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やりたいことがないと嘆く新人にリーダーが伝えるべきhow to

若いメンバーが多いとキャリアの相談を受ける機会がよくあります。情報過多の現代では隣の芝生が青く見えるのは当然とはいえ、部下から「飽きた」「嫌だ」「辞めたい」「でも何がしたいかわからない」ということばかり聞いてはフォローしているリーダーは疲れるでしょう。

今日はそんな人向けに、最近相談に乗ったS君を例に展開します。

【STEP1】メンバーの属性理解

■対象者のハードデータと過去体験から価値観を把握
S君は20代半ばの男性。
地方出身。両親は地元で小さなレストランを経営している。
学生時代は野球に打ち込み、リーダーとして目立つ存在だった。
関東の有名私大を卒業後、なんとなく就活をして大手証券会社に入社。
同期の中では上位の成績を収めているが、すごく目立つわけでもない。

→属性理解は非常に重要です。上記は簡単に記載していますが、価値観や経験を確認することで、この後のアドバイスHOW TOに大きく影響します。

■現状の状況、悩み ※すべてS君の主観です。
・経営者になりたいが、特に何がやりたいなどは決まっていない
・父親含め、親戚が飲食業の経営をしている人がほとんどで、自分も経営者が向いていると漠然と感じている
・昔からリーダーをしていて、人を引っ張ることは得意だと自負している
・金銭欲求が強く、自分よりも稼いでいる友人を見ると、この会社では未来がないと思っている
・自分の現在の給料は500万前後。先輩は30代前半で最年少課長になったが1200万円くらい。他の業界の方が水準が高いのではないか。
・証券の商品に疑問を感じていて、お客を騙している部分が多く、本当にお客のためになるようなサービスを提案したいと思っている
・自分の周りの経営者は自分のやりたいことをやっていて、稼いでいて、何より楽しそうにしている。そんな経営者になりたい。

【STEP2】とりあえず聞く。とりあえず共感する。

経験のある方は、上記を読んだだけでこう思います。
「よくあるやつだな」「考えが甘い」「今の君には無理」
だからこそ、この時点でめっちゃ言いたいはずです。
でも、ここでマウントをとりに行ったらおしまいです。頭の固い上司に格付決定!!

「どんな経営者になりたいの?」
「一番重要なのはなんの?」
「どうしてそう思うの?」
「めっちゃわかる!」

このあたりを繰り返すと、相手が話していいかもって雰囲気になって、本音が出てきます。相談に乗って欲しいという人も、相談者に自分の全てをオープンにしてくれる人はまれです。
「こんなこと言ったら引かれるかな、、」「馬鹿だと思われるかな、、」「誰かに話されてしまうかな、、」「そんなこと聞かれてもわからないし、とりあえず無難なことを言っておこう」
こういう状態になっていると、相手からのアウトプットに対して、正確な把握はできないので、この後のアドバイスは暖簾に腕押しのようなことになります。

【STEP3】なんとなく元気になるヒントをプレゼント

今更ながら前提ですが、こういう相談者は、本当にすぐに何か行動を起こしたいわけではないです。起業するにせよ、転職するにせよ、辞めることにリスクを感じていて動けないので、とりあえず聞いて欲しい、聞いてもらってすっきりしたい、という状況です。
そもそも、決断できるレベルの人は相談などしてきません。
そんな奴に時間使えるか!ってのは置いといてください。聞き流すこともできますが、本人にとって、困ったらこの人に相談しようって信頼を得れさえすれば、本当に重要な相談を受ける人にランクインされます。上司にとってはそれは非常に大事!
よって、こういう相談のゴールは「この人に相談してよかった」と思ってもらうことです。そして、そのために必要なのはしっかり聞くこともそうですが、暗闇に光が少しだけ指すような感覚を与えることです。

Ⅰ.やりたいことの整理方法
転職や起業に夢を見ている人がほとんどです。環境さえ変えれば、生まれ変わると勘違いしています。そういう人に無理だと、現実をみなよ、と言っても伝わらないので、図にしてあげます。

キャリアイメージ1

キャリアイメージ

※あくまでもS君の重要な項目です。

あまりにも劣悪な環境にいるなら別ですが、大体の人は、現職のポイントの高さを実感していません。自分の年収と能力が一致しているのか、マーケット的に平均はどこなのか。今ある制度は特別なのか、普通なのか。自分が知らないビジネスモデルはどんなものがあるのか。
よって、現職を低くつけて、起業・転職を高くつけます。でも、本当にそれが事実なら、今の会社に人が残るはずないよねってことで理解します。
合計ポイント数を増やすために、もしかしたら現職のポイントはもっと高いのではないかって感じ出したらしめたもの。勝手に現職の魅力を探し出してくれまます。

「経営者は自分の給料を決めるところから始まるけど、お客様のことを考えたプロダクトへの投資、頑張ってくれたメンバーへの還元、よりも自分の給料を高くすることを優先する?」
「お金を稼ぐと言う観点なら、経営者を選ばなくてもデイトレーダーやユーチューバーになる方法だってあるけど、それって合コンで女の子に安定的な職業とは思われないことの方が多いけどいいの?S君的に。」
「大企業にいてみんなでワークシェアしているから生産性が高く、色んな保障や制度がある。これを起業した初期は全部自分でやらないといけない。その覚悟はあるの?」
「最初に作ったプロダクトなんかバグだらけで、お客様にクレームもらいまくるけど、自分の作るものはそんなはずはないって言いきれるの?作れるの?」

全てのものを叶えることは当然できると思います。しかし、S君にとってはすぐには無理かもしれないってことを気づかせるのも重要です。

▼野球をやっていたS君のためのトーク
「野球で言ったら、走行守が揃った最高のプレイヤーになりたいってことだと思うけど、野球初心者が最初から全部できるようになるってのは難しいよね。何とかチームメンバーに選ばれるために、足を活かすか、バッティングを鍛えるか、守備を鍛えるか、っていう強みを考えるでしょ。どれかが誰よりも勝っていれば、何かで試合に使ってもらえる。試合に出たら、絶対に結果を出す。それでレギュラーになっていけば、当然残りの力もバランスよくできることが求められる。そうやっていくことで、エース、4番、キャプテンっていうポジションになったり(タイトル・ブランド)、観客を喜ばせたり(お客様主体のサービス)、キャーキャー言われたり(報酬≒収入)、もしかしたらスポンサーが着いたりする(安定)。つまりは繋がっているよね。もしかしたら、今の不満はそういう理想に届いていない自分への苛立ちじゃない?仮に君が野球やっているときに、野球始めたばかりの後輩から『(S君の言うような理由で)今つまらないからサッカー部に行こうと思います』って言われたらどう?」
→自分の経験や過去慣性から納得させ、親スタンスで信頼を得る。

Ⅱ.「やってみる」ということのハードルを下げる
起業、転職するにせよ、今の仕事を続けるにせよ、重要なのは一旦決めたら後ろを振り返らずに全力でやるってことだけです。
よって、できる人ほど決断が早いと言われるわけですが、大概の人は、その決断ができずに、あっちがいいか、こっちがいいかと悩みます。また、決めた後にも、いややっぱりあっちだったかな~、と振り返ります。
この状態が続くことが何より不健全。
上司というのはS君のようなメンバーの悩みは超えてきているのでさも簡単に「決めるだけやん!」と言います。でも、進んだことのないメンバーにとっては決めることが怖いんですよね。


▼「全力で回り道することで経験が得られる」トーク
「例えば、東京から大阪を歩いて目指すとして、マップがなければ、自分の進んでいる道が大阪に近づいているとわかるのは非常に難しい。だから、大体の人は、新宿に行ってみたり、中野区に行ってみたり、渋谷区に戻ったりする。自分の道が正解なのか不安だから、都度足を止め、周りの人を見て流される。でも、近くをぐるぐるしているだけでは景色が変わらず、つまり新たな情報は得られず、やっぱりなかなか進まない(aの状態)。
決める人は、自分の道を決めたら突き進むのみ。振り返らない。決めた方向に全力で進むので、早く景色が変わり、新たな情報がたくさん得られる。たとえ、その道が間違えていたとしても、こっちは間違えている、ということがわかることが重要。全力で進んだ分、早く間違いに気づける。あとは、全力で逆に向かうのみ。時間をロスしているようだが、全力で進んでいる時間は、立ち止まったり引き換えしたりしている人と実はそう変わらない。むしろ進んだ距離だけ情報や経験が増えている(bの状態)。
これが車だとどうだろう?悩んだり、止まったり、行き先を変えたり、バックしたり、、、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものだ。アクセルを踏み続けるよりも疲労は早い。退職するにしても、続けるにしても、早く決めて、決めたら全力ってのが何よりも一番良い。決断し、全力で進むことはプラスしかないよ!」
→肯定も否定もせず、応援スタンスで勇気を与える。

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▼「情報が多いと決断しやすいよね」トーク
「君がなかなか決断できない理由のひとつに情報の足りなさがある。一部の情報と思い込みで決めようとしていることに自分でも気づいているから、その状態で決断するのが怖いのだと思う。競合他社のビジネスモデルや、平均年収や、経営者の辛さや、自社の制度のあり難さなど、情報を知っていれば、その中で取捨選択ができる。つまり、自分にとっての正解選択の確率を上げられる。
例えるなら、暗闇の山道を歩くようなものだ。どんなトラップがあるのかわからない。下手したら大怪我するかもしれない。だったらとりあえず動かない方法をとろうとする。怪我はしないだろう。でも、そこから見える景色(情報)は一生変わらない。
経営者になった方がいいのかな?続けたほうがいいのかな?他に道はあるのかな?と同じ場所で考えているより、まずは情報を探すところからやってみれば。一緒に考えよう。」
→肯定も否定もせず、味方スタンスでフォローする。

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【STEP4】永遠に繰り返す

前述しましたが、これは決断できないメンバーを持っている上司向けです。よって、決断できない人は、結局なかなか決断しません。上記3STEPを進んだところで、「なんか頑張ろうと思えました!」「●●さん、キャリアで相談があります」というループを繰り返します。
決まられる人は勝手に決めます。決められない部下を持ったら、永遠に付き合ってあげて下さい。

【STEP5】ループから抜け出す

これを読んでいるあなたが部下からの悩みをずっと聞いて上げられる人であれば、STEP4までを繰り返していると、その成長過程において、部下はちゃんと正しい情報と正しい選択ができるようになります。
そのときは、余計な情報やヒントなしで、部下の決断を応援してあげるだけではないでしょうか。
その時に部下が、起業か、転職か、継続か、どういう選択をするかはわからないですが、そこに絶対解はないので、背中を押してあげましょう。

終わり。


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