竹美(タケミ・ガ・ミエタラ・オワリ)

ゲイでパヨクで映画ファンです。ベスト映画は『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』です。日本映…

竹美(タケミ・ガ・ミエタラ・オワリ)

ゲイでパヨクで映画ファンです。ベスト映画は『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』です。日本映画では木下恵介監督が好きです。 「映画パンフは宇宙だ」に参加、Fan Zine 『Us[アス]』を担当しました。 https://pamphlet-uchuda.com/

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映画メモ(2024年9月2週目)

今日本では『ジガルタンダ・ダブルX』が公開され、新たなインド映画のヒット作になろうかという時節に、全く空気を読まない形でお届けします。今回はホラーは2作のみ。 今回のラインナップ ①Ullozhukku Amazon prime ②Double iSmart Amazon prime ③Death of me Amazon prime ④Tumbbad 劇場(リバイバル上映) ①Ullozhukku(インド・マラヤーラム語、2024年):家族主義と女性 あらすじ 親の決

    • 竹美映画評102 『デリヴァランス 悪霊の家』、2024年、アメリカ(Netflix)

      悪魔祓い映画は多くの場合決まったテンプレートを持っている。 ①幸せな核家族に悪魔が侵入し、構成員に憑依する。 ②憑依された者は異常行動を繰り返す。 ③家族が介護するも、先行きが見えず非常に苦しむ。 ④カソリックの神父が命を懸けて悪魔と対峙、遂には悪魔を祓うことに成功する。 ④の結末をいかに面白くするかがポイントであるし、②をやりすぎるとコメディになる。③は家族の問題を浮き彫りにする。 このジャンルの金字塔『エクソシスト』は、①にも少々ひねりがあり(それが最新作の設定にま

      • ホラー映画から見る現代社会⑤ 移民の見る悪夢

        最近ひどく疲れている気がして、なぜだろうかと考えていたが、理由をこう仮定してみた。 あらゆることが思ったとおりに進まない上、一人でガス抜きできるほど私がインドに馴染みきってもいない中、全てを諦めてしまい、自分が消えてしまいそうな気持ちになっていたのだと。 これは恐らく、さほど好きでもない異郷の地に移民してしまった人たちの気持ちの欠片を理解する端緒となるのではないだろうか。 今回は移民を描いたホラーを見てみたい。 取り上げる作品 『メイド 冥土』 (DVD化されている

        • ホラー映画メモ(2024年8月末~9月初)

          最近観た映画について書いてみます。 ①Poochandi(タミルホラー)Netflix ②Influencer(米ホラー)Amazon prime ③Nanny(米・アフリカホラー) Amazon prime ④Stree 2(ヒンディーホラー)インドの劇場 ⑤Alien: Romulus(米SFホラー)インドの劇場 Poochandi 2022年公開、インド・マレーシア製作、タミル語 ※Poosandi Varanのタイトルでインド公開 あらすじ 超自然現象や民話を調

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        • 竹美映画評
          105本
        • 竹美のホラー映画論
          81本
        • インド映画日記 ~きっと、何かある~
          61本
        • 竹美書評
          18本
        • シルバニアファミリー劇場
          15本
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          4本

        記事

          『破墓/パミョ』公開に寄せて 前編 日韓怪談比較

          植民地支配や敗戦・征服等の体験を経た国や地域では、必ずと言っていい程、過去を克服したいという欲求が沸き起こって来る。 何度か触れて来たように、韓国・北朝鮮ではもちろん、抗日運動史映画が盛んに製作される。 日本人としては、抗日映画を観るのは多少居心地悪いし、『マルモイ』に関しては言いたいことがあるが、いずれの映画も映画としての面白さが勝っている。 今回紹介する『破墓(파묘)』も抗日映画だが、「居心地の悪さ」をはるかに上回る面白さに圧倒された。 同作は韓国で観客動員数10

          『破墓/パミョ』公開に寄せて 前編 日韓怪談比較

          ホラー映画から見る現代社会⑤ アメリカは変わらない。偽アポカリプス映画『シビル・ウォー』

          トランプ前大統領に対する銃撃事件は、私の思想転向、いやパヨク訂正活動において一つの記念碑的事件となった。「死ななくて本当によかった」と思ったからだ。10年前の私なら、スティーブン・キングの『デッド・ゾーン』を重ねて犯人の方に感情移入しただろう。 映画批評家ロビン・ウッドが絶賛したアポカリプス映画 南北戦争を意味するタイトルの『シビル・ウォー』という映画の日本公開に合わせてアポカリプス映画について見ておきたい。 1978年に、ゲイの映画批評家ロビン・ウッドが残した文章をお

          ホラー映画から見る現代社会⑤ アメリカは変わらない。偽アポカリプス映画『シビル・ウォー』

          映画から眺めるインド社会⑥ インフォーマルセクターの夢、任侠映画

          最近、住んでるアパートで住人の男に因縁をつけられた。 手には金の指輪や金の時計がギラギラ光り、車は大きな四輪駆動。その人が車でアパートに入るとき、手こずっていたので、私が手を横に広げて困ったねというような仕草をしたのが気に食わなかったらしい。 彼氏やその時一緒にいた友達が猛烈な勢いで言い返してくれたので、私は却って冷静になってしまった。こんな金もありいい暮らししてるやつほど威張りたがる。私を手で小突きやがったのも何か感慨深くもあり、怖いよりも、なんだコイツ、怒ってる小鳥み

          映画から眺めるインド社会⑥ インフォーマルセクターの夢、任侠映画

          竹美映画評101 同性愛を治しましょう! 『ある少年の告白』(2018年、アメリカ・オーストラリア)

          同性愛は治るのか?私の体験と直感は「治りません」という結論が出したが、他方に「治って欲しい」という祈りがあり、その受け皿となるものがある…今回の映画は考えれば考える程大変アメリカ的な現象である同性愛矯正施設についてのお話。 あらすじ 2000年代アメリカ。敬虔なクリスチャンで裕福な家に育った少年ジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は18歳、大学生のときに、同性愛矯正施設に入れられてしまう。施設の指導者サイクス(ジョエル・エドガートン/監督も兼ねる)は集められてきた若者達に色々

          竹美映画評101 同性愛を治しましょう! 『ある少年の告白』(2018年、アメリカ・オーストラリア)

          ありがとう、ラッファエッラ・カッラ

          イタリア半島の上から下まで ラファエラ・カーラというイタリアの女性歌手のことを知ったのは10年位前じゃないか。イタリア人の友達が複数回にわたり力説していたので何となく覚えてしまった。 曰く「ラファエラはあの保守的なイタリアのテレビで初めてへそ出して踊った女よ!イタリア半島の上から下まで愛するのよぅッ!みたいな歌を歌ったわ!」 「フランコ政権の終わったスペインに渡ってスペインを解放したの!アモーレで!!!」 飲み会中の言葉だったような気もするし、そうでもなかった気もするが

          ありがとう、ラッファエッラ・カッラ

          竹美映画評100 (Yeah!) 堕落・懺悔・贖罪の国 『The exorcism』(2024年、アメリカ)

          実に3か月ぶり位に映画館に行くことができた。ラッセル・熊ロウ主演の悪魔憑き映画だなんて絶対面白いだろという憶測、不穏すぎる予告編が否応なく期待値を上げてくれたのだが、観たら期待以上だった。 あらすじ アルコールと薬物ですっかり落ちぶれたかつてのスター俳優、アントニー・ミラー(ラッセル・クロウ)は、悪魔祓い映画(明らかに『エクソシスト』のリメイク)での神父役を手に入れる。必死に撮影に臨むもののうまく行かない。問題行動により学校を停学になり、家に戻って来ていた娘リーは、自信を

          竹美映画評100 (Yeah!) 堕落・懺悔・贖罪の国 『The exorcism』(2024年、アメリカ)

          映画から眺めるインド社会⑤ 田舎の因習は過去のもの?

          あの頃より今がよい 映画は我々の集合記憶を反映している。革命や戦乱等で大きな価値観の変動を経た社会の映画が過去を描く場合は概ね進歩主義めいている。ハイパー進歩主義に達したスペインであれば、クィアな欲望が抑圧され虐げられていたが故に加害が起きるのだという物語を描くわけだし、北朝鮮・韓国であれば「日本帝国主義は徹底的に我々を滅ぼそうとしたが潰えた」という陰謀論で振り返るし、インドならば、反植民地闘争を様々なレベルで描くし、日本ならば戦前戦中を重苦しく描く。 もちろん自民党支持

          映画から眺めるインド社会⑤ 田舎の因習は過去のもの?

          竹美書評 皆はこう呼んだ、エンツォとワーニャは弱者男性! 杉田俊介『男がつらい! 資本主義社会の「弱者男性」論』

          「弱者男性」とはどんな人達か 弱者男性、インセル、きもいおじさん、ホモソ、ちんよし、チー牛、有害な男性性…2020年代は、男性の残念さを表現する単語が大量生産・大量流通した(もしくはし始めた)時代として記憶されるのではあるまいか。 MeToo時代を経た私には、本書は今読む必要がある本だと感じた。 杉田俊介は本書で以下のように書いている。 マイノリティでもないしマジョリティでもない、資本主義の勝ち組にもなれない男性。つまり何の意味もなくつまんない人生で、何で存在している

          竹美書評 皆はこう呼んだ、エンツォとワーニャは弱者男性! 杉田俊介『男がつらい! 資本主義社会の「弱者男性」論』

          竹美映画評99 傷と苦痛が切り開くあっぱれクィア人生! 『Chitrangada』(2012年、インド、ベンガル語)

          (2024年9月13日:お恥ずかしいことに映画のタイトルを間違えて記載していた。正しくは『Chitrangada』。面目ない。) 今回の映画は、ベンガル映画界で活躍したRituporno Ghoshという映画監督の作品。ベンガル映画は淡々とことが進んでいく中で、人々の心の弱さや変化を追っていくのが特徴。これが観るとなかなか疲れるのだが、いい作品だった。 あらすじ ダンサーであり舞台演出も行う同性愛者男性のルドラ(Rituporno Ghosh)は性別転換移行手術に臨んでい

          竹美映画評99 傷と苦痛が切り開くあっぱれクィア人生! 『Chitrangada』(2012年、インド、ベンガル語)

          映画から眺めるインド社会④ 炸裂する母親パワーと息子

          ※書き始めたら長くなってしまったので、関連する作品を先に挙げておく。 『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ 王の凱旋』(テルグ映画) 『サラール』(テルグ映画)※祝7月日本公開! 『Rocky and Rani ki Prem Kahani』(ボリウッド映画)※日本未公開 『Kumari』(マラヤーラム映画)※日本未公開 『RRR』 『Heeramandi』 『Bhoothakaalam』(マラヤーラム映画)※日本未公開 『マダム・イン・ニューヨーク』(ボリウッド映画)

          映画から眺めるインド社会④ 炸裂する母親パワーと息子

          竹美映画評98 加害性と悲劇性が交差する 『スケアリー・アパートメント』(”Malasaña 32”、2020年、スペイン)

          本当に映画を観る体力すら落ちて来ている気がする。ものすごく暑い。 とは言えなんか見ようと思ってスペイン・ホラーの『スケアリー・アパートメント』を観た。前半は、どこかで観たような気がする描写の畳みかけをスペインホラーらしい「影」で表現していて、まあまあかなと思っていたが、後半、怪異の正体が分かってからの流れは、2024年の今、全く違う地平も見えて来て奇妙な感動と困惑が残った。 あらすじ: 1976年。農村から都市マドリードのアパートに引っ越してきた一家。慣れない都会生活とあ

          竹美映画評98 加害性と悲劇性が交差する 『スケアリー・アパートメント』(”Malasaña 32”、2020年、スペイン)

          異文化パワーに圧倒されていよう ~『バジュランギおじさんと小さな迷子』の再上映に寄せて~

          乗れなくて困った『バジュランギおじさん』 私が観たのは、2019年の最初の方、インド人の彼氏と一緒に観に行った。彼は既に母国で観ていて好きだと言っていて、やっぱり見た後彼の目からは涙が出ていた。 私はこの映画観ても泣けなかった。何故なのか未だに分からないが、きっと、びっくりするようなことが一つも起こらない映画だったからではないかと思う。老け込んだものだ。 現地の人ですらひどく心を動かされているというのに…。 そして時は流れ、インドに住み付いた。 最近のボリウッドがこ

          異文化パワーに圧倒されていよう ~『バジュランギおじさんと小さな迷子』の再上映に寄せて~