韓国映画ファンにお勧め。韓国映像資料院~韓国ホラー研究の端緒
韓国の文化庁に当たる省庁の下部組織に「韓国映像資料院한국영상자료원」という機関がある。
韓国映画ファンの皆垂涎の施設で、映画ファンなら絶対行ってみたい場所だ私も知らなかった!←関心を持ちましょうね…。次回ソウルに行くことがあったら是非行ってみたい。
紹介文は以下の通り。
場所
場所の案内は…以下はソウル経済振興院ビルへの案内だが…
充実の映像コンテンツ
ページは韓国語なので英語に切り替える。
上記HPを下に下がっていき、「YouTube Korean Classic Film Channel」をクリックすると…
https://www.youtube.com/user/KoreanFilm
ここ!韓国映画ファンの安らぎの場所。韓国の30年代(日本統治時代)からおよそ2000年頃に至るまでの数多くの韓国映画が、概ね英語字幕付きで視聴できる(夢のよう)。
下に降りていくと…
「ポン・ジュノ監督が推薦する7本の韓国映」が出ている(私はこの中で「짝코(1980) 복원본 / Jagko (Jjagko) Restoration Version」鑑賞)。
尚、資料院ページの「Korean Film Archive Official Channel」をクリックすると…
映像資料院製作の様々なコンテンツを視聴できる(私もこちらは初めて入った。面白そう!)
https://www.youtube.com/koreanfilmarchive
一つ「20세기 직장인 회사생활 VLOG(20世紀社会人の会社生活VLOG)」を選んでみると…
https://www.youtube.com/watch?v=-Oi4XcWjUXU
若い時のアンソンギが入社面接でアピールしているところが出て来た。
また、会員登録もできる(韓国語版ページからのみ可能みたい。また、アカウント作成の後にパスポートのコピーを送信して先方から承認してもらう必要がある模様。また結果が分かり次第ここに書く)。
季刊誌
『アーカイブプリズム아카이브 프리즘』(以前は『映画天国』)という季刊誌がある。
最新号では、韓国映画の歌謡という特集で、何と100曲以上の歌の楽譜が載っている。要は懐メロってこと。116曲目にはオム・ジョンファのデビュー曲「瞳(눈동자)」が!
オム・ジョンファはもう懐メロかァ!
私の中では新しい曲かななんて思ってたけど、1994年の歌だもんね。彼女の映画主演デビュー作品「風が吹く日はアプクジョンドンに行かなきゃ(바람부는 날이면 압구정동에 가야한다)」の挿入曲!
とにかく映画ファンとしてはゴキゲンな時間を過ごせるであろうことは間違いない。インド・ムンバイの映画博物館はここまでの商売っ気やサービス精神が無いので、展示されている資料は素晴らしいのだから、もっと外に発信して欲しいなと思うところ。
そして…日本政府よ、もうちょっと頑張ってくれていいのだよ!!日本映画をYouTubeで大公開(期間限定でいいから)とかな。
ここからはホラーの時間よ!!韓国ホラー映画特集の発見!
ここからが私の関心事なのだが、その2009年のVol.8では、何と韓国のホラー映画の歴史を特集してくれていた(くれていた、ってあんた…)。
その名も「한국공포영화: 월하에서 여고까지(韓国恐怖映画:月下から女高まで)」。これは同時期行われた展示に関連した特集だった模様。
尚特集の項目を読むと…
2009年という時期は、ホラー含むアジア映画のハリウッドリメイクブームが一巡し(裏には韓国系米国人ロイ・リー等の活躍があった)、2000年頃にちょっと新しい動きを見せた韓国ホラーもそろそろ飽きられた?というような時期だった。その後、2016年の『新感染』や『コクソン哭声』や、Netflixシリーズにおける大躍進の時期を迎える直前だったと言える。その時期に、韓国ホラーの十八番、「恨みと悔しさを抱いて死んだ女の復讐劇」としての女幽霊ものという観点から韓国ホラーを総括しているのである。
韓国ホラーは女幽霊の系譜が強いと思っている。私の視聴しているYouTubeの韓国の怪談チャンネル「코비엣TV[공포썰 공포라디오](コヴィエトTV。アカウント主がベトナム滞在経験があることによる模様。韓国人はベトナムやインドにどんどこ進出してるんだよね…)」でも、
私のこの4年程の視聴期間の間に語られたお話の大半が「女幽霊」だった。男性の幽霊も稀に出て来るが非常に少ないし、日本で隆盛を極めている「地元神≒妖怪」の系譜は殆どない。稀に、海や山にそのような怖い神的な存在が出ているようだが少ないし、人の姿をしている模様。
韓国の怪談の系譜から韓国ホラーを語ることは、ある意味今では無意味化しているとも思う。今や韓国ホラーは、キリスト教、仏教、シャーマニズムを織り交ぜ、従来型の幽霊から、悪霊やゾンビやミュータント、得体の知れぬ神的な存在、日本から来た妖怪など、百花繚乱という感じである。
ちなみに、特集の名前にある、「月下」とは、1967年製作の『월하의 공동묘지(月下の共同墓地)』のことを指す。
まだ未見なのだが、同作は、家父長制花盛りの頃の韓国において「家」によって虐げられ不遇の死を迎えた女が、過去を告発し、自らの子を守り(つまり家父長制は延長される)、復讐を遂げる物語とされている。よく韓国の女幽霊は「恨」を抱いて死んだ女といわれるが、この「恨=ハン」というのは、「悔しさ」から来る恨みの感情である。
自らの真実を上位者に受け入れさせることが復讐の目的であり、上位者はその真実を否定(或いは簒奪)されることで、社会的に死ぬ。それが、女幽霊の物語の中では、苦痛を伴う殺害場面として表現されているのである。
おそらく今の韓国では、ここまで家父長制然とした物語は受け入れられないであろう。何せ秩序は維持されるからだ(これはマラヤーラム語ホラーの『Kumari』においても同じ)。日本へ盛んに紹介されている韓国フェミニズムは特にそれは受け入れないはずだ。そこで映画の中では(韓国映画では未確認なのだが)、死んで幽霊になるなんて受け入れられない、現実を舞台にした物語の中で上位者を倒し、自らの正義と権力を回復(或いは取得)する物語が好まれると思われる。個々のそうした取り組みがやがて社会変革に繋がって行くだろうと期待し、そこに連帯を虚構する物語でもある。そこが日本のファンにも受けているはずだ。
だが。その物語を読む側にとっての意味に大きな違いはあるのだろうか。悪い上位者が倒されることで正義が回復されている。女幽霊ものに描かれている「上位者の死」が「上位者の社会的失墜」に入れ替わっただけで、あんまり構造は変わっていないのではないだろうか。そこが入れ替わったことが大きいと言えるのかもしれないし、戦いの場所が「家」の外+生者の世界になったことが大きな発展なのかもしれない。が、お話が下から上への突き上げとして認知される限り、その階級闘争的性格に大きな違いは読めないのである。また、生きている者であるからこそ、私怨を晴らした結果として手にする権力はどう行使されるのか。
というようなことを考えさせられるが、そういう問題意識もありつつ、韓国の昔のホラー映画を発掘して楽しんでいくつもり。次回は、1975年の作品、『お前もまた星となりて(너 도한 별이 되어)』を取り上げたい。『エクソシスト』をローカライズして語り直すとこうなるのか、という好例。また、同時代のアメリカホラーを先取したような恐怖描写と色使い、そしてあまりに悲しいお通夜のような終わり方等、「この時代の韓国にこんな面白いホラーがあったのか」と驚かされるばかり。
長くなってしまったが、韓国語が分かって本当に良かったと思う。
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