蔵人坊

引っ越し35回の果てに南十勝に辿り着きました。スーパーの青果部長、温泉宿の支配人、林業…

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引っ越し35回の果てに南十勝に辿り着きました。スーパーの青果部長、温泉宿の支配人、林業作業員、漁業船員、酪農作業員、給食サービス員、市役所臨時職員、ホテル清掃主任、鳶職などなどあらゆる職種を渡り歩いて今無職。プータローです。

最近の記事

「風と雲 〜清宗異聞〜(十一)」

(十一) 候風島 舷側へと寄せる波の音が響く他は、時折鳴く海鳥の声だけが聞こえている。三月になり、衛山島の湊を吹く風は春の匂いがする。清宗は「王虎」の艦上にあって、舳先に座り、湊を眺めている。 清宗は蓮香の葬儀とその後に起こった事を思い返していた。弥太郎はあの後病床にあり、明州の店に居る。香児が面倒を見ている。山吹は朱との婚礼をつつましく挙げたが、島へ残った。清宗の護衛のつもりだ。いつまた襲撃があるかわからない。だが本心では、清宗が不幸な目に会ったのに自分だけ幸せになる事が

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    • 「風と雲 〜清宗異聞〜(十)」

      (十) 喫菜事魔

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      • 「風と雲 〜清宗異聞〜(九)」

        (九)臨安

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        • 「風と雲 〜清宗異聞〜(八)」

          (八) 衛山島 翌日から情報収集の部隊が編成された。海図を作成する班、海寇の状況を探る班がそれぞれに動き出す。皆、地元の漁師舟に乗って漁民として島までの海路や島の様子を探った。海寇は商船は襲うが漁民は襲わない。上陸作戦は陸戦部隊が担当する。集まりつつある情報を整理しながら、皆で作戦を練った。現場の海域は暗礁も多い。海図には新たに見つかった暗礁が書き込まれていく。海流も複雑で、潮の満ち引きに合わせて変化する。秋も深まりつつあり、冬の季節風がいつ来るかも問題だった。海戦の日取り

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        「風と雲 〜清宗異聞〜(十一)」

          「風と雲 〜清宗異聞〜(七)」

          (七) 明州

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          「風と雲 〜清宗異聞〜(七)」

          「風と雲 〜清宗異聞〜(六)」

          (六)海洋島(ハイヤンタオ) 弥太郎の船には高麗の荷が山積みされ、出港の準備は整った。見送りの人々が手を振る中、王虎が出港し商船二隻が後に続いた。富山浦から海洋島までは三日の行程だ。高麗の陸地を右に見ながら黄海へと進む。遼東半島の東南海中に七十二の島があり、その中で最大の島がハイヤンタオだ。風をしのぎ大船が停泊できる天然の良港がある。海寇たちが集い、宋や高麗、日本の商人も来島している。ペルシャをはじめとする遠国の商人も多い。東洋最大の密貿易の拠点であり、その賑わいは富山浦や

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          「風と雲 〜清宗異聞〜(六)」

          「風と雲 〜清宗異聞〜(五)」

          (五) 富山浦

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          「風と雲 〜清宗異聞〜(五)」

          「風と雲 〜清宗異聞〜(四)」

          (四) 十三湊

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          「風と雲 〜清宗異聞〜(四)」

          「風と雲 〜清宗異聞〜(三)」

          (三)鎌倉

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          「風と雲 〜清宗異聞〜(三)」

          「風と雲 〜清宗異聞〜(二)」

          (二)夷島(えぞがしま)

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          「風と雲 〜清宗異聞〜(二)」

          「風と雲 〜清宗異聞〜(一)」

          (一)篠原

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          「風と雲 〜清宗異聞〜(一)」

          風と雲〜清宗異聞〜 作者あとがき

          平家物語は作者不詳だ。僧侶によって書かれたと推測されているが、日本文学史上に輝く、これだけの名文であるにも関わらずどうして名乗らなかったのか。 それはこの物語が平家への追悼である以上、どうしても生き残った、いや平家を貶めた人々への告発文になってしまうからだ。 もちろんはっきりと責めているわけではないが、事実を事実として書けば自ずと誰に罪があるかは明らかになる。だから物語の中では作者が知る事実を全て書き切っている訳ではない。あまりやりすぎると作者の立場が危うくなるからだ。ただ事

          風と雲〜清宗異聞〜 作者あとがき

          未来少年コナン

          中学生の頃「未来少年コナン」というアニメがNHKで放送されていた。 私は初回を見逃したのだが、たまたま見たそのアニメにどっぷりとはまり込んだ。当時ビデオはなかった。もちろんレンタルビデオ屋もない。従ってテレビは人生で一度切りの悲劇的な出し物と私には思われた。なぜなら私はそのアニメの世界に逃げ込みたいと真剣に願うほどだったからだ。今でも神様に何か一つだけ願いを叶えてもらえるとしたら、大学生の時に好きだったあの娘と結婚するよりも、コナンと共にハイハーバーや残され島で生きることを

          未来少年コナン

          MONSTER

          あれはまだ私が3歳の時だった。吉野川に注ぐ小さな川が流れる狭い谷間に私たちの家はあった。父は建設省で働いており、ダム工事に関わっていた。そこには同じ仕事に携わる人たちの官舎があった。木造の平屋建てで、二軒長屋が狭い敷地に5軒ほど建てられていた。周りは田んぼと畑であり、用水路は土を削ったもので生き物がたくさんいた。まだ道路は舗装されておらず、車が通るたびに土埃が舞い上がった。母は次男を妊娠していた。それで私に今までのような愛情を注げなくなることを慣れさせねばならないと考えたのだ

          境港の思い出

          私が物心ついてから初めて父方の祖父に会ったのは五歳の時だった。父は転勤族で実家から遠く離れて私たちは暮らしていた。 家から少し離れたところの駐車場に迎えに出てくれた祖父は、私を見るなり満面の笑顔で「おお、たけしさんか。」と言った。大人から自分の名前をさん付けで呼ばれたのは生まれて初めての経験で、ものすごく嬉しかった事を鮮明に覚えているのだが、その映像を克明に記憶しているのは、その時の匂いも関係している。 祖父母は鳥取県境港市に住んでいた。境港は日本海と汽水湖である中海を結ぶ細

          境港の思い出

          或る地獄の一日

          赤鬼「やあ 青鬼さんおはようございます。」 青鬼「これは赤鬼さん おはようございます。今日もお元気そうで何よりです。」 赤「いやいや近頃は仕事がきつくてたまりませんよ。」 青「いや 全くです。我々鬼の数は昔から増えぬのに、来る奴は増える一方ですからね。」 赤「それにしても最近来る奴はちょっとおかしいですよ。」 青「そういえば、昨日の奴なんかまだ子供なのに人殺しの札をつけていましたからこちらが驚いてしまいました。」 赤「ええ私も最近子供が多くなったのには驚かされます

          或る地獄の一日