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「日本酒の概念が変わる」、っていうけど日本酒の概念って何? 日本酒マーケティング論考vol.2

こんにちは、日本酒ベンチャーHINEMOSの渡辺です。

HINEMOSを召し上がっていただいた皆さんから、SNSなどでありがたい感想やコメントをいただきます。

我々としてはとてもありがたく・・・!お褒めの言葉と受け取っているのですが、ここで一つの疑問。「日本酒の概念」って何だろう?ということ。

私は異業種から日本酒業界に参入した身です。そのため「日本酒」の概念について、凝り固まったものを持たずにフラットなのですが、人によってどうやらこの「日本酒の概念」が結構違うのでは?と言うことがわかってきました。そこで、いわゆる世の中で言われている「日本酒の概念」とやらを網羅的に調べてみようと思い立ちました。

日本酒の概念を壊すためには、壊す対象をまず知らないといけない。
(※別に日本酒の概念を壊すことが正義とも思っていないです、念のため)と言うわけで、早速みていきましょう!

①「貴醸酒」は日本酒の概念を変える

「概念」という名前の日本酒が、山形県の秀峰酒造さんからこの冬に全国4店舗限定で発売されているそうです。

日本酒には様々なタイプがありますがその大半は、「軽快(light)」、「柔らかい(mild)」、「芳醇・豊潤(rich)」、「キレがある(sharp」4タイプです。今回の秀鳳酒造場は、今までの日本酒の概念にとらわれない味わいを作りたいとの想いより、【晩酌(定番)で楽しめる極甘口】にチャレンジしました。

ここで言う日本酒の概念は、「日本酒の大半が、「軽快(light)」、「柔らかい(mild)」、「芳醇・豊潤(rich)」、「キレがある(sharp」4タイプに分類される」と言うものにあたります。確かに貴醸酒のような甘さが際立つタイプは、これが日本酒?と驚かれることが多い代表的な日本酒です。

我々HINEMOSでもJUJIと言う酒が貴醸酒タイプですが、CREEMAでのレビューで同じような言葉を頂いていました。

JUJI(10時) へのレビュー
美味しかった……!これまでの日本酒の概念を良い意味で覆されました。デザートとしてはもちろん、食前酒としてもぴったりな、贅沢な味わい。しっかり冷やすと最高です!

※貴醸酒って何?と言う方は、下記の記事やこちらのwikiをご覧くださいませ。仕込み水に日本酒を活用し、従来より甘口に感じる日本酒が作られています。

貴醸酒は、前述した通り手間もコストもかかり、しかも多くは出回らない日本酒です。日本酒の概念が変わる味わいは、ぜひ一度試してほしい逸品です。


②「色が赤い」と日本酒の概念を変える

こちらは古代米を使って醸された、向井酒造さんの「伊根満開」を飲んだご感想です。「伊根満開」についてはこちらの記事がしっかりと取材がされており読み応えがあります。

単に赤い、と言うだけではなく、古代米を用いたフルーティーで甘みあり酸味あり、と言うところで従来の日本酒とは異なるところが際立つ日本酒のようです。飲んでみたい!こちらも手前味噌ですが・・HINEMOSで言えばREIJIと言う酒が赤色酒で、同じようにレビューで驚きを伴い受け入れられています。

REIJI(0時) へのレビュー
評価が遅れ申し訳ありません。ぜひ味を見てからと待っていたのですが…!!これが日本酒かと驚きました!自然で不思議な甘味がありながらも、後味はスッキリ。日本酒好きの知人にプレゼントし、一緒に飲んだのですが、その人も驚き気に入っていました。

日本酒といえば無色透明(それか少しだけ黄色かかっている)と言うのが当たり前なので、人工的ではない方法で色がついていることは、確かに日本酒の常識の範囲ではないでしょう。

また、違うお酒ですが、こちらでもピンクのお酒が日本酒の概念を変えるものとして紹介されています。単に色だけではなく味わいにも言及されていますね。こちらの連載は日本酒初心者と唎酒師(それも親子)の会話形式で記事が構成されており、その中では

>ひいな「発酵力が弱いからアルコール度数があんまり上がらないのも特徴なの。『ピンクのかっぱ』は10度なんだよ」
>テツヤ「日本酒にしては低いね」
ーーーーー
>テツヤ「いわゆる純米大吟醸ってさ、食事に合わないイメージがあるんだけど」

「日本酒はアルコール度数が16-7%くらい」「純米大吟醸は食事に合わない」などなど、人によってのイメージがさらに記載されており、非常に学びになります。

③「若い人が好んで飲むテイスト」は日本酒の概念を変える

この記事にまさに日本酒へのイメージが書いてある気もしましたが・・

“日本酒”と言えば飲み屋で熱燗、冷酒をおちょこでクイっと一杯…
見た目も地味で、ちょっとおじさんくさいなぁ…

このような漫画やアニメにて描かれるような概念が、一般的な若い人が日本酒に対して持っている代表的なイメージな気もします。居酒屋のおじさんの熱燗、が日本酒のイメージですね。こういったイメージを持っている人からしたら、

・ワイングラスでお酒を飲む
・甘い味わい
・スパークリング、炭酸飲料のように発泡している
・一升瓶以外に入っており、デザイン性が高い

と言うような飲み方を提案している日本酒は、今までの概念を変えるものとして映るでしょう。

超甘口の数値の割に酸度が高く、炭酸ガスのスッキリした不思議なお酒。日本酒離れしている今、革命的な商品です。お米からできたなんて信じられない美味しさの発泡清酒 ラシャンテ。

日本酒度がマイナス70度と言う超甘口のスパークリング「ラシャンテ」にも革命的な商品と言うような表現がされていますね。
※日本酒度は、日本酒中に含まれる当分を表す値で、一般的に−6.0で大甘口と分類されたりしますが、それが-70と言うのはかなり外れ値に位置する日本酒です。

マスカットのような柔らかい甘みと口の中に広がる香りが「日本酒は一升瓶、親父が飲むお酒」と言う概念を覆し、なおしゃれな感じと飲みやすさが若い女性たちにも受け入れられ人気となっている日本酒です。

こちらも同様な「概念」を元に記事を書かれています。

※余談ですが、私の4才の息子にとって「お酒」とは「のび太のパパかクレヨンしんちゃんのひろしが酔っぱらうときに飲む物」の印象なので、パパが「今日はお酒飲んでくるねー」と言うと、「フラフラになるの!?」「お土産はお寿司なの!?」と尋ねられます。アニメの作品でも日本酒って、おじさんが酔っぱらうシーンで描かれること多いですよね。

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④「フルーティーな香りがする日本酒」が日本酒の概念を変える

その酒の味わいはとにかく甘美
愛山を使ったお酒は甘くフルーティーな感じになり、口に含んだ瞬間まるでメロンのような豊潤な果実的な甘さとなめらかさがあって日本酒じゃないみたいなんです それでいて後味はキレが良くて嫌みが残らない。臥龍梅の真骨頂を感じます。

こちらは、美味しい日本酒を褒める時の表現で(日本酒の世界にいると)よく耳にしますが「メロンのような」とか「フルーティー」という表現がされます。これは、いわゆる吟醸造りと呼ばれる方法で製造された日本酒で、(製造方法の詳細は省きます)フルーティーな香りの正体は吟醸香です。

これらのお酒は日本酒全体の生産量からすると希少で、国税庁の資料によると最近では全体の約15%が吟醸酒or純米吟醸酒です。それ以外のお酒では、(一般的には)この吟醸香を感じるのは難しいため、日頃普通酒(コンビニのパック酒とか)を飲んでいる人にとってはフルーティーな香りがしないことが日本酒の概念となりそうです。

⑤「和食以外との組み合わせ」が日本酒の概念を変える

日本酒とスペイン料理のマリアージュ
隠れ家のお店!野菜やお肉の産地にもこだわり、季節毎におススメ料理も変わるお店。料理に合う日本酒をおススメしてくれて、日本酒の概念が変わるお店です。18席しかないので予約した方がいいです

日本酒と言えば、和食。これは間違うことない事実。しかし、日本酒のもつ味わいの多様さを考えたときに、和食以外でも様々な料理シーンで日本酒は登場してきています。例えば獺祭はフレンチ料理の超有名店ジョエル・ロブションとのプロジェクトを手掛けているほど、日本酒業界にいる身分からすると日本酒と和食以外の組み合わせはもはや話題にならないほど研究されているテーマですが、まだまだ世間的には珍しく捉えられるテーマかもしれません。

※HINEMOSでは過去にもイタリアンやフレンチとのコラボレーションイベントを開催しております。


⑥「日本酒カクテル」は日本酒の概念を変える

日本酒って、あまりカクテルとなっているイメージないですよね。カクテルバーでワインもあまりイメージがないのと同様、そのブランドや銘柄を味わうときに重視する飲料であればあるほど、その味わいを変えてしまうことに抵抗がある人が多くいらっしゃるでしょう。

我々HINEMOSもレストランの方と会話をしていて、HINEMOSのお酒をカクテル風のアレンジをしたいのですがいいでしょうか・・?と申し訳なさそうに質問されることがあります。我々としては、むしろHINEMOSがより高次元に羽ばたけるような調理方法・組み合わせの提案をいただけることは大歓迎ですので特段咎めるようなことは一切しません。

ただ、この話題は酒蔵のスタンスによって解答が変わる、センシティブな話題とも思っています。こちらの記事では想いを持って日本酒カクテルのお店を経営されている方のインタビューが掲載されています。

もちろん日本酒の味とか、風味はバッチリ活かされています。だけど、日本酒特有の「後から酔いが回る」「銘柄によって後味が独特、口の中にやけに味が残る」といった、日本酒好きの私でもちょっと愛せない部分が全くなかったんです。(飲んでいる最中からきちんとアルコールが回っていました。)(中略)これは、日本酒好きの方が日本酒を違った角度で楽しめるのはもちろん、日本酒を飲まず嫌いしている人、初めての日本酒にあまりいい思い出がない人でも美味しく感じるのでは?と思えるくらい、日本酒の固定概念を覆されました。

これだけ日本酒業界へのリスペクトを持って日本酒カクテルを作られているお店があれば、日本酒カクテルがバーに普及していく日も遠くないかもしれません。


⑦「漢字じゃない名前」は日本酒の概念を変える

「HINEMOS」と言う日本酒を作っている弊社こそ、語りたいポイントです。日本酒ってほとんどが「漢字」「平仮名」の組み合わせで、それも伝統的な漢字を使い名付けられていますよね。ただ、最近は(業界の慣習からして)変わった名前の日本酒が昨今では登場しています。

「マスターピース」「恋をするたびに」「竹島事変」「エレメンツオブライフ」「センセーション」「笑四季劇場」「赤い糸」など次々とリリースされる酒の名は、まるで小説や映画、はたまたポップミュージックの曲名のようで、ラベルデザインも鮮やかだ。
東京農業大学で醸造学を学んだ後、他酒蔵で就業してきた彼が描き出す世界観は独特で、従来の日本酒という概念に収まるものではない。 たとえば貴腐ワインからインスパイアされてつくられた「モンスーン」は・・・(略)

今までと変わったものを作り出す。この気概を表現するために、その表現の一つとしてカタカナや英語を使って名前をつけることは、グローバルな時代には増えていくかもしれません。


最後に

今回は7パターンに「日本酒の概念を変える」を分類してみました。もちろんこれ以外の切り口もたくさんあると思いますし、そもそもこれは「良い・悪い」の話では決してありませんし、日本酒の概念を壊せばいいものでもないです。

ただ、マーケティングの観点として「なにをするとイメージ(概念)を崩せるのか」は意識しておくと、期待値を超えて感動を生み出すヒントになると思っています。今までと同じものを同じように提供しては、心に残る体験は生み出せません。

日本酒メーカーに携わるものとして、これらの「概念」を忘れずにどうやったら期待値を超えられるのかを今後もシンプルに突き詰めて考えていきたいと思います。

※今回の記事は、日本酒の勉強をずっとしていると、知らず知らずのうちに業界関係者目線になってしまうので、一般の感覚を常に身につけておく必要・・と言う壮大な自分用のメモだったりします。

▼あとは諸々告知です

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