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ごもっともデス(Death)

「死んでいるヒト」に見えたので、
料理の手が止まったのよ。

血も流れていないし、
気持や涙どころか、
被害者の顔さえ、ハッキリしないのよ。
でも、ただのネギよね・・・。



誰かの声がする

本当に、ただのネギなの?
ネギの気持ちは、確かめたの?
ネギの考えを、聞いたことあるの?



そう言えば、
ネギは何か言っていた、
わたしに、何か伝えようとしていた。

でも、意味がわからなかった。
「ネギ語」だったから。

分かろうとも、しなかった。
だって、ネギだもの。

ネギからの投げかけは「そらした」
また、いつものことだと「流した」

上手に合わせていれば、
ネギは機嫌がいいと思っていた。

ネギから、
わたしの本音を問われた時は、

「ごもっともです」と、
言葉を料理して関わりを殺した。


ごもっとも デス は、

ごもっとも Death



わたしは、
「相手の熱の逃し方」
「表面だけ合わせる、隠れ方」
さまざま料理法をおぼえていった。

問いかけは、切り刻めば、
わたしに影響を及ぼさない。

わたしは、楽しくなった。
料理が上手くなったと思っていた。


料理がずいぶん上達した頃、
何かが、微妙に変化してきた。

はじめは気づかなかったけれど、
ネギと向き合わなくなってから、
ネギの顔が「のっぺり」として見えた。
顔の表情は消えて見えた。

でも、それは、
ネギのせいだと思っていた。


ネギとは、
いつしか友達ではなくなっていた。
自分が生きるための、
切り刻んで食べる、素材になった。


楽しかった料理は、
楽しくなくなっていた。





今日もわたしは、
ネギを、切り刻み、料理している。

わたしが殺しているの?
まさか、わたしは良いヒトよ。
殺人なんてするわけがない。
料理をしているだけよ。


誰かの声がする

それでいいの?
対話が怖いの?

不味い香り、漂わないの?
その料理、美味しいの?


ごもっとも デス(Death)



でも「そういうのは」
聞きたくないの、
わたしの内側には、
何も入ってこなくていいの。

わたしが、好きか、嫌いか、
体感が全てなの。

わたしは悪くないわ。
だって一生懸命やっているもの。


化粧だってしなければいけないの、

毎日、顔を作らないといけないのよ。




ほら、そんなやり取りをしているから、
今日は、顔の調子が悪いわ。

目の前の鏡を見ても、
自分の顔が、よ〜く見えないじゃない。

今日は、何だか、
ネギみたいじゃない・・・。

ねぇ、
鏡に映るあなた・・・、誰?

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