【歴史本の山を崩せ#024】『ヒッタイトに魅せられて』大村幸弘・篠原千絵
《考古学者と漫画家による異色の…しかし納得の対談本》
ヒッタイトとは今から三千年以上前(日本は縄文時代後期)。
現在のトルコ東部に栄え、はじめて鉄を使ったといわれている王国です。
ヒッタイトと聞いてピンとくるひとはよほど世界史が好きな人か、さもなくば『天は赤い河のほとり』のファンといっても過言ではないでしょう。
日本で最も有名なヒッタイトの本といえば篠原千絵さんの漫画『天は赤い河のほとり』だと思います。
その篠原さんと半世紀にもわたって現地で発掘調査を続け、この分野の日本人では第一人者である考古学者・大村幸弘さんとの対談本。
日本では超マニアックなこのテーマで対談本を作ってしまうとは…
しかし、このキャスティングは最高です。
篠原さん自身、ヒッタイトが大好きで普段からかなり勉強をしている様子が伝わってきます。
まるで憧れのアイドルを相手にしたかのような対談になっています。
前半は大村さんの発掘現場での興味深い話が満載です。
成功談はもちろん、失敗談も隠すことなく話してくれています。
また、発掘調査が現地の人々の生活にまで大きな影響を及ぼしていることなど、よく「役に立たない」と言われる歴史学研究の可能性や在り方についても、ひとつのモデルを提示してくれています。
後半はヒッタイトについて割と本格的な対談となっています。
しかし話の中身は、軽すぎず、そして難しすぎない絶妙なバランス。
一般読者が気軽に読めるようなヒッタイト本はほぼ皆無と言ってもよい状態なので、この本は入門書としてもよいかもしれません。
もちろん『天は赤い河のほとり』と一緒に読むのも◎ですね。
漫画や小説などのエンタテイメントを通じて歴史に触れていける。
歴史学者がその裏付けとなる学術的な成果をこうした対談などの、あまり角ばっていない形で話していく。
もっとこういう本が増えればよいと切に思います。
『ヒッタイトに魅せられて』
対談:大村幸弘☓篠原千絵
出版:山川出版社
初版:2022年
定価:1800円+税
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