起稿宣言および論稿予告 責任について―主に「力」にまつわる問題から考える―
起稿:2023年5月22日
責任については、こんにちあまりにも多様な見解があり一致を見ないが、しかし現今の社会秩序において責任概念がどのような役割を果たしているかについては一定の共通理解が得られると思う。そこで本論では、そこを詰めて分析し、しかるのちに責任概念に力を託していることの社会的意義を明らかにしたい。その先の展開をこの時点で示す、或いは示せてしまうことは適切な議論の有意味性に反すると思うので、ここでは明示しない。ただ、以下のことだけは記述しておく。
予め示しておきたいが、私が願うことは、全ての出来損ないたる現存在―すなわち人間、或いは「われわれ」―の幸福である。身の程に適った幸福よりも際限なき能力形成を為していくような主張もみられるが、私は盲目的な能力形成や、或いは来たるべき完全者の至福よりも、むしろ私のこの仕事に関してのみ言えば、まさに長期に及ぶ「今」において悶え苦しんでいる者のためにこそ本論を捧げたい。私は、未来へと投げかける仕事も遂行すると同時に、今まさに死なんとしている苦しみの総体に対しても何がしかはたらきかけたいのである。いずれこの当該世界が「なかったこと」になったとしても、このどうしようもなく「在る」世界の苦しみに共苦的に寄り添わなくてなにが人間か、「この世的」であることにもこだわりはないのか、そう言いたい。そうした思いを抱いて、本論を展開する。
キーワード:自由、悪、理性、判断能力、意志、成熟、発達、狂気、規律、秩序、実力、法。
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