【小説】 誰が為に、 【ショートショート】
三十五歳を過ぎた頃から、人と関わりを持つことが極端に億劫に感じるようになった。
一円にもならない同僚達との世間話、聞くだけで実感のない友人達の平凡な生活の話、時折電話が掛かってくる母親から聞かされる愚痴の数々。
それら全てに興味のあるフリはいつの間にか限界を越え、俺の心はその形を少しずつ少しずつ、溶かして行った。
産業医に相談したら「鬱病ですね」と言われ、心の麻痺の原因かもしれないと思い始めていた営業の仕事を辞めることにした。
それから友人達の連絡先を削除して、誰