見出し画像

vol.5『人口減少していくなかで、2050年、日本は持続可能なのか?』

■今回の課題図書

『人口減少社会のデザイン』/広井亮典著

■『人口減少社会のデザイン』を読んでの学び・感想

一般的には人口が減少していくと経済が停滞するというのは周知であり、そのことを前提に人口減少を悪だとするのは、経済市場主義すぎるかなとは個人的には思ってはいたが、本書では、経済的な視点だけではなく、幸福度や格差、つながりなどさまざまな観点から検討されており、新たな見方を学ぶことができた。ただ、人口減少はそのものが悪いというより、人口減少がもたらす結果のほうが問題になるのだということもわかった。例えば、シャッター商店街や地方の空洞化などは、人口減少そのものが問題というより、その結果としての「都市集中化」という公共政策や経済社会システムが問題になるというように。

個人の感想

■はじめに

今回は、社会保障に関連するテーマ。社会保障では、少子化や高齢化やなど問題が課題視されることが多いが、そのことの根本には人口減少という最も大きな問題がある。今回は、そもそも人口が減少する日本では将来的にどういった影響があるのかなど、日本の未来を学ぶ機会としたいと思います。

■今回の問い

「人口減少していくなかで、2050年、日本は持続可能なのか?」

今回の問い

著書では、日本は現状の政策などの方向性を継続した場合に、高齢化率が最高に達するであろう2040年を過ぎた、2050年段階で日本という国は「持続可能」なのか?ということを多面的にシュミレーションしたときにどういった結果となるかを調査したもの。

なお、「持続可能」の定義としては、主に①財政、②格差と人口、③つながりの3つの視点でみたときに破局しないのか?という意味で使われています。

■日本の人口減少の背景

最初に、日本の人口はなぜ減少してしまっているのかについて。

それは、皆さんご存じかもしれないですが、「少子化」が主な原因であると考えられています。1年間の出生数を総人口で割って計算する、合計特殊出生率は、2020年に過去最低の1.33となりました。(以下図参照)

内閣府HPより

■都道府県別の出生率

また、都道府県別の出生率を見ると、以下のようになります。

内閣府HPより

出生率1位は「沖縄」で1.83、再開は意外にも「東京」で1.12なんですね。
比較的地方は産んでて、都心になるほど子どもが少ないってことはいえそうですね。これは、都会のほうが生活にお金がかかるとかそんなことがあるんですかね。このあたりは複雑な要因が絡んでそうなので、単純な指摘はできないですが、とにかく都市部に行くほど、構造的に子どもを産むことに何かしらのハードルがあることは間違いないみたいです。

■出生率が下がっている要因

先ほども触れたように、合計特殊出生率は、「1年間の出生数」を「総人口」で割って計算するので分かりづらいですが、「少子化」といっても、じつは、結婚した1カップルあたりの平均出生数がそこまで減少しているわけではなく(1977年:2.19→2015年:1.94)、主な原因は「婚因数」の減少だと言われています。つまり未婚化が大きな問題なんですね。(以下図参照)

内閣府HPより

実は、2020年は、戦後以降で婚姻数が最低でした。知ってましたかね?

これにはさまざまな要因があるとは思いますが、婚姻率が戦後に比べて3分の1にもなっています。これはただ事ではないですね。

著者も指摘していたように、年収が300万円以下になると婚姻率がガクッと下がるらしく、婚姻率低下の要因はさまざまありそうですが、このデータをみるかぎり、結婚したい・したくないという以前に、お金がなくて「結婚できない」という層が一定増えているのかもしれないですね。

■「今のまま」いくと日本はどうなるのか?

では、ここから本題になります。
2050年の日本はこのままいくとどうなるか?

結論を言ってしまうと、著者は、「今のまま」行くと日本は、「破局シナリオ」になるだろうと予測しています。

著者によると、2050年の日本はこのまま手を打たないと、財政は破綻し、人口減少は加速し、格差と貧困、地方都市空洞化などが拡大し、失業率も向上するなど、さまざまな問題が生じるといいます。

戦後の日本では、工業化を目指して、農村から都市への人口移動を促進する政策が打たれてきて、それが功を奏した結果としての現在の少子化があると言います。つまり、「人口移動」というのが大きなポイントになるようです。

■破局シナリオを回避するためには

そういった最悪の事態を避けるために重要な今後の分岐点としては、「人口をどこに集中させるべきか」、ということが重要となってくる。

すなわち、今後の方向として、人口を(a)都市集中化する、もしくは、(b)地方分散化する、のどちらかの方向で政策を実行していく必要がある。

■「都市集中シナリオ」と「地方分散シナリオ」

では、それぞれどういった特徴があるのか。
独自のシュミレーションから以下のような結果がわかったと言います。

【都市集中シナリオ】(これまでの方向性を継続)
人口の都市への一極集中が進行することで地方は衰退する。そうなると、出生率の低下と格差の拡大がさらに進行し、個人の健康寿命な幸福感は低下する一方で、政府支出の都市への集中によって政府の財政が持ち直す可能性は高い。

「人口減少社会のデザイン」より

【地方分散シナリオ】(方向性を転換)
地方に人口が分散すると、出生率が持ち直して格差が縮小し、個人の健康寿命や幸福感も増大する可能性が高い。ただし、政府の財政や環境悪化を招く恐れがあるので、ここは打ち手が必要。

「人口減少社会のデザイン」より

以上のことから、著者としては、これから人口減少していく日本の社会では、「地方分散型シナリオ」へ舵を切るのが望ましいだろうという論点で話が進んでいきます。

つまり、日本全体として「経済」をとるか「幸福感」を取るかで考えたときに、これまで同様の経済偏重の考え方ではなく、経済以外のことも大事にしていきましょう、ということですかね。

二元論で片付くほど簡単な話ではなさそうですが、わかったことでいうと、マクロな視点でみると、「人の住む場所」で、日本全体の経済や出生率の動向が左右される。個人だけのミクロな視点でみてると、なかなか辿り着かないつかない結論だなと思いました。

■都心への人口集中の結果

上記のことから考えて、やはり著者の言うように、これまでと同様に都心部への人口集中が進むならば、構造的に出生率が低い都心部に人が集まるので、当然のように少子化がさらに進むということになる可能性は高そうですね。とはいえ、仕事がない地方に居続けても仕事がなく、生活が立ち行かないので、都心に出てくる若い世代が多いことも頷けます。

やはり、「仕事」と「住む場所」というのは切っても切れない気がしますね。少子化を食い止めるためには、多くの人が地方で暮らしながらも、生活が立ち行くという構造をつくるということが重要ということですかね。

■まとめ

このように、日本の少子化はこのままいくと間違いなく進行し、財政破綻や失業の増加、貧困や格差などさまざまな問題を引きこ起こす可能性を孕んでおり、少子化の根本原因である婚姻数を増やすことなどが重要となります。

また、少子化していくなかでは人口を地方に分散させることが、解決の糸口になりそうだということでした。とはいえ、「地方分散シナリオ」では、経済面でみると課題があるので、人口を地方に分散させるだけではなく、時間をかけてさまざま取り組みをしていく必要はあるようです。

すなわち、戦後以降の国策としての「都心部一極集中」は、人口増加している局面では成功だったかもしれないが、少なくともこれから人口減少していく局面では、これまでとは違ったアプローチが必要だということが言えそうです。

バブル後に生まれた「ゆとり世代」である自分なんかが思ってしまうのは、日本という国は、高度経済成長期の「成功」をずっとひきずっているように見えます。むしろ、努力が足りないだけでまだ気合で取り返せるって思ってるように感じてしまいます(あくまで主観です。)。最近、よく「リスキリング」なんて言葉よく耳にしますが、国単位で「過去の成功」を捨てて新たな自分になるタイミングなのかもしれないですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?