読書感想文: その世とこの世・ぼく
その世とこの世(著:谷川俊太郎・ブレイディみかこ、絵:奥村門土、2023年、岩波書店)
ぼく(作:谷川俊太郎、絵:合田里美、岩崎書店、2022)
『その世とこの世』の中にこんな谷川俊太郎さんの詩が出てくる。
ブレイディみかこさんとの往復書簡で構成されている本で、その中にこの詩が出てくるのだが、この「その世」という詩からブレイディさんはある一冊の絵本を想起する。
それが『ぼく』である。子供の自死を描いている絵本で文を谷川さんが書いている。
自分は以前この『ぼく』を読んだ時「いやな感じ!」と拒絶したが今回の『その世とこの世』を読んでから『ぼく』を読むと拒絶がだいぶ和らいだ。『ぼく』を読んで拒絶した方はこの『その世とこの世』を副読本として読むのをおすすめしたい。
『ぼく』感想
こういう生き方も否定してはいけないんじゃないか。かと言って肯定もしてはいけないんじゃないか。
ブレイディさんが言うようにこの世とあの世とその世は空で繋がっている。
死ぬことは何も理想でもなく名誉でもなくいけないことでもなく必然なんじゃないか。
生きることを選ぶということはまた立派なことであり、しかし愚かでもあり、しかし必然であると。
RCサクセションがカヴァーした、ジョン・レノンの「イマジン」の、〈天国はない。ただ空があるだけ。〉という一節を想起した。
しかしながら、絵本の最後にある、編集部のある意向がこの絵本を台無しにしていると残念ながら思う。
最後にわざわざ「死なないでください」やら相談窓口の紹介やらを編集部が並び立てているところがあり、これでは谷川さんの「あわい」、「その世」についての考えが台無しな気がしてならない。
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