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フェンスを 撃ち抜く

コロナ禍、無観客のオリンピックでは、
もちろん競技場には入れない。

競技場どころか、
手前に「入ってはいけないゾーン」があり、
そのエリアは、勢力範囲を増している。

周囲数キロを高さ3メートルのフェンスが囲み、
20メートルおきの警備員、パトカー。

観客どころか、観光客も、
ヤジ馬どころか、ノラ猫すらも、
入れまいとする。

フェンスは、
「入るな!」だけでなく、
「匂いさえ嗅ぐな!」という面がまえで、

何かを諦めさせようとしている。


もちろん忍び込む気は無い。

でも何だろう?・・・この違和感は。

「今」だけでなく、
「未来」をも遮断するような空気を出すフェンスを前に、

いそいそと引き返し、
ただ家で自粛するのは何か違う。

感じることや、考えることを、
簡単に引き揚げてはいけない。

フェンスに一撃を喰らわせねば。

わたしは写真を撮った。
いや、撮ったというのは正確ではない。

その状態を、ただ記録したとか、
ましてや「記念に納めさせていただいた」のではない。


わたしは勝手にゴルゴ13になっていた。
カメラを銃にかえ、
銃撃手が対象を射抜くように、

シャッターを、撃ち放ってやった。



撃ったけど、
もちろんフェンスは、ビクともしない。

真夏の太陽が、弾を弾き返すかのように照り返し、
蝉が、冷やかすように鳴いていた。



でも頭の中で、射撃音は鳴った。
蝉の声は、確かに一瞬止まった。

放たれた弾は、
第一防御壁:フェンスを貫通、

その先の、
第二波防御壁:怪物のような、奥の高い壁まで届いた。

今夜お前の岩肌を、
人類は最速でよじ登るだろう。


わたしの手元には、
銃弾を放った後の「薬莢」である、
画像が残った。



弾は確かに放たれた。
怪物よ、お前は撃ち抜かれた。

お前らが、
私たちを諦めさせようと感染を拡げる領域に、

人類は、
ときに、立ち止まり、
ときに、撃ち抜き、
考えながら、
よじ登ってでも、
未来へ向かって行くだろう。

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