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漢文の海で釣りをして

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古今の漢籍が泳ぐ歴史の海に釣り糸を垂らし、釣れた漢文を我流な解釈で書き連ねたものです
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#史記

漢文の海で釣りをして【第5回】甘い言葉よりも、苦い薬を勧めてくれるのが本当に優しいひと

漢文の海で釣りをして【第5回】甘い言葉よりも、苦い薬を勧めてくれるのが本当に優しいひと

「忠言、耳に逆らえど行いに利あり。毒薬、口に苦けれど病に利あり」

≪訳≫ひとからの忠告は耳が痛いものだが行いを改めるのに効果がある。濃い薬は苦くて飲みにくいが病気に効くのと同じように。
≪出典≫『史記』留侯世家

日本でも「良薬は口に苦し」という諺で膾炙していますね。
出典となる『史記』留侯世家にこの言葉があることは前々から知っていたのですが、今回改めて原文に当たってみたところ「良薬」がなんと「

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漢文の海で釣りをして【第10回】水に流せないうらみもあるからこそ、小さな心遣いにもありがとうを

漢文の海で釣りをして【第10回】水に流せないうらみもあるからこそ、小さな心遣いにもありがとうを

「一飯の徳も必ず償い、睚眦(がんさい)の怨みも必ず報ゆ」
≪訳≫たった一杯の飯の恩義も必ずお返しするし、ちょっと睨み付けられたうらみにも必ず仕返しをする
≪出典≫『史記』范雎蔡沢列伝

この物語の主人公は范雎(はんしょ)という男。
非常に有能な人物でしたがスパイの濡れ衣を着せられて筆舌に尽くしがたい仕打ちをうけます。
拷問にかけられた上、簀巻きにされて糞尿の浮かぶ便所の中に捨てられ、汚物を浴びせら

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漢文の海で釣りをして【第14回】愛と勇気といくらかのお金

漢文の海で釣りをして【第14回】愛と勇気といくらかのお金

「倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」
《訳》倉庫に十分な食べ物があってようやく礼儀や節度の大切さを知ることができ、衣食に困らなくなってようやく栄辱を理解することができる
《出典》『史記』管晏列伝

短縮バージョンの「衣食足りて礼節を知る」でよく知られている句ですね。
中国古代の宰相・管仲の語。

宰相は王や皇帝を補佐する総理大臣のようなものだと思ってもらえればよいです。
中国で「管仲のよ

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