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お姉さんの声は図書館だった【やさしさと知識と豊かさを】

図書館に電話をした。

図書館が開いていても司書さんに相談したり話しかけていい状況なのか確認するためだ。

くぐもった声の男性が出た。

「あ、お忙しいところすみません、図書館って今開いてますか?スタッフの方に話しかけても平気ですか?」

「あ、はい。いま図書館担当に代わります」

待機中の単音で妙に明るい曲が流れるなか

じゃあ今の人は誰なん?

音楽がとぎれ 女性の声に代わった。

「お待たせしました、図書館担当です」

落ち着いた やさしそうな声。

「あ、おぉ、お忙しいところすみません、と図書館って今開いてますか?スタッフの方に話しかけてもへぇ へ平気ですか?」

反して私は先ほど謎担当の男性に同じことを喋ったにも関わらず 噛みまくり 普段のろのろ話すくせに電話になると早口。典型的な電話コミュ障。

さすが図書館担当のお姉さんはちがう。

普通の応対なんだけれど 声に図書館の膨大な蔵書のような奥行きと安定感がある。

お姉さんは図書館は通常通り運営しているので来館して相談してくれて問題ないと教えてくれた。

「受付なんですけれど」

お礼を言ってあわてて切ろうとしている私の耳に図書館ボイスが差し込まれた。

「1階は混んでいるかもしれないので 子ども関連なら2階に、その他は地下1階のカウンターに行った方が良いかもしれません」

「あ、ありがとうございます!」

「それと」

「図書館は22時まで開館してますからね」

お姉さんは私が聞きそびれたことを聞かずとも教えてくれた。

慣れているからとは思うけれど 知っていることの深さや奥行きが違うのだなと思う。

知っている人は みんな やさしい。

本の知識に限ったことではなく

「好き」の反対は「無関心」とよくいわれる。「無関心」なのは「知らない」からだと思う。

遠い国の何処かで誰かが苦しんでいます

と言われてもピンとこないが

日本から飛行機で13時間かかる国のモガーという貧しい町に住むエアリアルちゃん(7)は4歳のころ母親を病気で亡くし 父親は酒乱で…

前者よりも後者のほうが気持ちが入ると思う。

図書館にはたくさんの知識が住んでいる。昔のことも今のことも歴史と世界が凝縮された空間。

知識を集めた空間を自由に出入りできる ぜいたく。通底に流れる豊かさ。

知識は豊かさに通じて 豊かさはやさしさになる。

図書館が また開いて良かった。



つけヒゲに憧れているのでつけヒゲ資金に充てたいです。購入の暁には最高のつけヒゲ写真を撮る所存です。