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子ども議会のチラシ 子ども議員の魅力が伝わるキャッチコピーに変えてみた。事例をビフォー・アフターで紹介。

自治体職員向けの広報研修の講師をしていて「子ども議会」のチラシを教材にすることがあります。
「子ども議会」は、小中学生が “議員” になって、市長(町長)や教育長ら市や町の幹部に質問するというもの。事前に学習会をして質問内容を練って、本物の議場を使って質疑を行います。

質問は「全教室にクーラーの設置を」「ボールで遊べる公園を増やすべき」など身近な話題もあれば「駅前の土地活用について」や「児童数減少の対策は」など地域の未来を憂えた内容まで多種多様。

担当部局はきちんと答弁するだけでなく、自治体によっては、その後、市や町としてどう対応したのかまで発表しています。本格的です。

この「子ども議会」は、自分の住んでいる市や町に関心を持ち、民主主義を体験的に理解する。そんな狙いを持って市(町)と市議会(町議会)、それに教育委員会が協力して開催しています。

チラシも市長部局の企画課が担当したり議会事務局が作ったり、あるいは教育委員会が担ったりとさまざま。

でもほぼ共通していることがあって、私は「せっかくのいい事業なのにもったいない」と思っています。

この記事では自治体職員向けに「子ども議会のチラシ、こんな風にキャッチコピーを変えたら事業の良さが伝わって参加する子どもが増えるのでは」という提案をしています。

「思わず参加したくなる」キャッチコピーをビフォー・アフター形式で3パターン紹介します。参考にしていただけると嬉しいです。
※私が作成したキャッチコピーを使いたい場合は、連絡をいただければ無償で提供いたします。連絡先はこちら

この記事でお伝えすること

子ども議会の参加者を増やしたい
自治体職員に伝えたいこと

【ビフォー】
典型的な子ども議会のチラシ 
去年のチラシの日付だけ変えたもの?

けっこういろいろな自治体の「子ども議会」のチラシを見るのですが、このパターンが非常に多いです。典型的なチラシがこちら。

子ども議会のチラシイメージ

このあとビフォー・アフターを比較するため、キャッチコピーを抜き出してみました。※岡谷市は、事例を伝えるための架空の自治体名です。

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第7回 岡谷市
子ども議会
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なによりも大きく書かれているのが「子ども議会」という文字。「議員募集」の文字さえも見当たらず、本当にただ「子ども議会」としか書かれていないこともけっこうあります。

たぶん去年のチラシを日付だけ変えて使っているのだと思います。その背景には「子ども議会は毎年、実施しているのだから十分知られているだろう」という考えが無意識にあるのではないでしょうか。

でも本当に小学生や中学生の子どもたちは、子ども議会のことを知っていますか? 実際の勧誘は小中学校の教師が担っていると思うのですが、教師の方々は子ども議会の良さを十分理解していますか? 私はそうは思えないのです。

もし「もっと多くの子どもたちに参加してほしい」と思うのなら、子ども議会の価値、子ども議員になる魅力をキャッチコピーで伝えてほしいと思うのです。
次のようなキャッチコピーはいかがでしょうか。

【アフター1】
子どもの声に耳をすまして 
子ども議会の魅力をキャッチコピーにしてみた

子ども議会に参加を呼びかけるチラシ
キャッチコピー例(00010)

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ふだんの
学校では
できないこと

子ども議員ならできます
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「学校ではできない体験ができる」。
この子ども議会の魅力。私が勝手に考えたのではありません。子ども議会に参加した子どもたちの声=感想文に注目してみたのです。
例えばこちら、沖縄県うるま市の「子ども議会」に参加した子どもの感想文です。※私が注目した文章を太字にしています。

「うるま市こども議会」は私にとってめったにできない 貴重な体験となりました。 市議会独特の雰囲気の中、ドキドキしながら自分の発表の番を待っていました。そし て、とうとう自分の発表の番になりました。発言する時は、とても緊張して声がふるえ ました。私の質問には、指導部長が答えてくれました。ゆっくり話してくれて、とても 分かりやすかったです。その時、初めて緊張がとけました。

https://www.city.uruma.lg.jp/sp/userfiles/U047/files/6000(5).pdf

こちらは愛知県東郷町の子ども議会の参加者の声

今日は普段の生活では体験できないような貴重な体験ができて本当によかったです。また、 町長をはじめとするみなさんが、ちゃんと一人の意見として真剣に聞いてくれたのですごくうれしかったです。

https://www.town.aichi-togo.lg.jp/material/files/group/2/tougou2003_kodomogikai2019.pdf

参加した子どもはきちんと、子ども議会のいいところ、魅力に感じたところをコトバにしてくれています。
担当の方はぜひ、これまでの参加者の声・感想文に目を通してみてください。

実際に経験した子どもたちの喜びの声、これはまさに子ども議会の価値であり魅力を表しています。
その魅力をキャッチコピーで伝えることで「あ、私もやってみたい」と思う子どもが増えると思うのです。また勧誘にあたる小中学校の教師の方も、子どもたちに勧める際に、何が子ども議会の魅力なのか、伝えやすくなるのではないでしょうか。

【アフター2】
首長ら大人に議員として質問する 
そこが魅力的だと伝えてみました

子ども議会に参加を呼びかけるチラシ
キャッチコピー例(00011)


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市長に
ドキドキしながら
質問しました

子ども議員を募集しています
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これも子どもたちの声に耳を傾けてみました。さきほどの、うるま市と東郷町、それに群馬県安中市の子どもたちの声です。

「うるま市こども議会」は私にとってめったにできない 貴重な体験となりました。 市議会独特の雰囲気の中、ドキドキしながら自分の発表の番を待っていました。そし て、とうとう自分の発表の番になりました。発言する時は、とても緊張して声がふるえ ました。私の質問には、指導部長が答えてくれました。ゆっくり話してくれて、とても 分かりやすかったです。その時、初めて緊張がとけました。

https://www.town.aichi-togo.lg.jp/material/files/group/2/tougou2003_kodomogikai2019.pdf

今日は普段の生活では体験できないような貴重な体験ができて本当によかったです。また、 町長をはじめとするみなさんが、ちゃんと一人の意見として真剣に聞いてくれたのですごくうれしかったです。

https://www.city.uruma.lg.jp/sp/userfiles/U047/files/6000(5).pdf

こちらは群馬県安中市の子ども議会の参加者の声

実際に市長に質問できる所がとても良い点だと思いました。ぜひ、続けていってほしいです。貴重な体験をありがとうございました。
どんな質問にも市長さんや教育長さんが丁寧に答えてくれていたので、安心して質問できたと思います。
・今回の経験を通して、市長という職に興味を持ちました。

https://www.city.annaka.lg.jp/gyousei/soumu/junior-gikai.html

安中市では子どもたちにアンケートもとっています。

子ども議員になってよかったですか。

   すごくよかった         14件  63.6 %
   よかった            8件  36.4%
   どちらかといえばよかった    0件  0.0%
   よくなかった          0件  0.0%

https://www.city.annaka.lg.jp/gyousei/soumu/junior-gikai.html

参加した子ども全員が「子ども議員になってよかった」と答えています。
市長や町長、市や町の幹部ら大人に“議員”として質問できる。そして大人たちが、きちんとひとりひとりに丁寧に答弁する。その姿勢が「議員になってよかった」というアンケート結果につながっているのだと思います。

こうした子ども議会の価値や魅力を伝えないと「もったいない」ですよね。

【アフター3】
保護者に向けて 
子ども議会のキャッチコピーを書いてみた

子ども議会に参加を呼びかけるチラシ
キャッチコピー例(00012)

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お子さんの成長 見たくないですか
子ども議員を募集しています
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最後は保護者に向けたキャッチコピーです。
子ども議員は小学生や中学生。子ども本人の「やりたい」という気持ちが大前提ですが、保護者の理解も当然必要です。保護者にとって、自分の子どもを子ども議会に参加させる価値、魅力をキャッチコピーにしてみました。

子ども議会を担当された自治体職員の方に聞くと、保護者もほとんど全員が「子ども議員に参加させて良かった」と答えているそうです。
その理由のひとつが、子どもの成長ぶりが見えること。
違う学校の児童・生徒が集まって、話し合ったり質問を考えたりする。議会当日は、初めて入る大きな議場に圧倒されて緊張してドキドキしながら市長や町長らに質問する。きちんと答弁してもらう。そのあとは市長らといっしょに食事という自治体も多いようです(この数年は新型コロナで中止も多いですが)。

普段とは違う、学校ではできない体験。それも1日限りではなくて、準備して本番を迎えて、振り返りの感想文を書く。そうした中で子どもは成長します。親として嬉しいですよね。これも子ども議会の価値や魅力です。

親御さんら保護者に向けても「子どもを参加させたい」と思ってもらえる、つまり子ども議会の価値や魅力をキャッチコピーで伝えてほしいと思います。

【まとめ】子ども議会の参加者が増える 
キャッチコピーの作り方を紹介しました

子どもたちの成長を促し、市政や町政に関心を持ってもらう子ども議会。準備はたいへんだと思います。でも実施する意義はすごく大きい。だからこそ、子ども議会の価値や魅力を伝えないのはもったいないと思います。

今回紹介したキャッチコピーを参考にして「去年のチラシとは、ひと味もふた味も違う『思わず参加したくなる・参加させたくなる』子ども議会のチラシ」に挑戦して欲しいと思います。


伝えてほしい子ども議会の価値や魅力】
●学校ではできない体験ができる
●市長ら大人に議員として質問できる
●子どもの成長ぶりが見られる


「思わず参加したくなる」キャッチコピーを作るには 子ども議会に参加する価値や魅力、保護者として参加させる価値や魅力を伝える 【子ども議会の価値や魅力】 ・学校ではできない体験ができる・市長や町長ら大人に議員として質問できる・子どもの成長ぶりが見られる
この記事のまとめ

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