り返る。
すると老人は両手を重ね合わせ、それっぽいオーラを放ちながらこう言った。

「おまえ、本当は禁酒をしたくて、そのストレスで酒に逃げているな」
「そ、そんなことは……」
「分かる。あまりにも分かるぞ」
「何故分かるのですか……」
「そういう物語だからだ」
「分かりました……」

再び作者の都合により納得させられてしまったdbnは「ついて来い」という老人の後をついて歩き出す。
老人は透明のペットボトルに入れられた謎飲料を飲みながら歩いている。

「あ……あの、その中身ってお酒ですか?」
「これはノンアルカクテルの焼酎割だ」
「焼酎でよくないですか?」
「気持ちの問題だ! この方が健康的な気がするからな。おい貴様、名前をなんと言う?」
「はい、私はdbnと申します」
「BCGか、懐かしいな。ハンコ注射ってヤツか」
「いえ、全然違います。dbnです」
「あー、NPOか。昔、世話になったのにすまなかったな」
「もういいです。あの、あなたは何なんですか?」
「俺はな……闇営業の禁酒セーラピストだ」
「闇の……セラピスト?」
「そうだ。"チカラ"があまりにも強すぎるから追放されたんだ」
「どんなチカラなんですか?」
 
すると、老人は遥か遠くの夜空を眺めながら呟いた。

「絶対禁酒奥義……その継承者が俺様って訳さ」
「それ、めちゃくちゃ良い事じゃないですか。何で追放なんか……」
「”チカラ”を使いすぎた結果さ……それで今はこのザマって訳よ」

自動販売機の釣銭口に指を突っ込みながら、老人は寂しそうに笑った。
dbnは最初のうちこそ怪しいと思っていたこの老人に、自身の全禁酒生命を懸けてみることにした。

「先生……禁酒がしたいですっ! お願いします!」
「そんなもん、とっくのとうにお見通しよ」
「……ありがとうございます!」
「そういう……物語だからな」

辿り着いた先はレンタルのコンテナルームだった。所狭しとコンテナが並んでおり、一番奥の角を左に曲がると「禁酒部屋」とスプレー書きされた一台のコンテナが目に飛び込んで来る。

「ここが奥義の間だ。さぁ、入れ」
「先生、お願いします!」

真っ暗なコンテナ内には椅子が一脚のみ置かれており、その他には何も入っていない。
生の鉄の感触が靴底から伝わり、dbnは思わずヤル気を掻き立てられた。

「腕を出せ」
「はい!」

老人は「これより奥義を始める」と言いながら、dbnの両手足に結束バンドを巻きつけ、椅子に座らせた。
さぁ、いよいよ奥義を受ける時が来たぞ! そう意気込んだdbnであったが、老人は椅子に座るdbnに力強く頷くと、そのままコンテナの外へ出て思い切り扉を閉めた。

真っ暗闇の空間。音のない世界。全神経が研ぎ澄まされる。
ここは自己との対話を余儀なくされる環境なのだ、そう思っているとコンテナの外から老人の声が聞こえて来る。

「あー、BCGさんだっけ? あ、B29さんか。明日のこのくらいの時間に迎えに来るから。八千円でいいよ」
「え……は、はい! 分かりました!」

老人の声が消えると静寂が一気にdbnを包み込んだ。
音のない世界になってからおよそ十分。dbnは気が付いた。

「これ……ただの監禁じゃねーか!! 何が"チカラ"だあのオヤジ!!」

二十四時間後。

ガチャリ、と音がして老人が姿を現した。

「よぉNBA!! 気分はどうだい!?」

dbnは怒り心頭と言った声で叫んだ。

「ふざけないで下さい! こんなのただの監禁じゃないですか、警察に訴えてやる!」

すると老人は「甘いな」と呟いてdbnに向かって微笑んだ。

「この二十四時間、WWEは"お酒を呑みたい"と思ってたのか?」
「いえ……ただ、頭に来たのと、ここから出たいって思いだけで……」
「ほら、ちゃっかり成功しちまったじゃねーか。な?」
「た……確かに……お酒の事は考えてなかった」

結束バンドを外しながら、老人はdbnの肩をポン、と叩いた。

「ICBMはもう禁酒に成功したって訳だ。やったな!」
「……し、師匠! ありがとうございます!!」

老人は冷え冷えの缶をdbnに手渡すと、嬉しそうに叫んだ。

「かんぱーーーーーい!!」

dbnも叫んだ。

「かんぱーーーーーい!!」

炭酸が身に滲み、空きっ腹の奥が一気に熱くなる。喉を通る爽快感。
喜びがまるで弾けた泡のように全身を駆け巡り、dbnは安堵と喜びの溜息を「ぷはぁー!」と勢い良く吐いた。
そして、手持ちの缶に目をやった。

『極楽酒場のレモンサワー 激凍ダブルレモン ストロング9%』

dbnは老人の頭を思い切り引っ叩き、心からの叫び声を上げた。

「失敗してんじゃねーか!!」

こうしてdbnの禁酒は今回も無事、失敗したのであった。


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今回はdbnさんのコチラの企画に参加させていただきました。#dbn二次創作大会


ただ小説を書くのも楽しいんですけど、誰かの企画に参加するっていうのも文の有効活用(?)が出来て楽しい。新しい発見もあるし、直近の清世さんの企画も同様。
自由に妄想してすっちゃかめっちゃか書いてしまいましたが、楽しい企画の雰囲気に誘われて書き始めた段階で文もレゲエっぽく踊り出しました。

小説のみならず、dbnさんをテーマに色々な表現がOKなので、是非とも皆さんもチェックして参加してみて!

※僕はロクに絡んだ事がないのに楽しそうだったのでいきなり参加しました。大変失礼いたしました。


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