【エッセイ】大恥ぶっこきました、というおはなし

どうもみなたん!こんばんわなのです!
ボクの名前は「おーたん」です!
みなたん、よろちくなのですっ!
今日は、とーっても楽ちいボクのおはなしをしたくって、その、えっと(もじもじ)頑張っておはなしをしたいので、メモを書いてきたんだけど……えっと、えっと(ガサガサ)あ、どこ?メモが、メモがない!

ああ!

間違ってポーチに本宮ひろ志先生の「俺の空」を入れて持ってきてちまったのです!

ってなんじゃこりゃあああああああああ!!!!

はい、どうも大枝です。何が「おーたん」だよなぁ?
三十七ですよ、ええ。
東海道中膝。うん、関係ないな。

あ、ちなみに俺の空は読んだことないんですけど、雰囲気で言ってみました。

先日ね、あのー、休みだったんで書物もせずガンプラを弄っておったんですわ。
まぁ、たまーに、玉だけに?違うものを弄りつつね、まぁ独身なんでね。
天気もいいし買い物でも行こうかなぁ、なんて思っているとインターフォンが鳴ったんですよ。
セールスかな?と思ったら案の定でした。
細身の出っ歯がね、掛けてるメガネを割って欲しいような笑みを浮かべて立っている訳です。

「こんにちわー、おうちにウォーターサー……」
「あー!ウォーターサーバーの!ああ!どうもどうも!(食い気味に)」
「あれっ、もしかして別の営業来てましたか?スター○○なんですけど」
「来ました来ました!使わせてもらってますよー!(スター○○?全然知らねぇwwwウケルーwww)」
「代理店違いで回っているもので情報共有出来てなかったんですね、すいませんですぅ」
「いえいえー(情報がそもそもねぇけどなwww)」
「では失礼しま……あれ?」
「はい?」

にこやかに僕と詐欺合戦を繰り広げていた出っ歯は眉間に皺を寄せながら、メモ書きを僕に渡してきました。

「なんか玄関のドアに貼ってありましたよ!では、これで」
「はい毎度!って何コレ怖っっっ!!」

ドアに貼り付けられていたメモ。
そこにはめっちゃくちゃ汚い字で謎の文面が書かれていました。

《いつもいつもすいません。》
《想像以上に踏み鳴らしすぎた、声慌ててる》
《ご自由にどうぞ》

あまりに謎すぎるメモ書きに僕は全身に鳥肌が立ちました。
写真にも撮ったので原文をアップしたいくらいですが、怖いのでやめておきますが内容は大体こんな感じです。

踏み鳴らしすぎたって何を!?ええ?まさかうちに進撃の巨人が来たの?うっそー!やだー!
でも、ご自由にどうぞって何を!?
すいませんって事は何か謝意があるのか?でも、誰?

名前は愚か部屋番号すら書かれていないそのメモを手に僕はしばし、困惑していました。
どうしたもんかいのー、と思いながらソッコー管理会社へ相談。
身体は大人!頭脳は子供!迷探偵コンナン(困難)の僕は分かってしまった!

「犯人はこのアパートの住人に違いない!!」※馬鹿でもお分かりになられると思う。

と、鼻くそホジッた人差し指を天に向け、メモ書きの写メと共に報告。

犯人と思しき人物はなんとなくだけど、見当が付いていた。
恐らく、隣人の女だな、と。

普段あまり姿を見かける事はないのだが、夜中にドッタンバッタン足踏みしながらアニメのアテレコの練習を狂ったような大声を出してしているので「すいません」の気持ちを抱いているのがまず第一(あれだけの大声出して申し訳ないと思ってなかったら凄いレベルなの~)。

メモ書きの文字が日本語教室二ヶ月目の生徒くらいヘタだけれど、何となく女性の文字っぽいという事。
※階下は朝からカラオケで「珍島物語」をハングル熱唱する韓国人がいるのだが、そもそも他人に謝るとか以前に人に興味がなさそうなのだ。

逆サイドの隣人は「あら、死んでらっしゃるのかな?」というくらい生活音のしない麻生太郎が住んでいるが、全く困らされた覚えも無い。

じゃあ、あの女じゃねーか!!

そう思って管理会社にその話をすると、それとなく聞いてみるとの事。
以前、別の部屋で電気泥棒&電源破壊事件があった時、僕の所にも電話が掛かって来た事をふと思い出した。

しばらくメモ書きの内容とにらめっこしてみたけれど、全然意味は分からなかった。
すいません、は普段からうるせー音を立ててすいませんで分かる。
踏み鳴らしすぎた?は音を出しすぎた?でも音なんか全然してなかったけどなぁ……
ご自由にどうぞ、は……誘ってんのか?これはフリーファックの意味なのだろうか……僕の部屋の隣には相当なオサセが住んでいるのだろうか?
うーん……やっぱりフリーファックの誘いなのかなぁ……

と悩むこと三日後。管理会社の担当のオジサンから電話があった。

「もしもし? あの意味分かりましたか?」
「いやー、やはり隣人さんでしたねぇ」
「そうですかー、いやー、怖かったー」
「いつも大きな音を出してすいません、というのがまず一番でしたね」
「そうなんですよー、いっつも夜中騒がしいんですよねープンプン!(糞糞)」
「でー、あのー……ご自由にどうぞっていう事なんですね」
「あの、それは何がですか?タケシ怖いんですけど!ちょっと、しっかり調べてくれました!?こっちは迷惑掛けられて、恐怖心まで植え付けられて、夜もガッツリ八時間寝ているんですからね!?アー!マチガッタァ!寝たいんですからね!」

そう訴えてみたものの、電話の向こうの担当オジサンがめっちゃくちゃ何かを言い淀んでいる。
いやー、そのー、あのー、とかずっと口ごもっているのだ。
迷惑と恐怖を与えられたのはこっちぞ!
おんしゃあ!いい加減しゃべらんかい!
と思ったので追求してみた。

「ハッキリ言って下さって結構ですから!ご自由に、とは何なのですか!?セックスしに来いとでも言っているんでしょう!?ハッ!少子!いや、笑止!」
「あのー……ご自由にっていうのはですね、男性である大枝さんのですね」
「はぁ、私の?」

そして、担当オジサンは気の抜けたような声で真実を告げた。

「自慰……オナニーですわね」
「はぁ?」

僕は一瞬、ワケがわからないよ!状態になったのだけれど、メモが貼られた当日の朝方をふと思い出して血の気が一気に引いたのだった。
血の気が引き過ぎて、スープを作ろうとして水を溜めていた片手鍋をマジでひっくり返した。

つまり、加害者は僕だったのだ。

当日の朝方、お休みだった僕はうつろうつろ目を覚ますと、いつもは世の中の社会情勢や社会改革のことを無意識にでも考えてしまうのだが、その日はそんなことよりも真っ先に自分を磨くことをパッと思いついてしまったのだ。

「そういえばオラ、昨日も一昨日も磨いてなかったなぁ!いっけねぇいっけねぇ!よしっ!いっちょシコってみっか!」

とスマホを弄り、ムスコを弄り始めたのだ。
しかし、眼前にはデジタル化した広大な母なる海。
まぁ色々探すうちにヒートアップしてきて自然とボリュームも上がって来てしまったのである。
鳥がちゅんちゅん、と鳴き始めている朝に僕の部屋では喘ぎ声がこだましていた。
しかも物があまりなく、天井もバカ高いので音がめちゃくちゃ回るのだ。

男軍 VS 女軍

という図式を頭の中で思い浮かべ、僕はすっかり白熱していた。

「よーし!もっとエロい表情を出させるんだ!あっ、この!女軍は簡単に喘いでんじゃないよ!それじゃ男軍に勝てないよ!?あー、この男軍もガシガシやっちゃダメよ~、そのアングルでぇ!?これじゃ女軍に不戦敗だよ、君!ヘッタクソだなぁおい!」

気付けばブツブツ文句を言いながらスマホを弄っていた。
それなりにデカイ音量でアンアン鳴らしていたもんだから、当然隣の部屋からガンガン壁を蹴られたりしているのにも気付いていた。

「うるせー!こっちはデッドオアライブなんだよ!」

そんな心持でスマホを弄っていたのですっかり抗議を受けていたことなんか忘れていたのだ。

つ、ま、り

「いつも煩くしてすいません。けど、今朝はあなたのオナニーが煩かったので蹴ったりして抗議しました。私も普段煩くしているので、お相子ってことで。ご自由にどうぞ」

の「ご自由にどうぞ」

だったのだ。

何がフリーファックだ!
何が「セックスしに来いとでも言っているんでしょう!?ハッ!少子!」だ!

「テメーのオナニーがうるせー」

という事だったんじゃないか!ああああ!恥ずかしい!!!!!!

僕はそれに気付くと

「ふへっ……すいませんねっ、ふふっ、あざ、ありざとうまっす」

とヘラヘラ噛みながら電話を切った。
そして、猛烈に顔を赤くして「ひゃー!」とその場の激狭キッチンに座り込んだ。
管理会社の登録名は今頃「しこ太郎」になったりしているのかしら?
まさにシコ名じゃないの!あぁ!若手女性社員に
「あー、072号のお客さん?」とか言われて爆笑されていたらどうしよう!
あー!お隣さんともう顔合わせられないっ!お婿にいけないっ!
いやああああああああああああああ!!!!


と、そんな訳で今はブルートゥースイヤホンを用いるようになりました。
ダブルプレイの時は相手の声の大きさを気に掛けたりしましたがね、いやぁ、シングルプレイにこんな落とし穴があったとはね!
ハッハッハッハッハッ!

あー死にたい。

なので、みなたんも音量には注意してしようねっ!!

※冒頭の「おーたん」はオナニーのおーたん、という事で伏線回収です(無理かな)。

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