🇰🇭孵化前の卵を食べるの?@プノンペン2016 #03
夜が暮れた。
キャピタルゲストハウスのバルコニーから夜道を眺めていた私は気づくと外に出ていた。
プノンペンの夜に気を付けろ、
それが誰から言われた事もなく覚えた一般常識だったが、バンコクとの様相の違いにたまらない好奇心が掻き立てられた。
キャピタルゲストハウスの周辺はこんな感じ。
明かりがある道を選ぶか、否かで生死の境目を分けてもおかしくない、それくらいプノンペンの夜が怖かった。
暗闇で人を踏んづけそうになった。
ハンモックで寝ていた。だらだらとスマホを見てこちらに微笑みかけている。私はSONYのRX100を指差して、「写真を撮ってもいいですか?」と聞いた。
彼は困っていた。照れ臭そうに「Ok,Ok」とうなづいてた。それがこの写真だ。
少し屋台もある。何の魚か分からないが、炭で焼いていて猛烈な煙だ。
嬉しいモノを見つけた。
アジア圏の田舎に登場するピンクの液体を詰めた瓶。ーーガソリンだ。
昔バンコクからシェムリアップへ行く悪路で点々と売られていた頃と同じだ。
ーーあれから10年近くか。
シェムリアップも変わっただろうな。
ゆで卵を売っている店があったので腰をかけた。周囲で飲んでいる人々が僕を見てニヤニヤしている。
「それは卵じゃあないんだよ」
とりあえずむいてみろ、と一人の男に言われた。周囲でドッと笑いが起きた。
これはもしかして。
バロットだった。たしかフィリピンではそういう言い方だったような気がする。
卵を割ると孵化仕掛けの雛が出てきた。
血管も見える。
周りの人達が「パクッと行きなよ」
とはやし立てる。
店主の女性が近くに来てくれた。
「こう食べるのよ」
食べ方を教えに来てくれたのだ。
殻を剥くと雛というよりも肉の塊が出てきた。
「たれをつけて少しずつかじりなさい。
美味しいのよ。」
含むと、それはチキンの味だった。
鳥だから当然だろう。そしてついでにゆで卵の黄身の部分がぶら下がってるようだった。
(意外に美味いぞ)
女店主はずっと微笑んでいた。
周りの男達も私の「美味い」という顔をみて
親指を突き出して「Good」とサインした。
バロットも、安くてこれまたバーツ換算で申し訳ないが、20バーツいかないくらいだったと思う。
珍しい食べ物だったのでFacebookにアップすると、フィリピン人の知人からメッセージが。
『バロット。懐かしい!子供の頃食べてたわ』
すると、横で飲み交わしていた集団が席を立った。その後の様相がこうだ。誰も意に介していない。陸路でカンボジアへ入ったことがある人ならご存知だと思う。
カンボジアに入った瞬間にゴミが増えるのだ。
悲しいくらいにポイ捨てされるのだ。
急速なプノンペンの成長と共に街も綺麗になるのかな。それも寂しい気がする。
店を出てゲストハウスに戻る途中、横に走る路地を見た。街灯がいきなり減るために真っ暗だ。
『これ以上踏み込むな』
『今しかないよ、行け行け』
どうしようか?
ーータケシ
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