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Googleの「3分割ルール」が、理想の人事チーム像を言語化してた。 (15年前に....)

はじめに

『WORK RULES』を数年ぶりに読み返しています。

2015年に発売された時にもざっと読んだはずなのですが、全然覚えてなかったです。当時は人事でもなければ、IT業界にすらいなかったので、当然といえば当然なのですが。

この本の「あとがき」に記載されている「3分割ルール」にとても共感したので、これについて書きます。

「3分割ルール」とは

本の中で、「3分割ルール」は以下のように説明されています。

グーグルのピープル・オペレーションズチームは採用に「3分割ルール」を導入し、独自の人事組織を構築してきた。すなわち、採用する人のうち、典型的な人事畑の経験がある人は3分の1を超えないこと。 (中略) 次の3分の1は、コンサルティング業界から採用する。 (中略) 最後の3の1は、分析力の高い人を採用する。 (p.541)

つまり、
・人事スペシャリスト
・戦略コンサルタント
・アナリスト

をバランス良く採用し、人事組織をデザインしていたようです。 (しかも著者がGoogleに入社した2006年から一貫して..!!)

そして、それぞれに対して以下のような期待が書かれてました。

「人事スペシャリスト」は、人と組織に起こりうる人事的事象のパターンをよく理解しており、関係構築能力、感情的知性に長けている。

「戦略コンサルタント」への期待は、ビジネスの深い理解と高い課題解決能力。(IQばかり高い傲慢な人を採らないよう注意とも書いてありました。分かる笑)

そして「アナリスト」により、人事組織の取り組みが "高度な研究" になる。組織心理学や物理学の修士号をもっているメンバーがイメージされてるようでした。 (同じ本の別のページでは博士号を採用しろ、とも。)

これにより、人事組織の多様性と、資質ポートフォリオを強化することが狙いのようです。

共通項

一方で、それぞれの専門性がもつ、数少ない共通項としては、以下が挙げられていました。

・自分の知性に対して顕著
・自らが間違う可能性を積極的に認める
・常にもっと学ぼうとする
・とにかく誠実
・社員と会社を心から気にかけている

特に、最後の2つは人事っぽい資質ですね。

私たちはどうか

マネジメント層に関しては、コンサル出身者を迎えるケースもちらほら目にする気がしますね。ファーストリテイリング人事部長の武山さんは元BCGのようですね。

私が所属する組織でも、ちょうど今月から、経営企画部のマネージャーが人事企画マネージャーとして就任してきました。

まさに3分割ルールの内「コンサルタント」に分類される方々ですね。

ただ、やはり全体としては、人事組織の多様性は極めて低いのが実際かと思います。

特にメンバークラスは、一部の先進的な企業を除き、多くの日系企業では「人事スペシャリスト」もしくは「いずれにも当てはまらない」メンバーが人事組織の7-8割を占めるのではないでしょうか。

各社の取り組み

もちろん、人事領域でのアナリスト活用に対して、以前よりアンテナ高く取り組んでいる企業もあり、素晴らしいなとおもいます。

例えば、LINEやHERPは「HRデータアナリスト」を募集していて、募集要項をみると人事経験はまったく求めてないようです。

これは、この記事を書いている中で知ったのですが、ヤフーは2017年に「ピープルアナリティクスラボ」を立ち上げてますね。データサイエンティストの方と、人事企画出身の方が協働しているようです。


また、メルカリの「HRISスペシャリスト」は、一定の人事オペレーションの経験を求めて入るものの、システム導入やプロセス設計など、大手コンサルティング企業の提供サービスに近いミッションを担うポジションにみえます。 (人事経験を求めてる背景が気になりますね。)

こうやって事例を並べると、とても刺激になりますな。

どう前に進めていくのか

私は人事業務の中でもリクルーティング業務のみを行う立場にあるのですが、過去の経験や、仕事に対する志向性から「3分割ルール」には強く共感しており、今後拡大していく自分のチームが「人事畑」「エージェント出身」ばかりにならないように気をつけたいと思っています。

前述のような取り組み事例がある一方で、気になるのは
「人事に興味があるコンサルタント・アナリストをどのように見つけるか」
「コンサルタント・アナリストにとって魅力的な人事業務をどう構築するか」
「(7:2:1ではなく)3分割にするために、なにが必要か」
といったことです。

本の中では、HRではなくピープル・オペレーションズという名前にしたことが、人事業務のブランディングにいい影響を与えたと書かれていました。

HR (Human Resources) は管理的で官僚的な響きだが、Operationsはエンジニアにとって信頼できる肩書であり、実行力のある本物の能力をにおわせるらしい。そして、人事部門の肩書として重要なのは、「オペレーションズ」という言葉に数学が得意だというイメージもあることだ!

私としては、「戦略的に考え、実行すること」「データを重要視し、データに基づき意思決定をすること」を人事組織の文化として根付かせることがなによりも重要だと思っています。

もし現状の人事組織が、人事畑のメンバーのみで構成されており、(人事スペシャリストお得意の)関係性や感情に強く依存して、チームや業務が運営されているのであれば、「戦略コンサルティング」や「データ分析」といった資質をもったタレントは、そのチームに入りたいと思わないでしょうね。

おわりに

いやはや、これが15年も前の2006年に発案された考え方ということも感服ですけど、あとがきの約10ページで触れられている内容だけで、この密度。

新しい手法や本も面白いですけど、やはりTop of topからは学びが大きいですね。

これからの人事組織のありかたや、データ活用など、興味ある方がいたら是非お話しましょう。

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